忍びの29「忍者すごろく決定版!」

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 とにかくハチャメチャな画面作りが魅力だった前回に続き、今回も「忍者すごろく」という荒唐無稽なビジュアルを据えて登場。

 とりあえずは、忍者すごろく自体が東映特撮ドラマの十八番たる「閉鎖空間・異次元モノ」の範疇にあるので、かつて宇宙刑事シリーズで小林義明監督が開拓した不条理な世界観からは逸脱しておらず、前回程弾けている印象はありませんでしたが...。

 しかしながら、やっている事が荒唐無稽なのに、ドラマの方はシリアスの方に振られているので、大いにギャップを楽しむ事が出来ました。

イッカクサイ

 サイを肩に大きく配したデザインがインパクト絶大な二番手・イッカクサイ。

 「仮面ライダー龍騎」に登場した仮面ライダーガイのシルエットにも似ていますが、何となくトランスフォーマーっぽさもある楽しいデザインです。勿論、その口調も語尾に「サイ」を配す等、キャラクター作りはバッチリ。前回のハヤブサがスピードタイプならば、今回のイッカクサイはパワータイプの印象となっており、巧く差別化がはかられています。

 ただ、すごろくのオーナー(?)以外の見せ場がほとんどないという可哀想な敵キャラではありましたね。パワータイプの見た目から受けるような能力を発揮する機会も殆ど与えられず、メインの能力は賽(これもサイ)の目による力の倍加というもの。公式サイトによれば博才(ここにもサイ)忍者とあり、パワー以外の処に特徴が付与されていました。巨大戦にしてもほぼレオパルドン状態(瞬殺)でしたから、哀れですよね...。

忍者すごろく

 前回に続いて、やはり子供がターゲットとなった今回。旋風の少年期の挫折を再現したすごろくという事で、年齢の近い子供達の絶望感をより煽るという悪辣さが光ります。その上で、晦正影らしくニンニンジャーに対する罠を兼ねている辺りが秀逸。「上がりがない」という袋小路は、苦痛をもたらさないだけにジワジワとした絶望感を喚起し、風花に父・旋風の精神的な袋小路を代弁させるといったシリアスなシーンへと結実します。

 袋小路に陥る前は、それなりに明るく荒唐無稽なビジュアルに終始。スッパラゲが各登場人物に扮するチープさも狙い通りと言え、その構成、構図はやはり前述の小林監督の世界観に寄り添う感覚ですよね。年季の入った特撮ファンには嬉しいものでした。

旋風の過去

 今回クローズアップされるのは、ズバリ旋風の過去。旋風はある日突然忍術の才を失ってしまった...というくだりが以前描かれました。その原因は何と十六夜九衛門だったというのが今回のタネアカシ。旋風は忍術の才能がなかったのではなく、実は「忍タリティを奪われていた」のでした。

 私としては、旋風が大人になった事で、子供の頃の得意なものを忘れてしまったというロジックが好きだったので、やや残念に思ったクチなのですが、衝撃度という面ではこちらの方が高いのは間違いない処。これまでの、好天の旋風に対する態度(やや後ろめたい雰囲気を漂わせていた)が、十六夜九衛門の件を得る事で、より腑に落ちる辺りも見事だと思います。なお、好天の、「旋風の忍術の才能を伸ばしてやれなかった」という後悔自体は、十六夜九衛門が介入しようがしまいが同じ(十六夜九衛門に忍タリティを奪われた直接的な原因は、旋風が好天の言の前に諦念を抱いた事)なので、これまで散りばめられた要素が滅失する事もありません。

 この件は、すごろく内の寸劇に留まらず、ちゃんと旋風の鮮明かつ丁寧な回想シーンが挿入される事で、よりインパクトを増しています。旋風にそっくりな少年を登場させて度肝を抜き、まさかの十六夜九衛門・人間体をも登場させ、しかも潘さんにアテレコさせる徹底振りで更に回想のインパクトを高めていました。正直、ここまで丁寧に描写されるとは思っていなかったので、驚きです。

 この回想の中で、旋風が「優しすぎて忍者に向いていない」というどこかで聞いたような好天の言を受け、忍者の道を諦めたとされています。その諦念こそが旋風の弱さであったわけで、そこを理解しつつサポート出来なかった好天の悔恨の深さは、察するに余りあるものでした。エピローグにおける親子の会話、好天の不器用な謝罪は、二人の関係性を的確で素晴らしい芝居にて紡ぎ出す、とんでもない名場面となって提示されました。ここには天晴達が介入出来ない、二人にしか理解し得ないものが確実にありました。思わずホロリとしてしまいましたねぇ。

 一方で、旋風は天晴達を立派な忍者にするという夢を掲げて、自分の夢を子供達に託すという道を選びました。十六夜九衛門から忍タリティを取り戻して自分が忍者に返り咲く...という思考に向かない処が、この旋風さんの立派な処ですね(代わりに天晴が果たそうとしてますが)。魔法忍者という前代未聞の道に挑む八雲に、厳しい口調で迫る旋風の姿。そこに甥や姪を含めて実の子として見ている彼の懐の深さ(この辺り、実は好天にはない度量)が感じられました。

八雲

 前回に続き、今回もほぼ八雲がメインの役回りを演じており、にわかに八雲のキャラクター描写が盛り上がってきた感があります。

 まずは、忍者すごろくで「振り出しに戻る」という正規の手続を利用して一旦脱出するというワザを披露。霞をして「さすが」と言わしめる成長振りが頼もしいです。

 続いて、忍者すごろくが旋風から奪った記憶を元に作られていると推察し、旋風の強さを信じてすごろくに招くという行動を示し、彼の優れた洞察力を描きました。ちなみに風花が本気で反対するくだりは、実の娘ならではの「気持ち」が垣間見られました。甥っ子である八雲の方が、旋風の本質に肉薄していたという事実は、実の親子であるが故に見えない処がある...という事を示していて深いです。

 ちなみに、風花に関して言えば、再度すごろくに入る際にイッカクサイを蹴飛ばすという、素晴らしいギャグシーンが登場。ちゃんと腰の入ったキックに度肝を抜かれました(笑)。

 前代未聞の魔法忍者を目指す八雲にも、先達不在が故にやはり迷いがあり、それが吉凶を分けるような場面にはまだ遭遇していないものの、その迷いが良い結果をもたらさない事には、彼自身気付いているようです。故に、旋風が自身の諦めが招いた結果を八雲に提示し、八雲がそれに呼応する事で、迷いが断たれるという展開には、感じ入る処多大でした。

 そして、袋小路にあって、八雲が魔法で作った脱出路に、他の五人が忍術で作り出した路を重ね合わせる事で開かれる突破口。脱出の「方法」としてはかなり予定調和的ですが、八雲のキャラクター性が巧く合致していた為、逆に感動的なシーンに仕上がっていたのは見事でしたね。

次回

 天晴に新展開??

 今回のラストにも、次回への引きとして麗しいくノ一が登場していましたが、アクション界隈で結構注目されている方のようで。楽しみですね。予告では馬場良馬さんの姿も! 「ゴーバスターズ」は言うに及ばず、最近では「宇宙刑事 NEXT GENERATION」で鮮烈な印象を残してくれたので、またまた楽しみです。それにしても、色々な要素を繰り出してくるので、油断出来ませんよね。