忍びの30「ねらわれた忍者塾!」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 久々に明確な天晴編として登場したエピソード。

 おもちゃ作戦、すごろくと来て、今回は塾。次回は鬼ごっこなので、十六夜忍者編は子供の生活をモチーフとした展開が連続するという事になるようです。

 今回の「花」は、とにかく山本千尋さんが魅力たっぷりに演ずる、キキョウなるキャラクターでしょう。魅力的なヒロインを二人も擁する「ニンニンジャー」に、さらなる花を加える辺り、堂々たる制作姿勢が垣間見られます。

クロアリ

 今回の十六夜流忍者は、黒蟻をモチーフにしたクロアリです。

 対象に憑依して意のままに操るという能力が、本邦特撮TVドラマの伝統芸を体現しており、演出も冴えていました。古くは「ウルトラマン」の初代バルタン星人(アラシ隊員の脳髄にアクセスして日本語を喋るというもの)から始まり、同二代目は明確な侵略目的で毛利博士に憑依していました。その後も、憑依型怪人の系譜は、仮面ライダーシリーズは勿論の事、戦隊シリーズでも好んで用いられました。黎明期には「デンジマン」のメダマラーという、デザインのインパクトもストーリーも演出も素晴らしい傑作が存在するのですが、その辺りは皆様でご確認の程を。

 戦力的にはあまりパッとせず。デザインはやはり蟻を大胆に配置した忍者装束であり、非常に機能的で格好良いのですが、ことバトルとなると尺自体が短めになってしまった事もあり、残念ながら見せ場があったとは言い難い印象です。今のところ、その辺が十六夜流忍者に共通の特徴となってしまっていますね。

伊勢喜六

 山本千尋さんのキキョウがメインゲストですが、今回は忍者塾の塾長として伊勢喜六なるゲストキャラクターも登場。殆どがクロアリの憑依状態だった為に裏のある描写となり、基本的に悪役だったわけですが、やはり馬場良馬さんなので爽やかに決めておられました。

 馬場さんは言わずと知れた「ゴーバスターズ」のブルーバスター。挑戦的な作風で物議を醸した「ゴーバスターズ」でしたが、年長者として画面に安定感をもたらす存在だった事は間違いなく、どこか安心出来る、昭和のお兄ちゃんヒーローを彷彿とさせるキャラクターとなっていました。これは馬場さんの雰囲気に依る処が大きいですね。

 馬場さんは「宇宙刑事 NEXT GENERATION」では宇宙刑事エステバンを演じ、ブルーバスター=リュウジとはまた違う、軽妙洒脱かつ退廃的なキャラクターを見事に表現していました。この芝居の幅広さにアクションセンスが加わるのですから、ヒーロー役者として一流ですよね。

 今回も憑依状態ながら生身のアクションを華麗に披露し、先輩ヒーローとしての風格を遺憾なく発揮していました。キキョウと共に再登場が待たれるキャラクターです。

キキョウ

 今回のメインゲスト。天晴とは旧知の仲で、超鈍感な天晴に淡い想いを抱いているという設定が実にいいですね。演ずるは山本千尋さんで、太極拳の達人だそうですね。動きの良さに納得です。

 ごく個人的な意見ですけど、「スケバン刑事III」当時の大西結花さんに雰囲気が似ている気がします。「スケバン刑事III」も忍者の話(?)ですし、何となく縁を感じてしまいますね。

 キキョウの肝は、伊勢喜六に尊敬と憧れを抱きつつ、天晴には淡い想いを抱いているという点。憧れが勝つか、恋心が勝つか。そのギリギリのせめぎ合いをクライマックスでは楽しめるわけです。天晴自体の心の動きは、彼が単純明快である事も手伝って、それ程強調されない為、今回のストーリーを引っ張る感情は全てキキョウが握っていると言えます。忍者塾に天晴を招いて嬉しそうなキキョウ、忍者塾の子供達の様子を批判されて不機嫌になるキキョウ、天晴の直感が当たっていたと確信して怒りに燃えるキキョウ...。正に主役でした。

天晴

 これは、裏を返せば天晴に感情の機微を期待していないという事でもあります。確かに苦悩や恐れといったネガティヴな感情には無縁であって欲しいキャラクターですから、他のキャラクターとの関わり合いで、その存在感をアピールしていく必要が出てくるわけです。キキョウとの関わり方はそれを如実に現していたのではないかと思います。

 勿論、天晴が天晴たるに相応しい描写はふんだんに登場し、彼の押しの強いキャラクター性をより強調するエピソードとして成立していました。

八雲と霞

 二人の参謀格は、「忍者塾」というキーワードだけでリサーチを開始する動きの速さでした。

 勿論、20分強でストーリーを回していかなければならないので...という理由はあるでしょうが、それでも八雲と霞ならばその対応の早さが納得出来る辺り、「ニンニンジャー」の盤石振りが感じられるというもの。どのポイントでどうメンバーを使えば良いか...という方法論が中盤で既に確立されているんですよね。故に崩し甲斐もあるという事で、その辺りが八雲のネタキャラ化だったりするわけです。

 この二人の他にも、凪が遠慮なく本質を言い当てていたり、風花に至っては兄が心配でたまらないという感じで振る舞っていたりと、それぞれが魅力的。キンジは彼等に振り回されている感じが出ていて愉快でした。

次回

 気付けばまたストーリーに関して何にも述べませんでしたが...(笑)。とりあえず次回について。

 某バラエティ番組のパロディで紡ぐであろう次回。霞に危機が訪れる可能性が...という事で俄然期待が高まるというものです。楽しみですね。