忍びの13「燃えよ!ニンジャ運動会」

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 2クール目突入で、色々と構造に変化が現れました。敵側に新幹部登場、キンジと天晴達の関わり方の整理、天空のオトモ忍の存在とラストニンジャの称号。

 これらの要素が渾然一体となって提示されながらも、本編はコメディタッチの快作という意外なものでした。演出は金田監督でしたが、やはり金田監督はアクション畑だけあって、コミカルでスピーディな画面作りが素晴らしいですね。

 そして、更に意外な事に凪編でもありました。

晦正影

 今回より登場の新幹部級怪人。「つごもりまさかげ」と読みます。牙鬼軍団は難読ですね...。

 まず声が素晴らしい! 中尾隆聖さんですよ! 老獪なる頭脳派という雰囲気が物凄く出ていて良いです。中尾さんの戦隊登板と言えば、「デカレンジャー」でのエージェント・アブレラですよね。しかしながら、私としては「デンジマン」における顔出しゲスト・吹雪豪が印象深いです。「銀河ハニー」という歌を売り出し中のシンガー役。シリーズ中でもデンジ星の伝説にまつわる極めて重要な回の一つだったので、強く印象に残っています。

 また、ごくごく個人的には「新スパイ大作戦」での登板も殊更印象に残っています。クールな変装の名人ニコラスを担当されていた関係もあって、「変装後」の声をも演じ分けるシーンが多く、レパートリーの広さを発揮されていました。当時は「ばいきんまん」の声の人だとは知らなかったので、それを知った時はかなりの衝撃でしたね。ちなみに、「ドラゴンボール」には興味を失っていた時期なので、代表作と名高いフリーザの存在を後から知ったという...(笑)。

 中尾さんの話ばかりになってしまいましたが、晦正影のデザインとしては、十六夜九衛門の白狐、蛾眉雷蔵の般若に続いて、翁の面がモチーフ。この翁の面が非常に高い効果を発揮していると思います。

 というのも、翁の面は表情が優しい為、それをフィーチュアした晦正影には老獪さや「腹に一物」といった雰囲気が充満しており、一筋縄ではいかない恐ろしい人物であるという印象が強まっています。わざと翁の面の部分を周辺のデザインから浮かせているセンスも見事です。

 そして、登場早々に十六夜九衛門を牽制し、遊びを仕掛けて実利を得る姿勢を見せる等、闘志一辺倒だった蛾眉雷蔵とは180度異なるキャラクターである事を印象付けました。これは活躍が楽しみな敵キャラクターですね。

悩めるキンジ

 今回、キンジの持つ写真が何なのか、とりあえず判明しました。あの写真はキンジと彼の父、そして兄が一緒に映っているというもので、彼等はキンジと同じく妖怪ハンターとの設定。しかし、その父と兄は妖怪の犠牲になったと。そうなると、キンジがラストニンジャになりたがっているのは復讐の為だという印象すら出てくるわけですが、そこはほぼ明確に否定しており、キンジは妖怪ハンターを「継いだ」事になっています。

 このバックボーンが判明した事で、彼のラストニンジャへこだわりる意味がかなり明確になったのではないでしょうか。単なる忍者への憧れではなく、その技術を習得して一流の妖怪ハンターになる夢を追いかけているわけです。

 一方、キンジは天晴達との交流を経て、好天への弟子入り条件である「天晴達を討つ事」に迷いが生じています。私としては、この迷いがしばらく引っ張られて、キンジの暗部へスポットが当たるきっかけになるのかと思っていたのですが、何とあっさり迷いを払拭(笑)。ドラマの種を次々と蒔いてはその場で開花させる...凄いですね。

 迷いの払拭へのきっかけを作ったのは天晴達。天晴(と霞)が身内であろうと...身内だからこそ容赦しない時もあるという姿勢を見せた時、キンジは仲が良い事を遠慮に結びつけている自分の甘さに気付きました。今回は迷いを払拭したのも手伝って、6人でニンニンジャーを名乗るという「結成式」が行われ、いよいよキンジもニンニンジャーとして本格参戦といった処。しかしながら、刺客である事には変わりなく、このアンビバレンツなキャラクター設計が、今後もドタバタあるいは重厚なドラマを生んでくれそうです。この辺は先が読めませんよね。

好天の変化

 キンジが好天に迷いを吐露した際、好天は、迷いを生じるような弟子は絶対に取らないと言い放っていましたが、ここでの好天のセリフ回しには「十六夜九衛門で失敗したからこその凄味」が含まれており、言い方は悪いですが「結構適当な爺さん」という好天のイメージを覆すシーンになりました。何だかラストニンジャの後継者を早く育てる為に若者達を焚き付けているというか...。徐々に厳しい表情を見せるようになって、「ニンニンジャー」自体の雰囲気を変化させ始めているような感もあります。

 私としては、好天は好々爺で居て欲しいので、あまり深刻な表情を見せない方が良いと思っているのですが、やはり時折「真意」が垣間見えるのは必要ですね。キンジを焚き付けたのが、自分へ向いた矛先の回避だったのではないかと思える節すらありましたけど、そこまで孫達を弄んではいなかったという点で、彼の信用度が増しました(笑)。

 エンディングではまた、悪戯好きな好天らしいお茶目な方法でラストニンジャ襲名の条件を提示しており、従来の好天の路線が継続している事に安堵しました。

忍者運動会

 近年は小学校でも秋の大運動会をやめて春の大運動会に移行する処も増えているようです。そういう意味では時事ネタなんですよね。

 今回の忍者運動会で重要な点は三つ。一つは、伊賀先一門以外にも忍者が存在する世界観が提示された事。二つ目は、コミカルなアクションが非常に高い技術で演出されている事。三つ目は凪の存在。

 一つ目の、伊賀先以外の忍者ですが、これは隠流と疾風流が既に大物の先輩としてゲスト出演している事から自明ではありました。ただ、今回は極めてコミカルに描かれており、あまり表に出ず(それが忍者としては普通当たり前なのですが)、実力もそれなりの忍者達が頑張っている姿は、微笑ましい事この上ないものでした。

 二つ目のアクションですが、この辺りはさすが金田監督だけあってJAE陣との連携が完璧。細かい部分を挙げるとキリがないですけど、優れた体術を用いた地味な回転や回避運動といったアクションが実に流麗で素晴らしいです。また白眉は、後半のアカ、キ、スターによる三人四脚! 絵面は本当に地味(笑)。ですが、面をつけた上、かなりのスピードでやってのけるあの技術は凄いです。水に入ったりもしてますし。最初に息が合わなくてコケまくる演技も凄かったですね。

 三つ目の凪については、今回のメインとも言える活躍でした。

凪のポジション

 先のエピソードで、空気キャラ化を嘆くというネタまで披露した凪。資格マニアという面以外、普通の少年というキャラ付け故に、エキセントリックなキャラクターに囲まれては目立とうにも目立てないわけで、彼の存在感はネタならずとも心配になるレベルでした。

 なので今回、またまた天晴とキンジが目立って当然の展開だっただけに、凪の文字通りど真ん中へのフィーチュアは、驚きと共に嬉しかったですね。

 昼食時に飲み物がなかった為、まず率先して買い出しに行くという(実に地味な)シーンから始まり、自販機の前で各人の好みを的確に掴んでいる様子が描かれます。それに対するキンジの反応を描く事で、凪のポジションを浮き彫りにしていきます。

 ここで浮上してきた凪のポジションは、強い個性を持つ各人の間に立って仲の良さを担保するというもの。つまりは重要なムードメーカーであり、最年少者としてのキャラクター性を踏襲したわけです。このキャラ付けは非常に巧いと思いました。エキセントリックでないからこその、美味しいポジションとは正にこの事です。これは、「ゴレンジャー」におけるミドレンジャー=明日香健二のポジションを忠実に踏襲したものでしょう。強すぎる個性を発揮する面々の中にあって、芯の強さと明るいキャラクターで魅力を発揮し続けた明日香の再現ですね。

 三人四脚で真ん中を担当したのは、正に関係性のビジュアルによる表現でした。天晴とキンジは似たもの同士ですが、息を合わせるとなると主張が強すぎる。しかし、凪を間に挟むと素晴らしい力を発揮する。良い提示だったと思います。

 今後の凪の活躍にも、期待が持ててきましたね。今回の「実況」の素晴らしさを聞くと、その「喋りの巧さ」は五人の中でも突出しているので、もう少し発言が多くなると良いですね。

ヤマワラワ

 ヤマワラワについては、あまりにも当て馬扱いだったので、気の毒だとしか...。

次回は妹キャラが炸裂!?

 次回は予告でかなり風花が登場していましたので、風花の活躍が期待出来そうです。キンジも暴れ回りそうなので、更なるドタバタもあるか? 楽しみです!