第22話 胡蝶の夢

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ストーリー

 最近調子の悪い脚本家・蓮沼は、執筆中についつい居眠りをしてしまう。ふと目を覚ました蓮沼は、障子の向こうにベース・タイタンの司令室があるのを見る。一方、カイトは居眠りする蓮沼の部屋を、ベース・タイタンの中に見る。モンスタースキャナーの反応を頼りに、怪獣造形家のアトリエに赴くカイト…。こんな不可解な夢に、蓮沼は何日も苛まれている。その中で蓮沼はカイトと一体化し、アトリエの不思議な女を見る。蓮沼はその女の正体を探り出したい。

 円谷プロダクションでは、蓮沼がその夢を元に執筆したシナリオについて会議が行われている。そこに登場する女を膨らませたいという蓮沼に、会議を取り仕切る佐伯は「〆切を守って女を追って、夢の続きを届けてくれ。」と告げる。

 蓮沼がまた眠ってしまうと、カイトと化した蓮沼がアトリエの女と邂逅する。近辺で怪獣の反応があったとするカイトに、女は「私の頭の中に怪獣が居る」と応える。テレビに登場させる新しい怪獣を作り上げている途中だったのだ。女はカイトに最強の怪獣のアイデアを提供するよう持ちかける。「名前は?」と訊くカイトに、「名前から発想しますか。天才・金城哲夫的ですね。」と不敵に笑う女。女は、必ず倒される運命にある怪獣に、一度でいいからこの世界を征服させてやりたいと言い、「魔デウス」という名を思いつく。カイトは、「無機質でつかみ所のないものが一番怖い」と言い、夢を餌にして強大化するオブジェというアイデアを提供する。こうして、夢の極み・魔デウスのフォルムが完成した。

 蓮沼はそこまで書き上げると、バーに赴いた。カウンターに座った蓮沼は、傍らにアトリエの女にそっくりの人物を見る。思わず夢の話を持ち出す蓮沼。女は「胡蝶の夢」の寓話を語る。荘子は蝶となって楽しく飛び回る夢を見たが、目覚めると自分は紛れもなく荘子であると気付く。ふと荘子は、蝶が自分になる夢を見ているのではないかという疑問にとらわれる…そういう話だった。

 また蓮沼の夢の中。アトリエでは魔デウスがその形を歪めて生命を宿している。女は「あなたは怪獣になり、蝶のように飛び跳ねて、現実の世界も滅ぼすのよ!」と蓮沼に言葉を投げかける! 蓮沼が目覚めると、そのセリフは既にパソコンに入力済みとなっていた。眠るまいと頑張る蓮沼はまたも眠ってしまう。ベース・タイタンにいるカイト。訝るミズキに、カイトはヘンな夢を見ると言う。カイトは夢の中で蓮沼という脚本家になっている。「まるで胡蝶の夢みたい」と言うミズキはアトリエの女に! ハッと目覚めたカイトは蓮沼と化してベース・タイタンに駆け込む。今度はエリーとして現れる女! 「この世界は一人の脚本家の描く緻密なシナリオに過ぎない」と言い放つ女。大きなショックを受けるカイト。

 という夢から覚めた蓮沼が、顔を洗ってふと鏡を見ると、その顔はカイトに! 頭を打って気を失った蓮沼=カイトは、夢の中であの女と邂逅する。「お前とカイトは、自由に入れ替わり、夢で遊べるのだ。胡蝶の夢のように。」女がそういうと、夜の街に魔デウスが出現した。ふとカイトが蓮沼の部屋で目覚めると、「ウルトラマンマックス」のシナリオが目に入る。

 次にパソコンのディスプレイに目をやると、魔デウスが街を破壊し始め、DASHが迎撃し歯が立たないというシナリオが書かれている途中だった。カイトは、シナリオの中の世界でカイト役になっている蓮沼に、マックススパークを使って変身するよう指示する。カイトはマックスが勝利するシナリオの完成を決意する。するとマックスは、魔デウスの内部に囚われつつも光の奔流を放ちながら回転し、魔デウスを粉砕した。

 佐伯はそのシナリオに満足した。蓮沼はその会議中また居眠りして怪獣の夢を見る。突如大地震が起きる会議室! 目覚めた蓮沼は、女性スタッフにアトリエの女の面影を見る!!

解説

 「実相寺監督キターーー!」な、今回。エスプリの効いた正統派で来るのかと思いきや、メタフィクションに彩られた、実相寺ワールド炸裂作品として登場した。

 平成シリーズでは、ウルトラマンティガ、ウルトラマンダイナでメガホンをとっている実相寺監督だが、そこで見られた作風は、ウルトラの図式そのものを解体して要素のみを拝借したような、異彩を放つ映像だった。その流れからすれば、今回のような構成・映像になるのは自然である。

 いきなり私的なことで恐縮だが、今回どうやってこのページを構成しようか、はたまたキャラクターの紹介ページをどうしようか、非常に迷った。ストーリー自体もすんなりと文章にするような内容ではないし、何しろこれが「ウルトラマンマックス」の世界で起こったことなのか、「ウルトラマンマックス」の外の世界で起こったことなのか判然としない。否、むしろ判然としないからこそイマジネーションが喚起されて面白いのだ、とも言え…。

 そこで私は、強引に本エピソードを、従来どおり「ウルトラマンマックス」世界で起こったことと結論付けることにした。つまり蓮沼は、ちょっと疲れ気味のカイトの夢の中に登場する自己の変形であり、蓮沼が夢と捉えている世界が「ウルトラマンマックス」世界における現実なのだと。そうすることにより、キャラクターなどの解説自体は何となく的を射たものを書くことが出来た。ただし、それが正解だとは限らないので、あえてボカした表現をしたつもりだが。

 しかし、映像を見る限り、意図は私の解釈と全く別のところにあることがわかる。むしろ実相寺監督はメタフィクションにしてしまうことで、マックスで試し得ることを色々やってしまおうと考えたのではないだろうか。私は強引に「ウルトラマンマックス」の作品世界に組み入れた解釈をしたが、そんな足枷は取っ払ってしまえと言わんばかりの挑戦的な映像と構成なのだ。思えば、実相寺昭雄監督のウルトラシリーズにおける作品群は、既存のセオリーを解体する意図を含んでいた。

 さて、混沌としてきたところで、純粋にビジュアルの部分を見て行きたい。と言っても、何を書き連ねても結局は映像そのものを見て頂くしかないようなエピソードだったので、一応、倒錯した映像のファクターを羅列しておくにとどめたい。

 まずは、DASHの隊員服を着た蓮沼や造形家の女。見慣れた人物が見慣れない人物に擦り替わるという恐ろしさは、登場人物の心情ではなく視聴者の心情を不安にさせる効果充分。蓮沼役の石橋氏の隊員服姿は意外に似合っており、結構ユーモラスな雰囲気さえ感じられる。逆に造形家の女がエリー(狂ったように笑うシーンが怖い)やミズキとして登場する場面は非常に怖い。この対比、演者故の鮮やかな対比であり、現場処理の巧みさを否が応でも感じさせる。蓮沼がマックススパークを装着するシーンは、一流のパロディだろう。蓮沼のシーンには、常に「作り物」の蝶が飛んでおり、波打つ鏡面に反射像を捉えたり、斜めアングルが登場したりと、実相寺ワールドが炸裂している。

 続いて、魔デウスの怪獣としての面白さ。何だか分からない抽象的なものとして、球形を採用するというセンスの良さもさることながら、延々と続く「ちょうちょ」の変奏曲をバックに、甘いフォーカスで捉えた破壊シーンの美しさは特筆モノ。U字形やパカッと割れて液状になるところなど、抽象物ならではの変幻自在さも楽しい。

 そして、マックスが全身から光の奔流を放って魔デウスを粉砕するシーン。実相寺作品ならではの「映像に圧倒されるカタルシス」が炸裂。マックスとの戦闘シーンは、前述の甘いフォーカスと落とした照明によって、発光部が美しく映え、幻想的な雰囲気を増長している。バラエティ溢れる作品群で彩られてきた、マックスならではのバトルシーンだ。

オマケ

 と、作品の倒錯した雰囲気に当てられたまま解説を書いてみたので、傑作だったのかどうなのかということには全く触れていない。こういう類の作品は、絶対に見た人によって感じ方が異なるからだ。

 なので、「オマケ」では思いっきり私的な意見を書かせていただく。いやはや、実相寺作品が好きな者としては、実に嬉しいエピソードだった。「姑獲鳥の夏」を見て目を回した方にはちょっと厳しいかもしれないが、目を回さなかった方にとっては、嬉しいプレゼントと映ったのではないだろうか。メタな視点、何より、あんなに分かりやすい蝶が棒にくっ付けられて飛ばされているシーンが、既にこの話は絵空事だと宣言していて痛快そのもの。「だから何をやってもいい、ウルトラマンさえ出しときゃ」な姿勢も万々歳! とにかく全編興奮しっぱなしだった。

 では、最後にいつものオマケらしいコメントを。今回、「魔デウス」の異名(肩書とも言う)がクレジットされなかった。一応公式には「夢幻神獣」というものが存在するが、このエピソードにはちょっと似合わない感じがする。クレジットがなかったのは正解かも知れない。