忍びの9「忍術VS魔法、大バトル!」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 八雲の母で旋風の姉にあたる人物・加藤春風が登場。伊賀崎家の親族が他にも登場するのでは...と期待させるに充分過ぎる好演を見せてくれました。魔法をフィーチュアする等、一応の八雲編ではありましたが、意外に霞の活躍振りが目立ったのも興味深い処。

 なお、前回チラ見せ的な登場を果たしたスターニンジャーでしたが、今回が本格登場となるかと思いきや、「暗躍」という言葉がピッタリな動きをしていて、こちらも「引き」としては面白い顔見せだったように思います。しかしながら、巨大戦からは異様なまでに賑やかな活躍振りで「暗躍」とは言えなくなっていましたが(笑)。

八雲の「マミー」

 今回の目玉ゲストは、八雲の「マミー」こと加藤春風。伊藤裕子さんのキャリアを感じさせる凜とした佇まいが秀逸です。八雲の年齢を考えると演者としてはかなり若いマミーですけど、逆に「最前線の現場で戦っている」が故に実年齢よりも若く見えているという見え方が出来て、それが春風のキャラクター性に巧く作用しているように思えます。

 楽しい設定としては、忍者を「古くさくてダサい」という価値観で見ている一方、「魔法ならば少しは格好良い」という視点を持っている点が上げられます。魔法も充分「古い」のですが、和風の古さよりも欧風の古さの方に魅力を感じているという事なんですね。この辺りのキャラクター付けはステレオタイプで分かり易いのですが、愛すべき「忙しい母親像」として過不足ないものであり、この母にしてこの息子=八雲ありと納得させられます。

 また、旋風も春風に対しては全く頭が上がらないといった感じで、「終わりの手裏剣」と思しきアクセサリーを返すよう進言する事自体、端から諦めているという...(笑)。いかに春風が強烈な個性を有しているかが、短時間で端的に語られるわけです。実に良いですね。

 エピローグでは、八雲のニンニンジャーとしての戦いを応援すると宣言する爽やかなものでしたが、忍者として戦っている八雲の姿が格好良く見えたという理由がまた彼女らしい処。息子には格好良くあって欲しいという願いが、八雲の人となりを形成したんだなぁ...と。

終わりの手裏剣

 世界を終わらせる程の力を持つという「終わりの手裏剣」。好天は持っていないと言い、旋風は以前家に安置されていたのを目撃して以来、見ていないと言います。

 ところが、冒頭でいきなり春風のデザインしたドレスにブローチとして使われているという凄まじい画が。「終わりの手裏剣」争奪戦が殺伐としたものになりそうな予感を漂わせていただけに、このコミカルな導入部には度肝を抜かれました。

 また、春風は忍者については完全に無関心であり、「終わりの手裏剣」の価値も危険性もまるで理解していません。このテの展開は、事情を知らない第三者をゲストに迎えるパターンでよく使われるものですが、今回は何と言っても身内ですから、それだけにインパクトも大きいものとなりました。コミカルなシチュエーションとしても際立っています。

 さらに、エピローグにて、スターニンジャーもこの「終わりの手裏剣」を狙っているという描写を挿入。あろう事か、好天を手にかけるという衝撃のシーンが登場して、これまた驚き。当然ながら、好天が易々と手にかかる事自体有り得ないのは分かっているのですが、スターニンジャーが第三勢力かも知れないという「引き」を作る事で、次回以降の展開に弾みを付けています。

手裏剣奪還作戦

 話し合いによる解決は早々に放棄されたので(笑)、春風に悟られる事なく、ドレスに付けられた「終わりの手裏剣」をダミーにすり替える作戦へと移行します。

 今回のメインとなる部分は、当作戦の遂行と、それを邪魔するイッタンモメンをどう排除するかというものですが、このオーソドックスな展開が意外にハマりました。「戦隊」のオリジンである「集団スパイもの」のテイストが横溢する中、各々が忍術を駆使して事に当たっていく「らしさ」も盛り込まれ、更には逆転に次ぐ逆転による活劇的な面白さまで盛り込んでいます。これは本当に素晴らしい。

 この中で特に素晴らしい活躍を見せるのが霞で、意外な事に八雲は活躍度で言えば二番手なんですよね。

見せ場たっぷりモモニンジャー

 霞の意外な活躍振りには驚きました。

 まず、風花と一緒に警備員の目を引くシーン。このシーンでは、二人ともドレスアップしての登場となり、ビジュアル面での満足度はすこぶる高いものとなりました。二人のキャラクターの差を衣装でも表現していて、風花はキュートながらおとなしめ、一方の霞はやや露出度高めの大人っぽいドレスとなっていました。警備員が気をとられている隙に、天晴と八雲が潜入するという段取りでしたが、天晴達を手引きする際の風花の表情が何ともコミカルで可愛らしいですね。

 そして、次々とイッタンモメンの魔法でネズミや石に変えられてしまうメンバーの中にあって、霞だけは身代わりの術を駆使して逃れていました。

 その機転と冷静な判断力もさることながら、してやったりと正体を現す際のケレン味たっぷりな登場シーンが、非常に格好良くて痺れました。春風デザインのドレスに身を包み、ステージ仕様のヘアスタイルが華麗なイメージを創出。正にクールビューティな戦隊ヒロインの体現者でした。先の風花とのコンビのシーンが割とギャルっぽさでアピールしていたので、それとのギャップがまた見事です。

 ちなみに、マイペースでクールな霞であっても、春風はやや苦手な部類に入るようで、「叔母様」という呼び方をたしなめられて苦笑する等、春風が伊賀崎一族の中でも各段に「怖い」(笑)存在である事が分かるようになっています。

八雲

 メインの八雲は、春風との照れを含んだ微妙な親子関係が見所の一つ。「マミー」と呼んでいるのを隠そうとする処等、斜に構えた普段の彼の裏に隠された、「母に頭が上がらない」キャラが垣間見える辺り、実に魅力的です。

 そして、イッタンモメンとの魔法合戦が白眉。これまで、魔法が前面に推される事はありませんでしたが、遂に自ら「魔法忍者」と名乗るまでになり、何でもありな「ニンニンジャー」のバラエティ色を豊かにする重要なキャラクターとして成立しました。

 裏の裏をかく忍者的な駆け引きと、人心(?)を操る事を可能にする魔法の合わせ技が、大逆転のきっかけを生むカタルシスは形容しがたい高揚感に満ちています。

巨大戦

 巨大戦も八雲の独壇場かと思わせておいて、何とスターニンジャーのデビュー戦にしてしまうという掟破り!

 まだスターニンジャー自体の露出が少ないのに、いきなり彼の専用オトモ忍・ロデオマルを鮮烈に登場させ、その威力を見せつけるという展開には、驚かずには居られません。バギーの疾走感はミニチュアで見事に表現されており、実在感溢れる素晴らしいカットでした。また、合体形態である「バイソンキング」も登場。そのアメリカンフロンティアな出で立ちには、「忍者」というテーマすらぶっ飛ばしてしまう、文字通り「何でもあり」な感覚。それでいて世界観を壊さない配慮が絶妙で、今シーズンの展開の迷いのなさが窺えるというものです。

イッタンモメン

 遅ればせながら今回の妖怪に言及を。

 一反木綿と言えば、「鬼太郎」の名物妖怪としてつとに有名ですが、今回は「魔法の絨毯」がモチーフといった具合に、そこからして特殊な妖怪となりました。魔法を駆使してニンニンジャーを罠にはめていくのですが、八雲の操る魔法と同一ステージでの対決が可能であるという事は、この世界の「魔法」は統一され体系化されているという事のようですね。

 また、蛾眉雷蔵の能力によってパワーを増した戦闘員・ジュッカラゲが登場するのも重要トピックの一つ。戦闘員の強化はこれまでの戦隊でも何度か描かれており、そもそも「ゴレンジャー」からして中盤より黒十字忍団と呼ばれる精鋭部隊が登場し、ゴレンジャーを苦戦させました。「ニンニンジャー」はまだ序盤ですが、このような強化策を投入してくる辺り、何だか凄いですねぇ...。

雑感

 単純に逆転を繰り返していく作戦行動が面白く、またそれがちゃんとドラマを牽引していて見応えがありました。春風は是非とも再登場して欲しいキャラクターですし、今度は旋風がタジタジになる姿を拝見したい処ですね。

 魔法のフィーチュアは、まだこなれていない感もありますが、これから忍術と巧く差別化して行くであろう事を予感させる画作りでした。小津家の人が出て来てくれたりすると否応なく盛り上がれそうですが(笑)。

 次回はいよいよスターニンジャーの本格登場という事でしょうか。賑やかなキャラクターに当初のレギュラー陣がどう振り回されるか、楽しみです。