第23話 甦れ青春

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ストーリー

 カイトは、トミオカ長官のUDF太平洋基地・ベース・ポセイドン視察に同行していた。ヒジカタ隊長より極秘任務だと聞かされていたカイトは緊張しっ放しだったが、実は「視察」は名目であり、単に古い友人に会いに行くのがトミオカ長官の目的だった。私用でダッシュバードを使うことを口外しない、口の固そうなカイトをパイロットに選んだと言う。

 ベース・ポセイドンに到着するなり、彼らを待っていたのは、何とヨシナガ教授だった。意外な「友人」に驚くカイト。そこに現れたのが、トミオカ長官の本当のお目当てであるダテ博士だった。再会を喜ぶ二人。トミオカ長官、ヨシナガ教授、そしてダテ博士は、UDFが設立されるかなり前からの戦友であり、防衛隊時代は戦闘機乗りで、地球平和のために尽力したが、幸い実戦に赴く機会はなかったという。

 ここ最近、ベース・ポセイドンの近海では、異常な海水温の上昇が見られていた。そして、ミノス島に60ノットで接近する怪獣フライグラーがキャッチされた。ダッシュバード1で出撃するカイト、ヒジカタ隊長以下DASH隊員も直ちに出撃した。フライグラーはその海中でのスピードを生かしてベース・ポセイドンを襲撃、フライグラーの攻撃からベース・ポセイドンを守ろうとしたカイト機は墜落の憂き目に。ヨシナガ教授の分析によれば、フライグラーは近海に生息する飛魚が突然変異を起こして誕生したものだという。トミオカ長官は、次々と現れる怪獣に対して一定の見解を持っていた。それは、人類の身勝手の所為だという見解だ。

 ダッシュマザーの到着までには30分の時間を要する。フライグラー再来に対し何の備えもないベース・ポセイドンで焦るカイトに、ダテ博士は「いいものがある」と言い、博士が開発した特殊潜航艇を見せる。直ちに出撃しようとするカイトを止めるトミオカ長官。長官は代わりに出撃すると言う。トミオカ長官は、「我々の世代がかつて開発を続け、高度成長を支えてきた。そのツケが怪獣となって現れ、人類に試練を与えている。そのツケを清算するのは我々だ。」と言い、一人格納庫へと向かう。そっと後を追ったカイトは同行を願い出る。特殊潜航艇は2名搭乗による出撃となった。

 現場までの道程で、トミオカ長官は「皆を守りたいという意志の源は何だ」とカイトに訪ねる。カイトは「理由が必要ですか」と応える。トミオカ長官は「君は私が忘れていたものを思い出させてくれた」とカイトに告げた。接近するフライグラーを確認したカイトの報告を受け、直ちに攻撃に転じるトミオカ長官。海面に逃げるフライグラーに対し、ダテ博士は「そのまま上昇しろ」と指示する。何と特殊潜航艇は海面より離脱し戦闘機へと変形! それを見て「ダッシュバード3!」と叫ぶショーン。DASHも合流し、総攻撃が開始される。しかし、フライグラーの予想外の攻撃に各機は墜落。カイトはウルトラマンマックスに変身する。

 マックスは善戦するも、フライグラーの口から放たれる強力な水流波によって苦戦に転ぜられる。大ピンチが訪れたその時、ヨシナガ教授により弱点が解析された。怪獣の弱点はエラだ! 直ちに離陸する特殊潜航艇。トミオカ長官の巧みな射撃によってエラを攻撃されたフライグラーは、弱体化し、マクシウムカノンで倒された。「ありがとう。ウルトラマン…マックス。」感慨深げに見送るトミオカ長官。

 特殊潜航艇は正式にダッシュバード3と命名され、夕焼けの中、談笑するかつての戦友たちの姿があった。

解説

 第19話の森次氏に続いて、ファンサービスの大物ゲスト・二瓶正也氏が登場。かつてのイデ隊員を彷彿させる、茶目っ気と優秀な頭脳に彩られたダテ博士を楽しそうに演じている。「こんなこともあろうかと」という台詞こそなかったものの、独特の口調で大げさな感情表現を見せ、優秀な科学者としての存在感も見せるダテ博士に、旧来のファン諸氏は嬉しさを感じたことだろう。

 今回の主役は、断然トミオカ長官。最近のエピソードではコミカルな面がクローズアップされていたが、今回のトミオカ長官はひたすら「若い者には負けん」という気概に満ちたカッコいい人物として描かれている。ただし、二瓶氏が登場しているからといって、ハヤタ隊員の性格そのものと言うわけではないところが、マックスの世界を壊さない良心を感じさせる。

 とは言え、やはりトミオカ、ヨシナガ、ダテの3ショットは、否が応にも科学特捜隊を想起させる。初代ウルトラマン当時の写真を素材に使ったダテ博士所有の写真や、「古い友人」という台詞は、ファンにとっては非常に嬉しいところだ。場面の要所要所で、旧友ならではの和やかな表情を見せるシーンが登場し、非常に温かみのあるドラマが展開された。いつものエピソードとは異なり、さながら防衛チームOBを主役に据えた「昔取った杵柄」をビシビシと感じさせる痛快活劇としても仕上がっている。ここまで来たら、毒蝮三太夫氏にもご登場願いたいのだが…。

 他の重要なトピックとしては、大西洋にあるベース・ポセイドンと、ダッシュバード3号が登場。ベース・タイタンと全く形状の異なるベース・ポセイドンは、ベース・タイタンのような戦略基地のイメージではなく、巨大な研究機関といった趣があり、今回のような海の事件にマッチ。一方ダッシュバード3号は、トミオカ長官の操縦という衝撃デビューを果たし、ダテ博士の「特殊潜航艇」というファンサービス的な呼び方も相まって、新型機の魅力を存分に発揮した。海中を上昇し、そのまま空中を飛び回るという高性能は、見る者をワクワクさせる。

 総じて、二瓶氏と黒部・桜井両氏の共演、新基地登場、新型機登場という、あまりの高密度にめまいを覚えそうな今回だが、実際には奇をてらうことなく極めて簡潔で爽快なエピソードとして仕上がっている。それは、あくまで本エピソードの主役がトミオカ長官だったことに由来する。前述した3つのイベントは、トミオカ長官の勇敢な行動を彩る要素に過ぎない。それらの要素を派手に描くことで、トミオカ長官の存在感を高める、それが今回の狙いだったと思われるのだ。ちなみに、早々にカイトを出撃させ、墜落させるという流れも、トミオカ長官にスポットを当てる為だ。

 さて、新基地、新型機登場となった今回は、特撮も充実している。壮麗な概観のベース・ポセイドン、ベース・ポセイドンのヘリポートに着陸するダッシュバード1号、ダッシュバード各機の墜落シーン、コクピットからノーカット風にロングショットに…など、見所満載。特にベース・ポセイドン関係の映像はリアルな仕上がりを見せ、うるさ型のファンを納得させるパワーを感じさせた。墜落シーンに関しては、ミニチュアワークが光る丁寧な仕上がりを見せている。それらと対比させるかのように、マックスとフライグラーのバトルは王道パターンで展開。アクセントの付け所を誤らない構成には脱帽させられる。

 ここで一つ、トミオカ長官の言について触れてみたい。今回はトミオカ長官の印象的な台詞が多々聞かれたが、その中でも「高度成長のツケが回ってきている」という言が最も強烈。この台詞、実はハヤタとして語ったのではないかと勘ぐりたくなる位、リアルな響きを持っている。高度成長期とは、すなわち初代ウルトラマンが活躍した時代だ。この時代、ウルトラマンと科学特捜隊は、科学のもたらす明るい未来に向かって邁進していた。科学がもたらすユートピアは、自然を抑制しなければ達成できない。そこで、現れた自然の象徴である怪獣を退治した。今回のトミオカ長官の発言は、この正当性をひょっとすると覆してしまうかも知れない重さを持った言葉だ。この台詞のシーン自体はそれほど目立ったポジションに置かれていないが、逆に言葉の重みが増幅されて、旧来ファンの心に刺さる。

オマケ

 今回からオープニングに多少変更があった。もちろん、ダッシュドゥカ登場時(第17話)も変更があったが、今回からは、ダッシュバード3号の登場はもちろんのこと、各種ダッシュメカのシーンが劇中の活躍シーンになっており、オープニング終盤でのカイトのシルエットから、マックススパークが回転しながら向かってくるというカットが追加された。

 それと、あえて解説から外したのだが、トミオカ長官がマックスに対して「ありがとう。ウルトラマン…(ちょっと長い間)…マックス!」と言うのが実に意味深。カイトがウルトラマンマックスであることを、長官は知っているのではないかという節も多々見られ、黒部氏を起用した本当の意図、つまり一般的な人類とは違う視点を持ち得ておかしくないキャラクターを垣間見せていた。

 さらに! 昔の3ショット写真とダテ博士の発言からは、ヨシナガ教授も戦闘機を操縦していたような印象を受ける。真相やいかに?