忍びの14「助けてサギにご用心!」

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 風花をメインに据えての、天晴・風花の兄妹編。

 さらに、キンジのポジションが絶妙にコミカルでありながら、それでも天晴達の実力や心構えにしっかり影響していくという構成を見せており、当クール展開の基盤を見る感覚でした。

 霞に「ドジっ子」と評価される風花ですが、その実、確実に成長しており、単なる妹キャラからの脱却は間近という印象です。

ヤマビコ

 今回は、妖怪が事件の中心になってニンニンジャーを混乱に陥れます。とは言え、これまでのパターンとは異なり、明確にニンニンジャーのみをターゲットにしている為、ドラマに参加するキャラクターがグッと絞られるという状況になっています。

 ニンニンジャーの排除が即ち恐れの収集を円滑化するという、晦正影の弁により、ヤマビコは明確に刺客として登場したわけです。

 デザインは、公衆電話がモチーフ。ゴリラっぽい巨大な顔と毛深い体躯は異様な雰囲気を醸し出すものの、どこかコミカルな部分が勝っていて、本エピソードにピッタリでした。声はてらそままさきさんで、さすがの「怪演」でしたね。

 山彦らしく、「声真似」を主要な能力としており、その特殊能力を生かして天晴達を大混乱に陥れます。それ故に今回は、真似される側のアフレコ技能がストレートに出る事となりましたが、やはり2クール目ともなると、若手も巧くなっていますね。そんな中、好天はなんとヤマビコの声真似の為だけにアフレコ出演。他の回と併せてのまとめ録りだとは思いますが、これには驚きましたね。

 それにしても、天晴が騙されて各人の忍シュリケンを集めようとする際の、霞の何とも言えない表情が抜群に良かったですね。あ、霞は詐欺だと薄々気付いてるな...という表情。「宇宙刑事NEXT GENERATION」でも山谷さんはシーン毎の表情の設計に細かい配慮をしたそうですが、今回もその細やかさが効果を上げています。

天晴 VS キンジ

 冒頭から激しいバトルが繰り広げられます。

 キンジは前回までのいきさつから、もう遠慮しないという前提で天晴を襲撃してくるわけですが、他のメンバーの慣れっこといった感じの涼しい表情が非常にコミカルに描かれます。キンジの「お命頂戴」のターゲットは好天の孫全員だったように思いますが、まずは最強と目される天晴を狙っているようですね。

 このシーンでは、さすが金田監督と言うべきか。狭いセットの中で、しかも多くのキャストが配置されている中で、効果的かつ効率的な殺陣の組み合わせを行い、ダイナミックかつコミカルなバトルに仕立てています。キンジはスターニンジャーの姿で、天晴は素面でのアクションとなり、そのコントラストも見事。所々スタンドインがあるようですが、基本的な回転による回避等は西川さんご本人によるアクションなので、そのリアリティは折り紙付。

 また、後半、変身不能となった四人による素面アクションが長尺でフィーチュアされますが、こちらもキャスト陣の素晴らしい成長振りを感じさせるスピーディでダイナミックなものでした。この辺りの要求度の高さは、アクション畑出身の監督ならではといった処ではないでしょうか。

 ところで、天晴とキンジが頻繁にぶつかる事で、互いの実力がさらに磨かれているというエクスキューズも披露されました。

 今回の...というより最近の天晴は、鋭い目線がかなりサマになってきていますが、その演者としての成長と劇中人物自体の成長とがシンクロして、非常に良い効果を生み出していますね。エピローグで、天晴が一人「自主練」をしているシーンが挿入されて、その凄みに驚きましたが、ヤマビコに振り回されっぱなしだった天然振りとのコントラストが非常に新鮮で、物凄く強い天然キャラという珍しいレッド像を創り上げる勢いです。

 キンジの方はと言うと、遠慮を廃してストレートに襲撃する一方で、いざ妖怪とのバトルに入るとほぼニンニンジャーの一員として活躍。アンビバレンツなものを抱えながら、本人があまり悩んでいない辺りは彼らしいですね。また、天晴との一戦で部屋が悲惨なまでに散らかってしまった為、風花に一喝されるに及び、それによって兄妹仲に亀裂が入るのではないかと心配する等、本来の悩み処とは全然違う部分で悩むのもキンジらしい処。関わった人物のポジションは刺激する事なく、そのポジションを改めて解説する役割を強く感じます。

風花

 今回の風花はとにかく怒りの人。

 冒頭の天晴 VS キンジの一戦に怒る、ヤマビコの演じる天晴に怒る、まんまと罠にかかった天晴本人に怒る...。とにかく天晴の天然振りに手を焼くしっかり者の妹をアピールしています。一方で、霞が評する処の「ドジっ子」キャラも活きていたり、一瞬で形勢逆転のきっかけを作り出したりと、キャラ作りに余念がありません。これまで、風花は実力的には低めな上に能動的な活躍に乏しい人物像でしたが、ようやく実力の向上も描かれるようになり(「ドジ」は実力の範疇ではなく性格の問題)、徹底的に悩みを排除した兄のアニマとして、存在感を発揮し始めたのではないでしょうか。

 それはそうと、怒りの表情がとにかく魅力的ですよね...(笑)。叱られたい妄想に駆られた諸兄諸氏は挙手の程を。

 ...話を元に戻します。

 キンジは風花と接する事で、改めて兄というものの存在を確認したように見えます。ここで興味深いのは、いつも伊賀崎の孫達のポジションは提示されるのみで変化が見られず、キンジが家族の在り方について気付きを得るというパターンを示している事です。今回の場合、風花が披露するのは、兄妹は喧嘩しようが仲良くしていようが兄妹である事には変わりないし、自然である...というリアルな観点。キンジの抱く像が理想論か、あるいはステレオタイプであると、ある意味一蹴されているわけです。

 風花は更にもっと進んで、兄が「頼りない」から面倒を見ているという、実力主義のキンジからすると理解を超えた価値観で動いているのもあって、我々はキンジの目を通して、伊賀崎家の完成された家族像を仰ぎ見るという状態になっているのです。

 ちなみに、風花が元々持っている「頼れる妹像」と、「兄に劣る実力」とを、エピローグにて止揚する試みがなされました。天晴の「自主練」に加わるという、静かながらも凄味のあるシーンでしたが、ここでの風花の表明は「(実力も含めて)真に頼れる妹」になる事であり、天晴は厳しい表情をしつつもその表明を喜んでいるような節がありました。ここで天晴はようやく兄らしい姿を見せたような気がします。このシーンにおける二人の剣捌き、実にサマになっていましたね。

 あと、これはごく個人的な感想ですけど、今回の風花の表情が、「ダイナマン」のダイナピンク=立花レイにとてもよく似ていたように思います。

雑感

 ギミック満載でコミカルでしたが、メンバーの中で最も血縁が濃い二人のポジションを再確認し、その余韻も素晴らしい回でした。動かすのが難しいキンジを、巧く立ち回らせている辺りに技巧を感じますし、五人の実力レースにも見応えがあります。

 次回は霞の活躍が見られそう。二話続けて女性メンバーメインとは、なかなか挑戦的です。