第6駅「探し物はなんですか」

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 新烈車・タンクレッシャーを探す。とにかく探す。そんなオーソドックスな構成のエピソード。

 筋書きは至極単純ですが、そこにトッキュウジャーの在り方を絡めてくる辺りが高度で、5人の微妙な関係性が浮き彫りになります。

 なんだかんだで、ライト&トカッチのコンビ編になっている事にも気付きます。結局、この二人が中心となって動きながらも、タンクレッシャーを「発見」するのは他の3人で、ライトとトカッチのコンビはシュバルツの陽動をしていたという状況になっています。

 併せて、シュバルツを初めて全面フィーチュアしたエピソードでもありましたね。新しいシャドー怪人を敢えて出さずにシュバルツのみで押してくる事によって、彼の強大な力を遺憾なく描写しています。

 まずは先んじて、「トッキュウジャーの在り方」という面について読み解いていこうと思います。

 今回示されたのは、「全員がリーダー」というもの。横並び教育の弊害とも形容される行き過ぎた平等主義の発露かと躊躇致しましたが(笑)、どうやら全員が等しく扱われるのではなく、それぞれがそれぞれに長けた能力があり、それを活かしてTPOでイニシアティヴをとる...といった内容でまとめられていました。要は、スーパー戦隊の基本を改めて見つめ直したというわけです。

 ライトは、自称「弁当リーダー」。食に関しては他の追随を許さない...というのは冗談として、ライトは正しく「戦隊のリーダー」として存在しています。前回でも触れましたが、現在のトレンドとして「戦隊のリーダー」=「戦隊のシンボル」であり、イマジネーションが人一倍豊かで強力なライトが、「トッキュウジャー」の代表者である事は疑いようもありません。ただし、劇中ではライトをわざと一歩引かせていると見受けられる部分(例えばカグラの方が瞬発的なイマジネーションは強い...等)もあり、戦隊のレッドならではのオールマイティな人物としての造形を感じ取る事が出来ます。これは、「サイボーグ009」の島村ジョー辺りが有する「バランス型」のイメージと重なる処があります。

 トカッチは「サポートリーダー」。「サポート」と付いている時点で「リーダー」かどうかは怪しいわけですが、今回のように、絶妙のアシストで戦況打破のきっかけをライトに与えるといった部分において、間違いなく置かれた状況の先手を指しており、その意味では場面のイニシアティヴをとり得る人物と言えるでしょう。トカッチは「リーダー」という言葉について終始考えを巡らせている処からして、恐らく周囲の目線をかなり気にする人なのでしょう。故に、今回のようにライトの微妙な表情を読み取ったり、戦況を的確に把握出来たりするわけです。人間観察力に長けているという事が、場面に応じた的確なサポートを可能にする事に繋がるのは、実感として納得出来るものですね。

 ミオはライトとトカッチに「世話焼きリーダー」と称されます。ミオについては前々回も指摘したように、まだキッチリとキャラクターが固まっていない印象があり、「世話焼き」と言われてもまだピンと来ない向きが多いだろうと思います。ここでは体力系の印象で押して来ない事に少なからず驚きました。これから先、良い意味での「世話焼き」の面が描写されてくる事を期待します。現在の処、「気が強く口うるさい人」という意味合いが勝っていますよね。ちなみに、前作「キョウリュウジャー」のキョウリュウピンク=アミィ結月が、一応「世話焼き」系でした。

 ヒカリは「影のリーダー」。要は参謀という役回りです。トカッチは、周囲の表情や状況を見渡してその場の雰囲気を判断するタイプですが、ヒカリは「どう動けばどういう結果になるか」という事をロジカルに考え出して自ら動いたり進言するタイプであり、正に参謀格なのです。こういった参謀格は戦隊シリーズの伝統で、「ゴレンジャー」のアオレンジャー=新命明を筆頭に、「バトルフィーバー」の二代目バトルコサック=神誠、「ゴーグルファイブ」のゴーグルブラック=黒田官平、「チェンジマン」のチェンジマーメイド=渚さやか、「フラッシュマン」のイエローフラッシュ=サラ、といった具合にタイプを変化させつつ続いて行きます。ヒカリの場合は、普段あまりメンバーと戯れないという点で、新命明や神誠の雰囲気を色濃く受け継いでいると思います。

 カグラは「なりきりリーダー」。イマジネーションの瞬発力がメンバーの中で最も強いカグラは、そう称されて当然と言えるでしょう。既に暴走気味の威力を見せつけている事もあって、状況如何によっては戦況自体をガラッと変えてしまえる程のパワーを有している事が分かり、この称号は非常に納得出来ます。なお、一見可憐なヒロインだが、最も潜在能力が高いという設定を持った最初の人物は、「ダイレンジャー」のホウオウレンジャー=天風星リンで、この発展系が「カクレンジャー」の実質的リーダーであるニンジャホワイト=鶴姫となっています。

 こうして与えられた5人の個性を見渡すと、全く横並びでない事が分かります(笑)。後は、いかにこの設定を膨らませていくか、そしてこの凹凸振りが巧く機能している中、登場が予想される追加戦士がどう絡んでくるか、その辺りが楽しみになってきますね。

 ちなみに、「全員がリーダー」というテーマは、トッキュウジャーの戦闘スタイルである「乗り換え」を巧く換言しているとも取れます。臨機応変にリーダーとなって前面を担うという精神は、代替可能であって代替不可能であるという絶妙な「乗り換え」のテーゼをビジュアルではない面から捉えたものとして印象に残ります。

 さて、一方で全面フィーチュアされたシュバルツですが、こちらは「悪の美学」という、最近では少々忘れ去られ気味な要素をバッチリ体現してくれました。

 いわゆる「姫」に慕われ、それを意に関することもなく、自ら最前線に赴きつつヒーローを圧倒し、専用のロボットまで所有する、しかも声質含め出で立ちが非常に格好良い...。ここまで優遇された近来稀な敵役が、シュバルツなのです。

 これに匹敵する優遇っぷりは、かつてのシリーズを見渡しても存在しないのではないでしょうか。肌触りという点では、「ダイナマン」のダークナイト、「バイオマン」のシルバといった、「キカイダー」におけるハカイダーをオリジンとするアンチヒーローが近似していますが、恐らく真の意味で問答無用の格好良さを有した初の幹部は、「フラッシュマン」に登場したサー・カウラーではないでしょうか。

 現在は声優の重鎮として活躍されている中田譲治さんが演じた、スタイリッシュかつクールなカウラーは、黒ずくめの出で立ちも含めてシュバルツに匹敵する格好良さでした。クライマックスの筋書きに欠かせない人物として登場し、「フラッシュマン」が必要とするストーリー上の「仕掛け」の殆どを彼が掌握している程の優遇振りに加え、自らの宇宙船も所有し幹部級の部下も居るという、殆ど「第三勢力」の扱いとなっていました。彼には確かに「美学」がありました(ちなみに「美学」を強く意識した初の悪幹部は「デンジマン」のヘドラー将軍でしょう。異論は認めません・笑)。

 シュバルツの美学は、他の幹部と群れない、グリッタ嬢とは一線を引いている、薔薇をシンボリックに用いる、情報戦から入る、卑怯な手段を堂々と駆使する、戦力の出し惜しみをしない...といった具合に様々なシーンで見られます。下手をするとトッキュウジャーよりもヒロイックに見える場面があり、いかにこのシュバルツという人物の造形に力が入れられているかが窺えます。

 また、クライナーの派生車両を建造したりといった発想ではなく、烈車を強奪して自らの編成に加えようという魂胆が素晴らしい。正に「悪の美学」と言えるでしょう。コレクター的な趣味も垣間見える辺り貴族的で、シャドーラインの持つ貴族的な設定を体現する要素の一つとなっています。

 クライマックスは、シュバルツのクライナーと、ヒカリが前回のライトの行動から推理して(筍を採ってきた→竹林で目撃した)見事に発見したタンクレッシャーをフィーチュアした烈車バトル。タンクレッシャーの補給が全自動ではなく、手動の要素が多く含まれる事で生まれるスリルや、補給の達成によってパワーが増大するカタルシス。この辺りの一連のシーンが見事なミニチュアワークとCGワークによって表現されていました。システマティックな部分はミニチュアで、ダイナミックに飛び交うシーンではCGを...といった具合に適材適所な選択はいつもながら素晴らしく、スピーディかつパワフルなバトルシーンを創出していました。

 ロボ戦では、シュバルツのクライナーの強大な戦闘力を描写。そして、タンクレッシャーを交えた新フォーメーション・トッキュウオータンクによる鮮烈な逆転劇。トッキュウオータンクは、ボクシングスタイルを取り入れた面白い趣向で、楽しいバトルシーンを見せてくれました。

 さて、次週は「仮面ライダー鎧武」との合体スペシャル。私個人は「鎧武」に関しては早々にリタイアしてしまったので、あまりときめかないのですが、戦隊とライダーのコラボは「シンケンジャー」と「ディケイド」以来ですからね~。どういう料理が為されるかという点で楽しみです。