第19話 扉より来たる者

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ストーリー

 太陽が三つある世界で、ウルトラマンと何かが戦っている…。そんな夢を見てうなされるカイト。血相を変えて起こしに来たミズキは、「遅刻よ!」と叫ぶ。

 三日月山遺跡発掘の応援要請を受けたヨシナガ教授は、オザキ博士の現場へとやって来た。オザキ博士はトミオカ長官の後輩だと言う。発掘された遺物を見せられたヨシナガ教授は、ウルトラマンマックスに酷似した文様の刻まれた石版に驚く。もう一方はパズルのような遺物だった。

 ヨシナガ教授が遺物を調査したところによると、年代にそぐわない技術で作成されたものだという結果が出た。DASHの面々にその調査結果を報告するヒジカタ隊長だったが、カイトは夢のことが気になって集中できない。

 詳細な研究が必要だと判断した上層部の指令で、カイトとミズキは発掘された石版をベース・タイタンに持ち帰る為、三日月山に赴いた。オザキ博士はカイトに会うなり、カイトの詳細なプロフィールを暗唱。驚くカイトに、オザキ博士は「興味のあることは全て記憶している」と告げた。ヨシナガ教授に促され、石版を見たカイトはふと例の夢を思い出して硬直。一方のパズル状の遺物に触れると、突如その遺物が動作を始めた。図柄が揃ったとき、異様な扉が出現。ベース・タイタンではコバが胸騒ぎを覚えていた…。

 かくして、扉の向こうよりターラ星人が出現。カイトやオザキ博士の抗戦によって、ターラ星人が再び扉の向こうへ戻ると同時に、扉から強烈な吸気が発生、ミズキは吸い込まれてしまった。ミズキが気付くと、彼女は太陽が三つある世界に居た!

 オザキ博士は、ミズキを危険な目に遭遇させたことを詫びるべく、トミオカ長官の元に赴く。しかし逆に、トミオカ長官より、ミズキ救出のために助力して欲しいと頼まれる。パズルを持ち帰ったヨシナガ教授は、エリーにパズルを解読させるが、相当な時間を要する予想。しかしオザキ博士はその類稀なる記憶力でパズルを解いてしまう。扉の向こうの異世界へ突入するDASH隊員たちとエリー。

 磔になって囚われたミズキを発見するも、そこへギルファスが出現、交戦状態となる。コバがミズキを救出。ところが、退却する最中にギルファスの攻撃でカイトは皆と離れ離れになってしまう。

 エリーがアクティブモードで再起動し、ギルファスを迎撃していたその頃、カイトが気付くと、傍にはターラ星人がいた。ターラ星人は、かつて食糧難を古代地球人に助けられたが、その争いの歴史を見るにつけ、自らが神として力の支配をしなければならないと考えるようになった。それをM78星雲人に阻止され、その復讐の為に扉を開く者を待っていたという。その信念を一蹴したカイトは、機転で奪われたマックススパークを取り戻し、ウルトラマンマックスに変身、ギルファスと対峙する。

 その頃、パズルは再び動き出し、扉を閉じようとしていた。タイムリミット迫る中、ウルトラマンマックスは、強力なギルファスに苦戦するも、ギャラクシーカノンでこれを打ち破った。カイトを置いて行けないと立ち止まるミズキに、ようやくカイトが追いつく。後を追うターラ星人は、コバによって倒され、間一髪でベース・タイタンへの扉を全員くぐることができた。

解説

 ついにダン登場!? 森次氏がマックスに登場の今回。ダンではなく、オザキ博士としての登場となったが、それでもファンにとって充分嬉しいエピソードとなった。ダンその人を思わせる冷静かつ温厚な人柄、ポケットからウルトラアイの如く眼鏡を取り出す仕草、スコップを蹴り上げて手に取り、ターラ星人を撃退する身のこなし、その時に発せられるセブンを思わせる気合…。すべてが森次氏に刻まれたダンの記憶の発露である。

 ちょっと興奮気味で言い過ぎになってしまったが、オマージュを脚本に求めるのではなく、俳優さん本人に求めるという、バランス的に難しい要素を、上手く処理した秀作エピソードである。

 では、ここでオザキ博士が別の配役だったらどうなるか想像してみたい。まずヨシナガ教授との顔合わせの場面。完成作品では、ここで「アキコ」と「ダン」が「ハヤタ」の話をしている(ようにファンは見てしまう)。もし森次氏でなかったら、ヨシナガ教授が「元アキコ」ということやトミオカ長官が「元ハヤタ」である意味は失われてしまう。実際、それでも本エピソードの構成が揺らぐことはないのだが、「ハヤタ」や「ダン」の要素が加わることで、ファンにとっての感慨がグッと深まるのは当然であろう。

 続いて、カイトに興味を持っていると告げる場面。高名でありつつも一介の考古学者に過ぎないオザキ博士が、何故カイトに興味を持つのか? という疑問は、演じているのが「ダン」だからという理由だけで充分ではないかとさえ思える。さらにトミオカ長官との再会での、「お互い、年をとりましたね」というセリフ。当然、かつてはUDFに在籍した先輩と後輩同士であるから、このセリフに破綻はないわけだが、ここに「ウルトラマン」と「セブン」が邂逅するという場面をダブらせることで、その「引き」は異常なまでのテンションで旧来ファンにアピールする。

 これらの、「オザキ博士が森次氏でなくても成立はする」けれども「オザキ博士が森次氏であることに意味がある」という、これ以上ないバランスの元に構築された本エピソードは、これまで度々展開されてきたオマージュの中でも最高峰に位置する出来栄えではないだろうか。

 ところで今回のターラ星人、どこかで見たことがあるような気がしていたのだが、「転送ゲート」という言葉でピンと来た。見事ターラ星人は「スター・トレック」的なのだ。アメリカSFTVドラマの傑作シリーズ「スター・トレック」には、様々な社会的問題を抱えた種族が数多く登場する。食糧難という社会問題を抱えたターラ星人には、造形を含めその匂いが確かに感じ取られる。しかしながら「その後の支配欲の発現」、「地球人の敵としての排除」といった要素はやはりウルトラ的なもので、スター・トレック的な異星人をウルトラ流に咀嚼した結果と言えるだろう。その為、この宇宙人からは強制的な排除に伍する強力な悪意を感じることが出来ない。ほぼオザキ博士メインのエピソードであるから、このくらいの敵役で良かったのかも知れないが、何となく残念ではある。

 一方、DASH側の見所も色々と用意されていた。筆頭はエリーの「アクティブモード」。隊員服が「服」であったという事実も判明するが、重そうなダッシュデリンジャーを軽々と抱えるなど、その身のこなしが素敵だ。続いて囚われのミズキ。わざわざジャケットを脱がして磔にするなど、ターラ星人の趣味を垣間見ることが出来るが、男性ファンにとっては一種のサービスに映ったであろう。救助されて思わずカイトに抱きつくシーンも強烈だ。今回特にクールだったのは、コバの存在。ミズキ救出、ターラ星人撃退の、ここぞという場面で射撃の名手という設定が遺憾なく発揮された。見せ場のなかったショーンは、カメラ目線でのセリフ「僕が作ったんだよー」で強い印象を残した(?)

 ギルファスVSマックスのバトルも緊張感溢れるものとして印象深い。夕陽を思わせる照明で、マックスとギルファスが互いの武器を駆使して激突する一連のシーンは、ある種時代劇の一騎打ちを思わせる。特にマクシウムカノンを至近距離からぶっ放すシーンが圧巻だ。

オマケ

 まずはパズル石版の動きに注目。勿論CGなのだが、結構凝った動きで、スローで見てみると、ちゃんと法則性を保って各ピースが動いていることが分かる。これはなかなかいい仕事。こういう場面で奇想天外な動きを見せてしまうと、折角のSF性が失われてしまうので、地味でありつつも効果的だった。

 太陽が三つという異世界(明言はないが恐らくターラ星)。ウルトラマンダイナにおける火星を思わせ、その荒廃した風土の雰囲気が良く出ていた。天体の見え方が地球と異なるというパターンは、SFではお馴染み。ウルトラセブン第43話「第四惑星の悪夢」でも月が複数見えるというシーンがあった。

 古代にウルトラマンが飛来していたというシチュエーションは、シリーズに度々登場する。ウルトラマンにおけるノアの神、ウルトラマン80の光の巨人が典型。ウルトラマンティガは元々超古代にも存在した巨人である。また、マックス第11話でも既に提示されている。同一作品内で複数回、古代におけるウルトラマンの存在を描いたシリーズは、ティガを例外とすれば、このマックスが初めて。