忍びの15「妖怪、ワタシ失敗しないので」

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 霞の魅力全開エピソード。相対する敵も女性型という事で、一面では「女の戦い」という捉え方も可能。まだ未成年ながらも「女性」を感じさせるキャラクターである霞は、この上ない適役でした。

 また今回は、全編にわたって巨大戦が常に展開しているというとんでもない状態。しかも公式サイトによれば、巨大戦も本編監督(竹本監督)の担当だそうで、物凄いです...。

フタクチオンナ

 声を沢城みゆきさんが担当。色気とコミカルさを巧みに表現する第一人者であり、今回もその魅力を振りまいておられます。

 フタクチオンナのスーツ自体も、女性怪人らしく、なるべくスリムに作られています。何しろ、戦隊の女性怪人は皆マッシヴですからね(笑)。「バトルフィーバー」のデスマスク怪人(人間体は曽我町子さん!)辺りは、まだスリムな感じでしたけど、「デンジマン」のデスマスク怪人(またデスマスク)、「サンバルカン」のバラモンガーになると、えらく体格が良くなってしまいます。近年のものも、戦隊怪人は装飾過多な傾向があるので、仕方なくはあります。その点、このフタクチオンナは装飾を抑えて体型を重視した点で秀逸であると言えるでしょう。

 「二口女」といえば、私なんかは戸田恵子版「鬼太郎」の第一話を思い出します。美しい姿で男を誘い出し後頭部の巨大な口で喰らうという、男としては実に恐ろしい妖怪なわけですが(鬼太郎では、妖怪城で待ち構える妖怪の一人に過ぎません)、今回はその特徴を「口車」に換言して描いています。

 その「口車」にまんまと乗せられたのは、ロデオマルとキンジ。八雲もある意味乗せられる寸前でしたが、さすがに「二口女」の罠に女性は引っ掛からない...という事でしょうか。本編もその特徴を巧く反映した内容になっていて感心しました。

 ちなみにモチーフは眼鏡で、「二口女」とはあまり関連性がありませんでしたが、霞の「美人代理人の術」による変装も麗しい眼鏡姿でしたから、こちらも巧くシチュエーションに生かした形になっていますね。

キンジ

 キンジの「お命頂戴」は今回もギャグテイスト。

 特に冒頭は、霞の高い能力を示す為の道化に徹しています。突如スターニンジャーが参上しても、凪と風花相手に霞の開く講義風景は揺らぐ事もなく、むしろ軽く邪魔者扱い。しかも、気を取り直して霞に斬りかかろうとするも、霞がいつの間にか仕掛けた「影縫い」によって身動きとれず。ここでは、霞が常に二手三手先を読んで仕掛ける、頭脳派である事がテンポ良く語られています。

 道化を演じざるを得ないキンジでしたが、一方で切羽詰まった状況である事を説明してもいます。

 前述の霞達とのシーンでは、好天の言をプレイバックして期限が迫っている事を示したり、エピローグでは、十六夜九衛門の言葉(「真の裏切り者は好天自身」であり、「共に終わりの手裏剣を奪おう」と持ちかける)に一瞬迷いを見せたり。特に後者は、平成ライダーにおけるヒーロー対立劇の前兆に近似したもので、戦隊らしからぬ「違和感」が良いアクセントになっています。恐らくは、このシーンに対する何かしらのアクションが今後見られると思いますが、あまり殺伐としない対応をお願いしたい処ですね。

 後は、珍しく「被害者」の中心に居ます。

 ロデオマルがフタクチオンナの罠にかかって妖気に当てられ、更にはキンジも同様の罠にかかります。傍目には単純な性格のキンジ故に、いとも簡単に罠にかかってしまうという展開なのですが、彼の場合、裏に抱えている苦悩をはじめとする闇も多く、実は劇中人物が捉えているほど単純ではないという辺り、見せ方が多層的で面白いですね。

 拇印をロデオマルやキンジが押すシーンは、ロデオマルに指紋がある事が判明する(?)といった具合にコミカルですが、怪しい契約書には簡単に同意しないという教訓もほんのちょっと含まれており、近年では珍しい教育的な面が見られました。

天晴と八雲

 今回の彼等は実に多忙です。

 冒頭では天空のオトモ忍を探索。中盤では天晴がロデオマルを抑える為に奮闘しつつ、八雲は霞のサポート。ドラマ自体はコミカルに推移していきますが、実はどの状況も切迫し続けているという描写で、そのテンションの高さは半端ないです。

 その中でも物凄いと思ったのは、ロデオマルの無差別射撃で、ビル群が破壊されて街がパニックに陥るというシーン。こういう類の話では、街の被害に関してはスルーされる傾向が強いのですが、やけに丁寧に描かれていて戦慄すら覚えました。人々はロデオマルが操られている事など全く知らないわけで、何か得体の知れない巨大なものが暴れている程度の認識しかない筈。まあ、ここまでシビアな感情が描き込まれているわけではありませんが、そこまで思考が及ぶ程に衝撃的なシーンでしたね。

高校生コンビ

 凪と風花の奮闘振りも光ります。

 今回は、各人がバラバラに対処するシチュエーションになった為、ガシャドクロの相手が二人に一任されました。シュリケンジンを操る際、必ずしも五人揃う必要がない事は何度か示されていますが、二人で担当するのは初めて。やはり相当に疲れが生じるらしく、フラフラになりながらも奮闘する二人の姿は応援したくなる事請け合いです。

 分身で五人分を演じるという離れ業には、二人の成長振りを感じさせたものの、一方で余計に疲れるという結果を生むという微笑ましさも。ドラマ内での役割としては「尺稼ぎ」に過ぎないのですが、描写が充実している為、メインの巨大戦としての風格があったんですよね。むしろ、復活後のバイソンキング戦の方が取って付けたような感じだったりして。

 凪個人の白眉は、エピローグでうっかり霞を「裏番長」と称して、霞の恐ろしい表情を喚起して固まってしまうシーン。凪の可愛い一面が抜群のカットで発揮された名シーンでした。

「美人代理人」霞

 自らを「美人代理人」と称してしまう処に霞の凄さがあります(本当だからしょうがない)。

 まあそれは置いといて、普段から飄々としているようで、実はあらゆる状況に目配せしている霞の真骨頂を見る思いでした。

 クルクル変わる表情の豊かさと、明瞭な口調による迫力ある講釈は、山谷さんならでは。ネゴシエーターのスタイルがビシッと似合うのも、大人っぽい雰囲気を湛えているからこそですね。一方で、フタクチオンナの隙を作る為にわざと「お手上げです」とおどけてみせる表情はコケティッシュ。あらゆるキャラクターを瞬時に切り替えて出現させてしまう霞は、正に「変わり身」の達人といった処でしょう。

 フタクチオンナに対する晦正影の待遇の悪さを知る筈もない霞ですが、想像力と統計的な裏付け(?)があったのか、そこを巧みに突いて状況を打開に導きます。その様子は爽快であると共に可笑しくもあり、何故フタクチオンナはそこで契約書まで破ってしまうのか...とツッコミを入れ始めると余計に可笑しいわけです。しかし、術中にはまったフタクチオンナを見据える霞の口元には、八雲が「恐れを感じた」と評するのも納得な「不適な笑み」が...。笑わせておいてここで少しゾッとさせるのが見事です(笑)。

 また、ピンでの変身シーンがバンクではなく本編合成で行われていたりと、戦闘面での優遇も。変身後の見せ場も突出した優遇振りで、ここまで明確にモモニンジャーの「戦闘能力」を示したのは初ではないでしょうか。とどめは五人によるガマガマ銃一斉発射でしたが、霞がわざと余力を残してお膳立てしたような疑惑すら感じましたね。とにかく「逆らえない姉貴」という存在感を逐一強調するシーンの組み立てが素晴らしかったですね!

次回は旋風

 このところ、あまり見せ場のない旋風をフィーチュアするとあって、またまた楽しみです。好天がとにかく掴み所の無い人物へと変化しているので、「ニンニンジャー」の良心を担う旋風の活躍を待っていました。

 ハートフルなドラマに期待したい処です。