第5駅「消えた線路の向こうがわ」

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 ライトの特殊性と、その中で一際輝くヒーロー精神を遺憾なく描写した一編。

 イマジネーション一辺倒にならず、それをストーリーを進めていく上でのギミックとして使用する辺り、早くも「変化球的」なものが見え始めています。また、新烈車の登場に加えて、烈車の探求という新要素を登場させ、後に続く展開への布石を打ってみせる段取りの良さも。ガジェット収集は、トイの展開と連動するという点でコンテンツの持つ「商売っ気」を体現する部分ですが、それを感じさせない料理の巧さを見せてくれると、俄然コンテンツ自体が輝くというものでもあります。

 とりあえず、今回はライト編という事で、念入りにスポットが当てられているので、その辺りを中心に。

 戦隊シリーズの歴史も長く、数多の「レッド」がそれぞれ個性を発揮してきました。多様化した嗜好の中で、ドラスティックな変化を求められる昨今は、いわゆる「レッド」も単なるリーダーではなく、様々に刺激的な個性を与えられています。

 「ジュウレンジャー」のティラノレンジャー・ゲキまでは、「ジャッカー」で提示されて「デンジマン」で完成した、いかにも「レッド」的な類い稀なる正義感を持ったリーダーが大半を占めていました。ちなみに「ゴレンジャー」のアカレンジャー・海城剛は、良い意味での不良っぽさがあり、後続のレッドとはやや趣が異なります(「バトルフィーバー」のバトルジャパン・伝正夫は、この路線をよりソフィスティケイトした感じ)。

 その後、「バイオマン」のレッドワン・郷史朗を「超絶完成形」とした後、「マスクマン」で、レッドマスク・タケルに恋愛事情として付加された人間臭さは、「ライブマン」のレッドファルコン・天宮勇介において「落ちこぼれ」属性として昇華されるという意外な方向性を見せたにも関わらず、その「ライブマン」の後半では典型的なレッドに引き戻されて行きます。

 「ジェットマン」のレッドホーク・天堂竜は変化球的作風の中にあって、わざと典型的な戦隊ヒーローの役割を負わされており、直後、大幅な改革が行われた「ジュウレンジャー」でも、やはりティラノレンジャー・ゲキは追加戦士との愛憎劇がありつつも典型的なレッドでした。

 変化が訪れたのは「ダイレンジャー」や「カクレンジャー」といった、ファンタジー戦隊の黄金期。ここでの二人のレッド(リュウレンジャー・天火星亮とニンジャレッド・サスケ)はリーダーというよりドラマの「アイコン」であり、作風に著しく沿ったキャラクター性を持たされていました。以降のシリーズではこの方針をほぼ踏襲していて、典型的なレッドが登場する作品は、その戦隊の作風が典型を要請していたからであると言える程、方針が徹底されているように思います。

 今シーズンのライトも、やはり典型レッドからは大幅に外れた人物ですが、作風を象徴する存在としてのレッドとなっています。今回は特にそれを顕在化するかのように構成されており、ライトという人物を知る為に重要なエピソードです。

 まず、ライトのライトらしい特徴として描かれたのは、とにかく食に対する姿勢の激しさ。

 前回、パスを使った余暇で真っ先に向かったのは焼き肉。今回も弁当に対する執着は凄まじいものでした。しかしながら、面白いのはこの食への執着がマイナスイメージ(弱点)ではなく、むしろポジティヴな欲求として作用させている事で、ありがちな「空腹=動けない」というシチュエーションは登場していません。空腹でもイマジネーションが健在(というより暴走気味)である事を冒頭で示した後、屈託なく他人の食料に手を付けるというヒーローらしからぬ行動を見せつつも、お詫びも含めて山から食料を調達してくるサバイバリストな面を見せてくれます。

 中でも、サバイバリストな面は食への執着が良いベクトルへと導かれた好例として描写されており、ライトの生活ポテンシャルの高さを伺わせます。

 毎度毎度、シャドーラインに闇駅とされたエリアに関する描写は重苦しく、今回も飢餓がメインとなっている為に、その苦悶の描写も奮っていたのですが、このキャンプの一団との交流では、食品を巡る醜態をキッチリ見せて「嫌な雰囲気」を隠さず見せておき、後のライトとの和解で爽やかな雰囲気にガラッと転換させる構成の巧さが光っていました。

 続いて、ライトらしさを感じさせる要素として登場したのが、底意地の悪さ。

 戦隊シリーズのレッドに聖人君子はおよそ存在しませんが、このライト程底意地の悪いレッドはいなかったと思います(笑)。今回見せたそれは、「食べ物の恨み」と換言され、ライトの食への執着と関連づける事によって感覚を軽妙化されましたが、実際の画面からはそんな軽妙なものではない事が伝わってきたと思います。

 ちょっと残念なのは、バケツシャドーが「食べ物を欲しがっている」というよりは、「食べ物をなくして人々を苦しめる」という方向に活かされていた為、ライトの行動(川魚を見せびらかす「拷問」)が少々浮いてしまった事。もしもここがガッチリと繋がっていたら、ライトの外道っぷりがより際だったの思われるので、まぁガッチリしてなくて良かったのかも知れませんが(笑)。

 にしても、かなり非道な敵とはいえ、わざわざ変身解除して目の前で魚を食べて見せるという行為は、完全に底意地の悪い「子供」の所行であり、ライトが「大人」でないが故にイマジネーションがすこぶる強いのではないか...と納得させる事となりました。メインの視聴者である子供にとっては、自分達にすごく近い、親近感のあるレッドとして映るのではないでしょうか。かつて「ゲキレンジャー」で同様の試みが行われてちょっと外してしまいましたが、ライトにはその「子供」の面を制する「大人」の面も意外と散見される(今回で言えば、キャンプの一団に逆ギレしない...等)ので、バランス感覚の優れたキャラクターとして成立しています。

 今回の他のトピックとしては、カーキャリアレッシャーの登場、新烈車の存在、シュバルツの本格的な行動開始への嚆矢といったものが挙げられます。

 カーキャリアレッシャーは、いかにもおもちゃ然とした車が搭載されており、しかもこれが「実車」としてあまり意味を成さない存在になっている徹底振り。つまり、鉄道関係以外の車両に関しては、意図的に描写をフラットにして印象を弱めているわけですね。イマジネーションによってしか動かないという設定も、普段の足としては使わせない配慮になっているように思います。

 ちなみに、線路が途切れてしまった事で登場となったこの烈車ですが、後の巨大戦では、カーキャリアレッシャー自体が線路を作ってレッシャーを現地に移動させており、少々整合性を欠いています。まぁ、カーキャリアレッシャーが線路を作るのに時間がかかってしまうので、先に車で行かせたという解釈も成立しますが。

 新烈車、そしてシュバルツの情報収集に関しては、次回への引きとなっていて、良いですね。各地に烈車が散らばっているという設定は、「ド定番」の範疇ではありますけど、相変わらずワクワクするような設定です。

 さて最後に、バケツシャドーの行った「腹ペコ作戦」について。このテの飢餓状態が描かれるエピソードは黎明期に集中していて、「バトルフィーバー」、「デンジマン」、「サンバルカン」、「ゴーグルファイブ」...と立て続けにあります。中でも「サンバルカン」に登場する怪人はハラペコモンガーとそのまま!

 今回の「腹ペコ作戦」は正に正当派でしたが、上記の作品に比べると、シチュエーションとしては深刻度が低く、描写の深刻度は高いという興味深い内容でした。「闇駅」の精神的な被害を感じさせる格好のサンプルでしたね。

 次回は、シュバルツをフィーチュアしてバトル路線へ突入か!?