忍びの22「超合体!覇王シュリケンジン」

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 八雲とキンジにスポットを当てたスーパー合体誕生編。私の予想では、八雲とキンジの「欧米コンビ」に溝が有り、その溝がある事で覇王シュリケンジンが完成しないという筋だったのですが、全然違ってましたね...。

 今回はギャグテイストが強く、有明の方の残忍でありながらコミカルな振る舞いも特に目立っていました。この辺り、さすがは三石さんといったところでしょうか。コミカルさに引っ張られて全体的に勢いもあり、派手な特撮への弾みの付け方も巧みでした。

ヌリカベ

 塗壁と言えば、鬼太郎の仲間のぬりかべが有名で、あの巨大なコンクリート板(?)状のスタイルが定着しています。しかし、今回のヌリカベはあの水木しげる版スタイルを踏襲せず、「妖怪絵巻」に描かれたものを使用したデザインとなっています。特に頭部はそのままといった感じであり、デザイナーのこだわりが感じられる秀逸なデザインです。

 モチーフは踏切の遮断機で、通行人を遮るという点で塗壁の特徴と共通する要素を入れてきました。ただし、能力としては「壁ドーン」と叫びながら「人生の超えられない壁」を作り出す方が目立っていて、遮断機については印象がやや薄かったように思います。

 この人生の壁の被害にあった人々の中に、話題の「ビリギャル」風の女子高生がまじっていたり、前述の「壁ドーン」も流行語の流用だったりと、随所に現れるパロディ要素が実にコミカル。若干スベっている処も含めて、何故か微笑ましい画面作りが見られました。

 ニンニンジャー側の被害者は、今回のメインたる八雲とキンジ。この二人の前に立ちはだかる壁には「天晴」とあり、ニンニンジャー内部の力関係が如実に示された格好となりました。ここまではっきりと「明文化」されると、ぐぅの音も出ないわけでして、やはり現時点の天晴は孤高であると。ただし、超絶フォームが天晴独占なのかと言うと...。これについては後述。

有明の方

 今回は有明の方が本格的に戦いの場に登場して来ます。必然的に登場シーンも増え、セリフも多くなるので、その個性をよりアピールする場として機能していました。

 冒頭にも書きましたが、やっぱり三石さんが当てるとお茶目な感じが出て来ますよね。気まぐれで残忍な面もちゃんと強調しつつ、要所要所にコミカルな言動を混ぜて難しいキャラクターを存分に表現されていると思います。牙鬼軍団はそれぞれ実力派俳優・声優陣で固められていますが、インパクトという面では今の処、有明の方が随一ではないかと思います。

 同じテレ朝では「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」、多局では「セーラームーンCrystal」辺りを併せて観ると、いかに演技の幅が広いか、よく分かります。役によって声質を変化させるというギミック派ではないですが、それぞれのキャラクターが何たるかを理解するセンスが凄いですね。

八雲とキンジ

 今回は、「欧米コンビ」と称される八雲とキンジがメインを張ります。

 キンジの登場当初は、八雲と英語の発音を巡って一悶着ある等、その出自をネタにしたギャグに彩られていた二人ですが、ここに来てキンジとの関わりが疎になっていた事もあって、今回のスポットの当て方はなかなか巧い処を突いていると思います。

 八雲がキンジの事を未だ「スター」と呼んでいるという点が浮き彫りにされ、それが「キンジ」辺りに変化しなければ獅子王に気に入られない...というのはミスリード(というより、そもそも蛇足な要素だった気も...)。実際は、二人の発想力の乏しさ=頭の固さに獅子王が面白味を感じないというのがテーマでした。ただ、このテーマ自体もあまり有効には機能していなかったようですね。

 というのも、奇抜な発想を効かせてヌリカベの作り出した壁から脱出するまでは良かったのですが、覇王シュリケンジンの合体自体には獅子王の気持ちは直接関係なく、基本的に合体ギミックの問題(!)だったわけです。確かに好天の指摘は正しい。しかしながら、そこに獅子王が関わる意味があったのかどうか。まあ、超絶フォームを八雲やキンジが会得し、それが覇王シュリケンジン誕生に繋がるとか、そういう展開でない限りはテーマを貫徹出来ないのですが...。

 そんなわけで、八雲とキンジの距離感の変化を追う楽しさこそありましたが、スーパー合体へのきっかけに関する描写は今一つでしたね。八雲とキンジが武器となってアカニンジャー超絶をパワーアップさせるというアクション自体には燃えましたが。

 ちなみに、壁の内部で奮闘するシーンが今回の白眉でしたね。忍術をちゃんと見せる丁寧な画作りに唸らされましたし、「天晴」の文字がそのままアトラクションのトラップのように動く等のセンス、水かぶり等に体当たりで挑む二人の姿等、「ニンニンジャー」の楽しさを凝縮した名シーンでした。

覇王シュリケンジン

 合体方式としては、ゴーディアンとかバイカンフーのマトリョーシカ方式ですが、隠さずに露出させるというのが特徴ですね。正に忍ばずワッショイなわけです。

 基本的に「フラッシュマン」のグレートタイタンを嚆矢とする直立不動超巨大ロボの系譜にあり、故にアクションをさせるというよりは、威圧して飛び道具で一気に制圧する描写になります。このパターンは変化を付けにくいので、演出的には年々扱いづらくなる筈なのですが、様々な工夫で飽きさせないようになっていますね。今回の特徴は、やはりアカニンジャー超絶が露出している事による「ミクロな見せ方」にあると思います。

 一方で、重量感と巨大感を演出する俯瞰ショット等、ハッとする画面作りが奮っていました。マクロ視点とミクロ視点がシームレスに切り替わる凄味が、画面に横溢していました。

超絶風花

 今回、美味しい処をかっさらったのは、何と風花でした。

 素面のまま超絶勝負チェンジャーを装着(獅子王がスケベ心を発揮して無理矢理取りついたようにしか見えない処がミソ)、そのまま超絶フォームに変化してしまうという、物凄いインパクトを持つシーンが誕生しました。

 わざわざ変身のプロセスを丁寧に見せるカットまで用意される等、制作陣の悪ノリが極まったシーンとして後世に語り継がれるのではないかと思います(笑)。

 それはそれとして、使いこなせるかどうかはともかく、超絶フォームは獅子王の機嫌次第だという事がはっきりしました。恐らく商品展開上、アカニンジャー超絶以外が登場する確率は低いですが、これでレッド偏重が極化する事態は設定上で回避された事になります。ラストニンジャの称号争奪戦という側面は、まだまだ担保されています。

次回

 怪談系という事で、近年では珍しくド直球の時事ネタですね。わざわざ「夏休みスペシャル」と題する自信にも注目です。霞絡みのエピソードは、そのキャラクターの特異性から面白くなる割合が高いので(自分の嗜好と合わせて・笑)、非常に楽しみです。