第39話 つかみとれ!未来

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ストーリー

 ミズキが死ぬ運命を認めないカイトは、ミズキに蘇生術を施してミズキを救おうとする。カイトの思いは通じ、ミズキは息を吹き返した。エリーの予測は外れたのだ。オートマトンによって投影されたデロスのビジョンは、カイトがミズキを助けるのを見て、地上人が命を大切にするということを認識し、バーサークシステムの起動を後悔していると語り始めた。しかし、バーサークシステムの停止はデロスと言えども不可能で、ウルトラマンマックスも攻撃対象になっていると言う。マックスを100%倒してしまうと予測するデロスに対し、カイトは「その予測は外れる」と言ってマックスに変身する。ミズキは目前でマックスに変身するカイトを見て言う。「あたし、知ってた気がする。カイトがマックスだってこと。」

 マックスの腕に抱かれながら地上へと飛び立つミズキ。地上にはギガバーサークが出現していた。DASHも直ちに出撃。エリーはダッシュアルファでミズキと合流、「また会えて嬉しい」と漏らす。一方のマックスはギガバーサークに対峙するが、既に変身後2分が経過しており、ギガバーサークに全く歯が立たない上にギガバーサークの頭部に磔状態となってしまう。M78星雲に帰るエネルギーすらないことをカイトに告げ、強制的にカイトの分離を試みるマックスは、召喚したマックスギャラクシーにカイトを乗せて脱出させた。同時に、ギガバーサークの体表でマックスは完全に精気を失ってしまう。

 バーサークの影響は世界全土に及んでおり、都市近郊のエネルギー施設や交通機関はことごとく停止を余儀なくされた。絶望的な夜が明けると、病室で安静にするミズキの側にはカイトが付き添っていた。「俺たちはきっと未来を掴む」そうミズキに宣言するカイト。そこへエリーの「オペレーション・マックスを開始します」との通信が入った。

 「オペレーション・マックス」とは、ウルトラマンマックス救援作戦である。ガーディアンから照射された太陽エネルギーを基地で変換、それをマックスギャラクシーに伝達・充填し、それをマックスの右腕に装着して、マックスを復活させる作戦。マックスの元へマックスギャラクシーを運ぶのが、ダッシュバードを駆るDASH隊員たちの役目だ。コバはこれまでマックスに助けられてきた分を返すべく張り切る。「我々人類にとって唯一残された手段だ」というトミオカ長官は、デロスを犠牲にしてしまった今、試練を乗り越えた後に人類がしなければならない努力は大きいと語り、生き延びてこそ未来を切り開くことが出来ると号令した。ヒジカタ隊長により出動命令が伝えられる!

 エネルギーがガーディアンより基地に照射され、ケーブルでコネクトされたマックスギャラクシーに伝わる。それを牽引してマックスの元へ飛ぶカイトとコバのダッシュバード。しかし、早くもエネルギーのレセプトアンテナの限界が到来し、エネルギー伝達は停止。エリーは素早い操作で修理を施し、その危機を回避した。ところが、今度はギガバーサークによってコバの牽引ワイヤーを切断されてしまう。

 事態を諦めないカイトは、機外に脱出してエネルギーの充填されたマックスギャラクシーに飛びつき、光となってマックスギャラクシーと一体化! そのままマックスギャラクシーはマックスの右腕に装着された。それを見たDASHの面々は、カイトがマックスであることを知る。

 エネルギーに満ち溢れるマックスは、ギガバーサークに対抗すべく更なる巨大化を遂げ、その凄まじいパワーでギガバーサークを圧倒、宇宙にさえ届く長大な光刃で打ち倒した。「デロスは地上の人類たちに期待しよう。地球が元の姿を取り戻すまで、デロスは再び眠りに就く」というメッセージを残し、バーサークシステムは停止した。

 いよいよマックスとの別れの時が来た。互いに礼を交わすカイトとマックス。「地球の未来は君たち自身で掴んでくれ」そう告げると、カイトと分離したマックスは宇宙へと飛び立った。マックスは月付近で待っていたウルトラマンゼノンと合流し、M78星雲に帰っていった。カイトを出迎えるDASH隊員たちとトミオカ長官、そしてヨシナガ教授。マックスの去った空を見上げるヒジカタ隊長は、「地球の未来は、我々人間が自ら掴み取らねばならない」と呟いた。

 時は過ぎ、2076年。銀河系探索へ向かう、カイトとミズキの孫の姿があった。飛び立つ宇宙船を感慨深げに見送る年老いたカイトとミズキは、穏やかな時を過ごしていた。マックスに会えたら伝えて欲しい言葉があるというカイト。「何?」と問うミズキに、「私たちは未来をつかめたよ」と答えるカイト。人類は遂に遥かなる宇宙へと飛び立つ、輝かしい未来を掴んだのだ。

解説

 遂にウルトラマンマックスも最終回を迎えた。3クールにわたってマックスというシリーズを視聴し続けた方は、この最終回に対してどのような思いを抱いたであろうか。感慨はそれぞれに違いない。そこで今回は、ごく私的な感想が前面に出てしまうことをご容赦願いたい。

 …とは言え、なるべく客観的に印象的なシーンをピックアップして行きたいと思う。

 最初の見所は、何と言ってもカイトがミズキに蘇生術を施すシーンだろう。私は浅薄にも前編でミズキの生命反応が停止したところで「次回はデロスの超高度な技術や、あるいはゼノンが命を持ってくるといったことでミズキが復活するのだろう」と密かに踏んでいた。それがウルトラの世界では違和感なく起こり得ることであり、またそのような感覚に慣れてしまっているからだ。ところが、土曜の早朝の子供番組らしからぬ、非常に人間的な、また衝撃的なシーンが展開されたのだ。このシーンは注意深く観察せずとも、カイトの告白が織り込まれた一種のキスシーンであることは明白だ。

 前作「ウルトラマンネクサス」でもキスシーンが一度描かれたが、あのシーンはネクサスの世界観における必然であった。今回はマックスの世界観を崩すことなく、蘇生術という現実的な救命方法を前面に押し出しつつ、しっかりカイトとミズキの関係を確認するという、非常に理に適った良心的なシーンとして完成しており、このシーンだけでも最終エピソードの感慨を味わうことが出来ると言ったら言いすぎだろうか。

 その後も、等身大のマックスがミズキを抱えて地上に脱出したり、マックスギャラクシーがカイトの分離に使用されたり、DASHの面々がそれぞれの能力を最大限に発揮してマックスを救うなど、怒涛の様に意外性を含んだ名場面が繰り出されていく。中でも、カイトが分離されることで、マックスに対する恩返しが可能になるという展開や、再びマックスと一体化することで、いわゆる「正体バレ」が行われるといった新味は、王道の展開を押さえつつ新鮮な驚きを与えることに成功している。

 ギガバーサークが超巨大な体躯の持ち主という描写は、平成ウルトラシリーズ、特に「ティガ」「ダイナ」「ガイア」の最終編ではお馴染みで、最終的にマックスが同サイズとなって形勢を逆転する展開も「ティガ」の二番煎じ的な面は否めないが、それでもカイトをはじめとするDASHの面々が、極限まで努力した結果得られた力としての姿は神々しいものがある。強力なマクシウムソードの分身攻撃、異様に長大な光刃を発してギガバーサークを切り裂いたマックスギャラクシーの威力。その描写全てが、前編を含めた直前までの重い雰囲気を払拭すべく用意されたかのように爽快である。この高揚感は他に比類ないものだ。

 そしてエピローグには、殆ど誰も予想しなかったであろうシーンが用意されていた。2076年、マックス世界では大体50年後といったところか。カイトとミズキの孫が銀河探索へ旅立つ。前編での「ミズキの50年後の生存確率」というエリーのセリフは伏線だったのだ。ミズキ自身が夢として抱いていた星空への旅立ちが、ミズキ自身によって行われないというのはちょっと寂しいが、それでもマックスの世界が単体で完結するという強い宣言をしたシーンとして評価できる。エリーの髪の色が変わっていたり、異様に若く見えるカイト爺さんとミズキ婆さんには苦笑するものの、ある種ファンタジーを思わせる描写には微笑ましさすら感じられ、これもマックスらしいシーンだと言えそうだ。

 この一連のシーンの「未来図」は、非常に朧気な感じで描かれており、SFで遠い未来が描かれる際の手法に程近い。シルバーで統一されたベース・タイタンに似る建造物や銀河探査船、乗組員のスーツなど、この一連のシーンには色彩の乏しさが意図的に採用されている。こういった分かり易い画面作りは、制作側の良心だと言っても良いだろう。

 総じて、ウルトラマンマックス最終回の完成度はすこぶる高いという感触を得た。あらゆる要素を満載した贅沢なシリーズとして展開してきた、マックスというシリーズを締めくくるに相応しい情報量、そして完結性を有した傑作エピソードである。確かにコバとエリーの関係が未消化だとか、ウルトラマンゼノンの活躍があまりにも少なかったといった面もあるが、それでも完結という2文字を感じさせるに充分な一本であった。「何でもアリ」だったマックスの最終編を、素晴らしい構成力で纏め上げた小中氏と八木監督の手腕に脱帽。

 やはり、ウルトラは面白い!

オマケ

 前回にも増して、今回はオマケとして記すようなトピックが見つからない…というほど圧倒されてしまった。一応、エピローグで見られる面白いモノについて言及を。

 2076年の東京、ベース・タイタンが存在した周辺には、デロスのバーサークシステムのタワーと並び、ウルトラマンマックスのスタチューが建造されている。環境破壊への戒めと、未来への道標を併置してあるという、とても感慨深い情景だ。

 また、「銀色のベース・タイタン」には、DASHを思わせるマーキングが既になく、UDFの施設としてのアピールが施されている。平和になった地上は、ほどなくDASHのように戦力を有した部隊を必要としなくなり、UDFはある種の科学調査を主体とした連合組織へと転身したのだろう。いずれにせよ「ウルトラマンマックス」の世界を、一つの完結した世界として構築してみせたこのシーンは秀逸である。ただし、エリーのコスチュームだけDASH仕様だったのは謎。