忍びの6「テングの神隠し」

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 前回の予告では風花編っぽい雰囲気でしたが、風花ピンチ編といった趣。

 風花の登場する尺は多いものの、基本的に「助けられるヒロイン」の王道に沿ったもの。そこに天晴の独走を批判する視点を加えて、ニンニンジャー再結束を描くものとなりました。

 天晴がパオンマルを得た際の忍タリティ、それが一度忘れられたように感じられる展開でしたが、一歩後退二歩前進という「リアルな成長」を丁寧に描いて見せたという点で高く評価出来るのではないでしょうか。

テング

 大ベテラン・佐藤正治さんの声を得たテング。「キン肉マン」のバッファローマンの声が、特に私の印象に残っています。だから片方の角を折られる...って、それは蛾眉雷蔵の方でした(笑)。

 冗談はさておき、クラリネットを天狗と融合させるセンスが凄いですね。特に天狗の特徴である「鼻」。そこに楽器の特徴をそのまま配するセンスが素晴らしいです。

 能力はと言うと、サブタイトル通りの「神隠し」で天狗のイメージに沿っています。クラリネットの音色と共に異空間を創り出し、そこに誘うというもので、前半では風花と他のメンバーを断絶させ、後半では天晴 VS 蛾眉雷蔵のバトルフィールドを創出しました。異空間モノのお手本を示すような演出でもありましたね。

 団扇のイメージも抜群で、芭蕉扇の如く突風を起こすといった、定番の演出も効いていました。基本的には、蛾眉雷蔵が天晴と戦いたいという欲を叶える為にのみ動いている印象があるので、魅力的な要素を多く併せ持ちながらも、単なる狂言回しに近い印象になってしまったのは、やや惜しい処です。

風花、旋風、好天

 今回は風花が異空間に隔離されたり、一人で攻撃に晒されたりと、かなりの危機描写を担当しています。

 いわば「やられ役」なのですが、その危機から脱する「強いヒロイン」としての描写はほぼ皆無(少なくとも今回は)。これは戦隊では意外と珍しい存在だと思うのですが、恐らくは「戦う少女」というよりは「妹」属性の方が強く押し出されているのではないかと思います。これから先、順当に妹キャラから脱して成長していく筈なので、序盤としては妥当でしょう。ただ、やはり戦隊では珍しいポジションなので、面白い感触を伴っています。

 今回最も興味深いのは、旋風でしょう。

 旋風は、天晴と風花の父親ですが、人数面では「伯父」である比率の方が高いので、五人を心配しつつも割とドライにサポートしている印象がありました。ところが、今回は風花がテングにさらわれたと聞くに付け、かなり取り乱していた感があります。

 これは邪推ですけど、多分霞が同じ立場になったとしても、旋風は慌てこそすれ、取り乱すような事はなかったのでは。やはり娘となると心配してしまうのが親心。物凄く巧い芝居でその心情を表現されていて素晴らしいものがありました。

 私は同様のパターンで「宇宙刑事シャリバン」の終盤が印象に残っているのですが、普段は冷静沈着なコム長官が、娘のミミー誘拐の報を聞いて感情を露わにするというくだりがあります。今回はそれよりもあからさまなので、より感情移入出来ましたね。

 さらに、旋風の場合は自分が忍術を教えて貰っていないという立場を悔やみ、そのやり場のない思いをつい好天に向けてしまうという場面が用意されていました。いい歳をした人物が思春期のような言動で「親に突っかかる」というシーンは結構衝撃的で、後見人二人体制の効果が如実に現れたシーンだと思います。

 好天が旋風に忍術を教えなかったのは、「才能がなかったから」と言っていましたが、後のシーンで十六夜九衛門に「わざと牙鬼弦月を封印しなかった」と言っていたりもするので、このように相手を煙に巻くような言動を考えるに、もしかするともっと深い理由があったのかも知れません。なお、今回は好天は助言する程度で一切手を貸していません。いよいよ本格的に「見守る立場」へとシフトしているようにも見えます。

蛾眉雷蔵

 実質的な前回にて対決をすっぽかされてしまった蛾眉雷蔵ですが、今回はガッツリと出陣します。

 対決という行為自体がギャグ化されるのかという心配は杞憂で、天晴相手に終始主導権を握り、「かなわない敵」という存在感を猛アピール。戦隊の「五人の力を合わせて戦う」という不文律を、この蛾眉雷蔵相手に明確化する展開でした。一人ではかなわないというテーマ性は、ともすれば勢いの中で忘れられがちですが、敢えて強調してみせる事を選んだ事で、発展途上の忍者達というイメージを巧く構築出来ていると思います。

 面白いのは、「必殺技を五人で撃てば撃破出来る」という、戦隊の定番を示すのではなく、あくまでチームプレーで敵を「追い詰めていく」というプロセスを丁寧に描いている点。忍術の描写を織り交ぜたトリッキーでアクロバティックなアクションを随所に挿入しつつ、それらが有機的に相互作用する事で、シーン全体に流れを生み出して徐々に敵を追い詰めていく...。この丁寧さはバトルに上質な説得力を付加しています。

 十六夜九衛門の得体の知れなさを利用して、蛾眉雷蔵を巧いタイミングで退場させる段取りの良さも見事。天晴達が、何とか蛾眉雷蔵の片方の角を折る事が出来たという「結果」も良いインパクトを産みだしていました。

雑感

 いわゆる風花編ではありませんでしたが(未だ単独編はない)、全体的にバトルシーンに気合いが漲っていたり、年長者の演技合戦が見られたりと、充実した一編でした。

 何故か放映のフォーマットが変更されており、頻繁にCMが入ってくる感じで落ち着きませんでしたが、そのうち慣れてくるかと。

 最後の最後にニンジャレッドとハリケンレッドが出て来て、そのインパクトの強さで全体を食いまくってしまったのはやや残念(笑)。まぁ、一大イベントなので引きとしては正解なんですけどね。

 というわけで、次回は戦隊のタブーを破る衝撃のゲスト編。「ゴーカイジャー」は「スーパー戦隊が地続きで存在した世界の話」でしたから、今シーズンのように単独世界に過去の戦隊ヒーローが出てくる事には衝撃を覚えるわけです。

 小川輝晃さんと塩谷瞬さんもご登場なので、否応なく期待が高まりますね。