第三十幕「操学園」

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 秋のバラエティ編が続きます。今回はようやく源太関連から脱し、ことはと流ノ介をメインに据えた「学園侵入モノ」を展開。この「学園侵入モノ」の歴史は古く、戦隊シリーズでは「バトルフィーバー」で既にプロトタイプが登場しています。このパターンはコメディになる場合が多く、「バトルフィーバー」では女子寮に潜入するというネタで、隊員の女装が登場したりと、そのコミカル振りが際立っていました。

 しかしながら、コメディの一方でミステリーの要素が入るのも定番。前述の「バトルフィーバー」でも、ある事件の犯人探しが行われました。今回も、学園に救う外道衆の影を追うというミステリー調の展開を見せており、ちゃんとフェイクを交えた犯人探しシーンが盛り込まれています。


 今回の見所は、流ノ介の妙に熱血な教育実習生振りも印象的ですが、何といっても、高校生に扮したことはでしょう。ことは役の森田さんが現役高校生であることを考慮すると、その魅力は倍増(って、何だかいやらしいな...)。とにかく可愛らしいのです。


 では、魅力満載の今回をまとめてみましたので、ご覧下さい。

 私立鷹白学院。ここに、転入生の花織ことはさんがやって来ました。

ことは

 いきなり来ました!この凶悪な可愛さをどうすればいいのでしょうか(笑)。


 そして、同時期に教育実習生の池波流ノ介先生も来て、戸塚先生の担任するクラスは一気に賑やかになる...筈でしたが。

流ノ介

 眼鏡の似合う流ノ介先生。


「ふつつか者ですが、皆さん、精一杯頑張りまっす!」


 デスクに頭をぶつける流ノ介。古典的なギャグをいきなりかましますが、本人はノリノリであり、素でボケているようです。しかし、ウケはいまいち。それもその筈、クラスの半分近くが人形のように覇気がない状態なのです。

 戸塚先生によれば、かつては学校一うるさいクラスだったが、最近急に大人しくなったらしい。


 実は、今回のことはと流ノ介の潜入捜査は、この「急に大人しくなった」ことを調査すべく行われたのでした。


 その頃、志葉家では、千明がことはと流ノ介の潜入を心配し、ソワソワしていました。その落ち着きのなさは尋常ではなく、歩き回る際に効果音が鳴る程...。

 ただ、千明が落ち着かないのは、後の展開を鑑みると、どうも自分が高校生に扮して潜入したかったからではないかと思われる節があります。千明もシンケンジャーになる直前は高校生でしたから、ことはを除けば現役に最も近い位置に居るわけです。かなり自分の高校生姿に自信があったのではないでしょうか。


 少しばかり前。

 シンケンジャーは、ナナシ連中が大挙して現れた際、戦いの中で気になる現象と遭遇していました。その現象とは、ナナシ連中との斬り合いに交じり、無表情の学生たちが突っ立って、戦いを邪魔するというもの。

シンケンブルー

 学生達はナナシ連中に遭遇しても驚きも逃げようともせず、ただシンケンジャーの邪魔をするかように、巧みにトボトボと歩きまわっているだけなのですが、おかげでナナシ連中を逃がしてしまうという結果になってしまうのでした。

 学生達の鞄に記された銘には、「私立鷹白学院」とあり、丈瑠はその鷹白学院が怪しいと睨みます。


 ことはと流ノ介を潜入させたのは、この事件を受けてのことでした。

 千明はまだ心配し続けていますが、源太は、


「ちゃんとダイゴヨウを付けといたからよ」


と千明を安心させようとします。

千明と源太

 しかし、ダイゴヨウも威勢が良過ぎる為、授業中にいきなり鞄から飛び出してくるという失態を犯します。

ダイゴヨウとことは

 ことはがダイゴヨウを必死で鞄に押し込むのですが、ことはは「うるさい」と岡村先生に叱られてしまいます。ロボットを持ち込み、バレないように隠すというシチュエーションも定番ですね。


 ことはの隣の席には、恵里という女の子が座っており、彼女に「何それ」とダイゴヨウのことを訊かれることは。

恵里

 ことはは咄嗟に、弁当箱だと言って誤魔化します。弁当箱って...(笑)。確かにダイゴヨウのトイは胴体内部が空洞になっており、そこに秘伝ディスクをしまうことが出来ますから、無理をすれば弁当も詰められます(?)。

 恵里はクラスのリアクションの薄さに言及し、


「皆、真面目になっちゃってさ...ホントどうしたんだろ」


と最近のクラスの様子に疑問を感じていました。


 一方その頃、六門船では、骨のシタリがのんびり構えている筋殻アクマロに対して皮肉を述べていました。しかし、筋殻アクマロは、既に自分の配下であるクグツカイが動いていると応え、いつの間にか六門船に居座っているクグツカイを紹介します。


 クグツカイは奇妙な手つきで何かをしています。

クグツカイ

 このクグツカイ、これまで登場したアヤカシの中でも群を抜いて気色悪いデザインです。赤い座頭市のような風貌が独特で、まさに「怪しげな職人」という感じの雰囲気が出ています。

 筋殻アクマロは、面白い策を練っていると血祭ドウコクに報告。クグツカイは、


「人間の悲しみ、一気に引き出す。お楽しみ」


と自信たっぷりに自らの作戦行動を継続しています。


 その日、ことはと流ノ介は全く手掛かりをつかめないまま、志葉家に帰って来ました。源太や茉子は、過去の事例を元に、アヤカシ捜査に関するヒントを提示。ことはと流ノ介は、かつて千明に化けたアヤカシが居たことや、服にとりついたアヤカシが居たことを思い出します。それを元に、次の日も捜索を続行することにしました。


 翌朝、二人が登校すると、クラスには更に無表情な生徒が増えていました。そこに、突如校内放送を通して音楽が流れてきます。恵里は、岡村先生が構内に音楽を流していると言い、


「なんか、好きみたいでさ。頼まれもしないのに、勝手に」


と、ことはに説明します。流ノ介はこの音楽に目を付け、


「音だ!外道衆は音で生徒を操ってるに違いない!まさかあの岡村先生が外道衆だったなんて!」


と放送室に乱入。そこには岡村先生の姿はなく、流ノ介は直ちに音楽を止めますが、実は岡村先生はドアの影に居り、既に無表情化していたのでした。流ノ介の見立ては外れてしまったわけです。

 音楽で生徒達を操るというパターンは、これまで特撮TVドラマで多くみられたパターンですから、長くシリーズを見ている視聴者程、このフェイクに引っ掛かってしまいます。これで、学園の構成人員全てが容疑者というパターンに則った行動を、流ノ介が担うことになります。


 続いて、流ノ介はトイレに潜入。生徒達の談話の聞き込みに入ります。

流ノ介

 何故かトイレットペーパーを指にはめている流ノ介。行動は珍妙ですが、やけにスタイリッシュなのが気になりますね。

 この聞き込みでは、戸塚先生の授業が眠くなるという情報を獲得。


「そうか、授業中に催眠術!まさか戸塚先生が外道衆だったとは...」


 流ノ介は直ちに戸塚先生の授業へ飛び込んで行きます。ところが、当の戸塚先生は既に無気力化してしまっていました。またも流ノ介の見当は外れてしまいました。


 一方でことはは、生徒の服にアヤカシがとり憑いていないか、丹念に調べていました。無気力化した生徒は何の反応も示さず、まだ無気力化していない生徒は、ことはの行動に驚きます。ことはは恵里の服も調べますが、当然の如く、恵里には驚かれます。ことはは慌てて制服を指し、「可愛い服」「どこで買ったのか」といった珍妙な質問を投げかけますが、恵里にあっさり制服だと返されてしまいます。

 ことはの妙な行動に動じることなく、恵里は、ことはに英語のノートを貸してくれました。嬉しそうに受け取ることは。

ことは

 これまた行動含め、可愛過ぎます...。

 恵里はことはが転校してきたばかりなので、授業について行けるよう、配慮してくれたのでした。


 そんな恵里とことはが教室に戻ると、既にクラスの全ての生徒が無気力化していました。思わず目を疑う2人。

ことはと恵里

 流ノ介は、恵里だけが無気力化していないことから、恵里が外道衆ではないかと疑います。自分とすぐに仲良くなってくれた上、親切な恵里を疑うことが出来ないことはは、絶対違うと言い張るのですが...。

 やけにヒロインに対して親切な人物が疑われるというパターンも、定番です。しかも、大体が真犯人で、ヒロインは「何故!?」と涙ながらに訴えて、それが怒りに変わるという展開が待っています。しかし今回は、それもフェイクになっています。


 その頃、ことはと流ノ介の様子が気になる丈瑠と茉子は、鷹白学院の校門の外から覗き込んでいました。そこに、千明が鷹白学院の制服を着て現れます。やはり千明はこれがやりたかったのです。

千明、丈瑠、茉子

「表立って転入するのはマズいけど、まぁ、潜り込むだけなら...ってね」


 そこに、


「そうそう」


と源太が登場!いわゆる「バンカラ」なる死語が似合う、何とも古臭いスタイルで笑いを誘います。

源太

 その扮装に唖然となる丈瑠達...。


「いやぁ、考えることは同じだねぇ」


と千明と共に潜入を試みる源太ですが、丈瑠達に必死に止められます。これまで割とクールなコメディ描写でしたが、ここで一気に源太に持って行かれてしまいました。


 さて、恵里を追って来た流ノ介とことは。しかし、当の恵里も無気力化してしまい、流ノ介と推理が外れたばかりか、ことははこの学院で唯一の友達を外道衆に奪われてしまったのです。

ダイゴヨウ、流ノ介、ことは、恵里

 ショックの眼差しで恵里を見つめる流ノ介とことは。


流ノ介「私が間違えていた。ことはが信じていた人を疑ったりして...すまなかった」

ダイゴヨウ「どうすんでぃ流ノ字。相当怒ってるでぇ」

ことは「違う。怒ってんのは自分にや。流さんが恵里ちゃんを疑った時、うちホンマにビックリした。そやけど、もしあのまま恵里ちゃんのこと追ってたら、外道衆から守れてたかも知れへん!そう思ったら...」

流ノ介「ことは...」

ことは「ごめん!恵里ちゃんごめんな!」


 ことはらしい、自分を責める姿勢が清廉な印象を与えます。流ノ介の素直さも印象的ですね。

 ことはは、感情のない恵里に向かって精一杯の謝罪の言葉を繰り返しています。そこで、ふと恵里の手首に気付くことは。手首には、白い糸が巻かれていました。

白い糸

「恵里ちゃん、さっきこんなん付けてへんかった」


 先程ことはが、恵里から英語のノートを借りた時には、白い糸等ありませんでした。ちょっとした場面に、巧く伏線を張っているあたりが秀逸です。


「もしかしたら何か分かるかも知れねぇ!気合い入れて光るぜぇ!」


 ダイゴヨウの閃光で、生徒達の腕に伸びる糸が照らし出されます。流ノ介はすぐさまシンケンマルを取り出し、その糸を斬ろうとしますが、糸には弾力性を伴う頑丈さがあり、簡単には斬れません。

流ノ介、ダイゴヨウ、ことは

「気付かれたか...仕方ない」


 糸に加えられた衝撃を感じ取ったクグツカイは、六門船を出て街へと姿を現します。


 一方、流ノ介の要請を受け、丈瑠達も学院に入って行きます。

 流ノ介とことはは美術室に入り、潜んでいたクグツカイを見つけ出します。

クグツカイ

「邪魔するな。ここの人間操って、皆で戦わせる。人と人の命を奪いあう、この世の地獄だ!」


 筋殻アクマロの目指す、人同士の殺戮の世界。骨のシタリが差し向けるアヤカシとは、明らかに目的意識が異なり、かなりの過激派です。しかも一様に卑怯な術を駆使します。


 怒る流ノ介とことはは、変身して迎撃します。

一筆奏上!

 校舎の外で丈瑠達も合流。クグツカイとの決戦が始まります。

クグツカイ VS シンケンジャー

 一気にテンションを上げてクグツカイに突進していくシンケンジャー。しかし、クグツカイは、戸塚先生や生徒達を操って攻撃を封じます。その直前、クグツカイが生徒達を一斉に操るシーンが挿入されますが、コミカルではあるものの、これはちょっとテンポを崩していて、やや頂けない。


 まずは、源太と丈瑠のコンビネーションで上から攻撃。

シンケンレッド&シンケンゴールド

 合成を駆使したアクロバティックな戦法が鮮烈です。

 しかし、クグツカイは生徒達をジャンプさせて攻撃を封じます。


 ここで「シンケンジャー」ならではの頭脳戦が登場。大抵は、ヒロインの心の叫びが通じて事態が好転するという「お涙頂戴」な展開になるところですが、「シンケンジャー」はもっとクールに事を進めます。


 ことはは一計を案じ、「穴」のモヂカラで地上に穴をあけ、そこに流ノ介が飛び込むという戦法を披露!

穴

 地中を通りつつ、スーパーシンケンブルーに変身する流ノ介。さらに、クグツカイの足元に空いた穴から飛び出して、奇襲攻撃を仕掛けます。

スーパーシンケンブルー VS クグツカイ

 かつての戦隊シリーズでは、よく穴を掘って奇襲攻撃を仕掛けるという技が登場していましたが、近年では荒唐無稽過ぎると嫌われているのか、殆ど見られなくなりました。今回の地中移動攻撃は、懐かしくも新鮮です。


 「真・水流の舞」で一の目を撃破し、二の目はシンケンオー、イカダイカイオーで迎撃です。ところが、ここで予想外の事態が。ダイゴヨウも参戦したいと言い出した為、ことはが「大」のモヂカラをダイゴヨウに与えると共に、思わず「侍合体」と言ってしまいます。いや、ダイゴヨウに対して言ってしまったのか、純粋にシンケンオーの為の「侍合体」コールだったのかはよく分かりませんが。

 とにかく、このプロセスによって、通常とは異なる合体になってしまうのです。


 まず、ダイゴヨウがシンケンオーの合体に乱入して、獅子折神が弾き飛ばされます。続いて、龍折神、熊折神、亀折神、猿折神がダイゴヨウに合体し、シンケンダイゴヨウが完成!

シンケンダイゴヨウ

ことは「何か、よう分からんもんなってもうた」

流ノ介「あれ?殿...殿ぉっ!」

丈瑠「...」

千明「もういいよ、このまま行こうぜ」

茉子「そうね。何か、新鮮な気もするし」


 それぞれの反応が非常に楽しい。そして、かつて「おでん合体」で強烈な印象を残した、丈瑠の名ゼリフが再び登場!


「お前ら...また俺余ってるだろ!」


 拍手!丈瑠の「初めてのギャグ」でしたから、この再登場には嬉しいものがあります。

 こうして、シンケンダイゴヨウとイカダイカイオーのコンビが成立しました。


 シンケンダイゴヨウは、「十手一直線」でクグツカイを粉砕!

十手一直線!

 余ってしまう「十手」部分を上手く利用した必殺技ですが、残念ながらトイでは十手を保持する事が出来ないので、この必殺技を再現出来ません...。


「これにて一件落着!」

獅子折神とシンケンダイゴヨウ

 寂しく飛び去っていく獅子折神が何とも言えない印象を与えますね。


 事件の後、学院に用が無くなった為、ことはは、また転校するという口実で去って行きます。


「折角友達になれたと思ったのに」

「恵里ちゃん...」

「忘れないで、私の事、皆のこと。約束だよ」

「うん。絶対忘れへん。ありがとう。ありがとう、皆」


 綺麗な幕引きです。恵里というキャラクターは、ことはの「最初の友達」「犯人のフェイク」「事件の手掛かり」といった、重要な要素をこれでもかと詰め込んだものになり、強い印象と爽やかさを残してくれました。こんな「学園モノ」、いいですよね。


 源太は、この別れのシーンにもらい泣き。ここで「熱い(暑い)」流ノ介が登場。


「何て素晴らしい友情だ!これぞ、青春だ!皆!あの夕陽に向かってダッシュだぁ!」


 唖然とする一同を尻目に、完全に古式ゆかしき青春ドラマの世界にハマっていく流ノ介。その意味では、源太以上にズレた感性の持ち主でした。

ことは、流ノ介、恵里

 丈瑠達もこれには呆れ顔です。


 殆どの推理が外れてしまいましたが、今回の流ノ介はギャグテイストでありながらも、なかなかカッコ良かったと思います。

 でも、やっぱりことはの可愛さが、今回の要でした。明るく振舞うシーンが多かったのも、ポイント高しです。