GP-26「恋愛カンケイ」

 アレルンブラ家について、ボンパーの講義を受けるゴーオンジャー。ウズマキホーテの主であるニゴールは、さらに強力な戦闘能力を備えていると推測されるのだが、ニゴール探索を大翔と美羽が担っていたことで、ゴーオンジャーの面々は既に興味を昼食に向けるという体たらく。そんな中、ベアールVは「トラやん」の身を案じていた。早輝がその呟きに気付くとベアールVは顔を真っ赤にして恥ずかしがる。

 大翔と美羽がニゴール探索を継続中の折、ケガレシアは偶然にも仮死状態となったニゴールの塊を発見する。ケガレシアはニゴール復活を良しとせず、発見を隠そうとするが、結局ニゴールはキタネイダスによって半ば無理やり復活させられてしまった。復活したニゴールは近づいたキタネイダスを「臭い」と称して嫌がり、ケガレシアにすぐさま近づいて行く。ケガレシアを清らかで美しいと「侮辱する」ニゴールであったが、彼にとっては褒め言葉のつもりであるようだ。ケガレシア曰く、ニゴールは美しいものを好む「変態」だという。

 そこへ大翔と美羽が辿り着いた。美しく輝くゴーオンウイングスに「美しくお相手しましょう」とビューティウガッツを差し向けるニゴール。大翔と美羽はその意外な実力に苦戦を強いられる。そこに走輔達も合流。「王子らしくない」と評する早輝に腹を立てたニゴールは、ニゴールレイピアを手にゴーオンジャーへ猛攻を加える。そして、倒れこんだ走輔にとどめを刺そうとニゴールレイピアを突きつけた。美羽は走輔の危機を見るや否や、まとわり付くビューティウガッツを跳ね飛ばすと、ニゴールに強力パンチを決めた。ウズマキホーテを破った連中だと聞かされ驚くニゴールは、ケガレシアに「共に美しく闘いましょう」と申し出る。ケガレシアは露骨に嫌がるが、勢いづくゴーオンジャー達を前に、仕方なくニゴールとの「害水合身」を果たしミックス・ケガレゴールとなって巨大化した。

 ゴーオンジャーとゴーオンウイングスはエンジンオー G9で一気に勝負を付けようとするが、G9グランプリを炸裂させても致命傷に値するダメージを与えられない。怒ったケガレシアは雷雲を呼び出す力をニゴールと共に行使し、エンジンオーG9の動きを封じてしまった。好機と見たミックス・ケガレゴールはニゴールレイピアでエンジンオーG9を斬り付け、左肩のジェットラスを斬り飛ばしてしまった。ベアールVは咄嗟に合体を解除、ジェットラスの元へ駆け寄り、必死に救出を試みる。ニゴールはその姿を見て美しいと呟き、ケガレシアとの合身を解除してしまう。危機は逃れたものの、スピードル達の炎神キャストはボロボロになってしまった。

 ベアールVに先程の行動の真意を尋ねた早輝は、ベアールVの言動からジェットラスへの恋を直感する。早輝はすぐに気持ちを伝えようと言い、美羽とジェットラスの元へ急いだ。

 ベアールVはジェットラスに「あんたの牙から逃げられなくなってしもた」と告白し、タイガースの試合を見に行こうと誘う。だが、それを断ったのは美羽だった。「ジェットラスは大切なバディ」だと言う美羽は、早輝の言う切ない恋心は戦いの邪魔だと言い切る。だが、早輝の「好きな人のことを思えば、もっとパワー出る出る」という言葉に、思わず走輔の姿を思い浮かべてしまう美羽。それを振り払うかのように、美羽は「お子ちゃまには付き合ってられないわ!」とキレてみせる。言い争いを始めた二人の目に、突如花束が飛び込んできた。自分達への唐突な告白に、戸惑いつつも嬉しさを隠せない早輝と美羽だったが、その花束の主はニゴールで、しかも告白の相手はベアールVだったのだ。ニゴールはベアールVの虜になってしまったのである。ベアールVは早輝の思惑に反してニゴールの元へ飛び込んで行ってしまう。

 その頃、美羽を心配して走輔達の元へ探しに来た大翔は、走輔達のニゴール対策を思わず鼻で笑ってしまう。走輔達はニゴールの雷雨に対抗すべく、大量の照る照る坊主を作っていたのだ。

 美羽は、ベアールVの行動を理解できない早輝に、「あれは作戦よ」と告げる。ベアールVは他の人に惹かれた振りをして、ジェットラスの気を惹くつもりだったのだ。「ベアールは美羽と違って、そんなずるい大人じゃないもん」と毒づく早輝に、美羽は「炎神の気持ちも分からないで、相棒って言えるの?」と返す。ケガレシアに見つかればただでは済まないと予感する美羽の言葉に、早輝はハッとして美羽に助力を求めた。だが、美羽は釈然としないまま振り切り、去ってしまう。

 ジェットラスは、そんな美羽と早輝の様子を見て「あの頃を思い出した」と告げる。ジェットラスが美羽をパートナーに選んだ時のことだ。美羽は、本当に自分を必要としてくれる者の為になら、戦士になれる。ジェットラスは美羽のそんな性格を最もよく理解していたのだ。美羽はやって来た大翔にジャケットを預け、早輝の元へと急ぐ。

 一方で、ベアールVを花嫁とするニゴールの計画は着々と進行していた。ケガレシアは隙を見て炎神キャスト破壊を目論むが、ニゴールはそれを阻止。「炎神と結婚する」「美しいものを愛でる」などという心理が理解できないケガレシアは、腹を立ててその場を後にした。気を取り直して準備を進めるニゴールだったが、そこに、突如巨大なベアールVが登場。美羽の機転により、ベアールVの炎神キャストにジェットラスの炎神ソウルがセットされたのだ。美羽の思惑通りニゴールが姿を現す。ベアールVになり切るジェットラスの演技にすっかり騙されたニゴールは、手にした炎神ソウルを投げ捨て、待ち構えていた早輝がそれをキャッチ。ベアールVは無事救出された。

 騙されたことを知って怒るニゴールに、早輝と美羽は変身して対峙。そこに、照る照る坊主を手にした走輔達が合流するが、当然の如くビューティウガッツに対して効果があるはずもない。大翔が合流して態勢を立て直している間、早輝と美羽は素晴らしいコンビネーションによってニゴールを追い詰めていく。「人間と炎神の友情が、私たちにしかない力を生みだしたの!」と言い放つ二人に、感動して隙を見せるニゴール。そんなニゴールを、ゴーオンジャーとゴーオンウイングスの必殺技がとらえた。

 美羽は早輝に「私の戦う理由、思い出させてくれた」と感謝の言葉を口にする。早輝も「大人の恋の駆け引き、教えてくれたじゃない」と美羽に感謝した。

 ケガレシアは敗れたニゴールにビックリウムを見せたが、そのまま与えることなく踏みつけて破壊する。「お前は眠っているべきだったでおじゃる。ガイアークに、美しさなど不要」ケガレシアは冷たく言い放って去って行った。ニゴールはそのまま爆発四散してしまった。

 その後、ベアールVとジェットラスを改めて逢わせる早輝と美羽。ところが、ベアールVは「やっぱ、告白なかったことにしてくれへん?」と言い出す。どうやらジェットラスがベアールVの炎神キャストに入った際、その演技が「きもかった」らしく、恋も冷めてしまったらしい...?

今回のアイキャッチ・レースのGRAND PRIX

 ベアールV!

監督・脚本
監督
諸田敏
脚本
會川昇
解説

 待望のダブルヒロイン編。紅一点体制に新ヒロイン追加という異例の展開となった「ゴーオンジャー」ならではの一編であり、シリーズ中盤でようやく合流した早輝と美羽ならではの心理描写が見られる名編に仕上がっている。本編でまず印象に残るのは、會川氏の手による脚本が、キャラクターの設定を充分生かしきる方向性で練られている点だ。今回は主にそれらをとりあげることで本エピソードの分析としてみたい。

 まず、ベアールVのジェットラスに対する微妙な恋心に注目してみる。ゴーオンジャーとゴーオンウイングスを合わせると女性は2人存在するのだが、ふと振り返ってみれば、炎神における明確な「女性」たる存在はベアールV唯一人である(トリプターは声の担当こそ女性である石川静氏だが、性別設定は男)。そのベアールVが、並み居る炎神の中から恋の相手を見つけるというシチュエーションには何ら違和感がない。むしろ炎神同士の恋話が繰り広げられることで、彼らの生命体としての描写にリアリティが伴ったとも言えるだろう。また、ベアールVが関西弁で喋るという点を巧く採り上げ、黄色+関西の図式から阪神タイガースを連想、それをジェットラスという虎モチーフの炎神へと繋げているのが愉快。「最初はカッコつけたいけ好かんヤツや思うてたんやけど」というセリフも、お年頃の微妙な心理を遺憾なく描き出しており、続いて飛び出す「あんたの牙から逃げられなくなってしもた」という、白眉中の白眉のセリフで止めを刺される。ジェットラスの「私の牙からは逃れられない」という決め台詞を実に巧みに流用した告白文句であり、このセリフだけでも本エピソードを傑作として評価したい気分にさせられたことを白状しておきたい。

 前後するが、エンジンオーG9の割と単純な合体構造を逆手にとった、左肩から斬り飛ばされるというジェットラスの危機シーンも良い(実はエンジンオーG9の顔はジェットラスのウイングである為、矛盾が生じてはいるが)。その上で、エンジンオーG9 の中心に位置しているベアールVが離脱することで、全ての合体が解除されてしまうという流れも実に理に適っており、それがそのまま他の炎神キャストに重大なダメージを与えてしまうという帰結点をもたらす。それは以降の話の流れで早輝と美羽、そしてベアールVとジェットラス以外の炎神が自由に動けないという制約を作り(ただし、途中から照る照る坊主作りに精を出しているが...)、ダブルヒロイン活躍の舞台を確固たるものに仕上げている。物語前半における「仕掛け」の周到さには思わず舌を巻く。

 そしてベアールVはジェットラスの気を惹くべく、ニゴールに近付いていくのだが、この短絡的とも言える行動については、これまでのベアールVの行動パターンを見れば納得がいく。アクロバティックな戦法で敵に飛び掛って噛み付く従来の姿や、今回の、何はさておきジェットラス救出という姿勢からは、巧妙な駆け引きを不得意とする性格が伝わってくる。早輝からすれば「大人の駆け引き」に見えたのかも知れないが、ニゴールに付いて行くという行動はベアールVの不器用な一面をよく表したものだろう。

 対するジェットラスは、エピローグから感じ取れるように、実はまんざらでもなかった様子。逆に、美羽に対して「バディ」としての強い絆以外、特別な感情を抱いていなかったことも判明する。巧いのは、クールなジェットラスがドギマギする様子を描くことなく、ことごとく美羽が会話を遮ってしまう点で、これにより「偽ベアールV」の印象が殊更強調されることになる。勿論、恋に不器用などといった語り口でジェットラスのキャラクター崩しを行うことも出来たわけだが、ジェットラスのキャラクターイメージには、当初スパイ映画の主人公像が意図されていたと思しいので、今回のような措置は大いに的を射ていると言えよう。

 ベアールVの炎神キャストにジェットラスの炎神ソウルをセットするという発想も、設定を最大限に生かした上でギャグ化させているという点で秀逸だ。以前、範人が各炎神キャストと炎神ソウルをバラバラにセットしたことがあったが(GP-14「毎日ドキドキ」。脚本は同じく會川氏)、その「経験」が生かされている。「偽ベアールV」が登場した際は、ジェットラス担当の古島清孝氏の「怪演」により、単純に回転数の下がった音声のベアールVといった印象で、すぐには状況を飲み込めなかったが、思わず「ギーン」と言ってしまったところで状況を把握。もしかすると、あくまで想像だが、これは古島氏の見事な女形に直面し、分かり難いという理由で現場にて処理されたのかも知れない。逆に言えばそれほど堂に入っており、クールなジェットラスのキャラクター崩しに大いに役に立ったと言えよう。

 結局、ジェットラスのこの「女形」を見てベアールVは恋心を萎えさせてしまったが、エンディングにてスピードルが今後の展開を匂わせるナレーションを残しており、ダブルヒロインの炎神ということもあって、これからのベアールVとジェットラスには注目しておいて良いものと思われる。

 さて、早輝と美羽に関しては、その年齢差を多分に意識した言動が用意されている。早輝は言葉の端々で美羽を大人視している様子が感じられ、逆に美羽は早輝を子供扱いしていることが分かる。といってもキャストの実年齢ベースで2歳程度しか離れていないのだが、高校生相当と大学生或いは社会人相当ということでの埋めがたいギャップは、当該年齢の実感として厳然と存在している為、皮膚感覚的にリアルだ。ある程度年齢がいってしまうと、19歳の美羽を捕まえて「おばさん」呼ばわりする早輝を理解できなくなってしまうが、ふと自分が高校生に相当する年齢だった頃を振り返れば、19歳とは随分大人に見えたものだ。

 ただ、これまでの早輝に関して言えば殊更「少女」であることを強調していたわけではなく、少女的な外界への憧れこそ描写があるものの、実際は「強いお姉さん」という正統派若年ヒロインのイメージで立ち回っていたように思う。その早輝が明らかに少女キャラクターにシフトしてしまったわけだが、それはメンバーの追加による影響と見ていいだろう。スーパー戦隊シリーズにおけるメンバー交代やメンバー追加は、役割のシフトをもたらすことがままある。古い話で言えば、交代戦士が2人も発生することになった「バトルフィーバーJ」においては、少年的な純朴さと怒りっぽさが印象的だった白石謙作が、神誠に交代したことで、バトルコサックが明確なサブリーダー(参謀格)に昇格。それまでサブリーダー格の雰囲気を有していたバトルフランス=志田京介は、そのコミカルな持ち味が拡大されて別種の存在感を放つことになる。他にも、初めて本格的な追加戦士が登場した「恐竜戦隊ジュウレンジャー」では、その追加戦士であるドラゴンレンジャー=ブライ(リーダーであるゲキの兄)の登場により、マンモスレンジャー=ゴウシは実質的に「リーダーより年上」というキャラクター性を明け渡し、サブリーダーとして他のメンバーをまとめていくという役割にシフトしている。早輝の場合は、ストーリー的に美羽不在の折には正統派ヒロインとして立ち振る舞うが、美羽との共演の際には少女的キャラクターにシフトするというダブルスタンダードを見せており、明確なキャラクターシフトとは言えない。むしろ美羽を姉的な存在として見ている風に描写することで、爽やかな人間関係を作り出しているようだ。仲良く談笑したかと思えばすぐに喧嘩したりというシーンに、それは現れている。

 美羽に関する特筆事項は、「戦う意味を思い出させてくれた」という、コミカルな味に隠れた意外な精神性に関するドラマと、走輔が気になっているという描写だろう。前者はジェットラスのパートナーとなった頃のことを思い出すことで、最近描写されなくなってきた元来の「放っておけない性格」を再認識させるという展開が巧い。ここでも設定が生きている。後者は少しずつ描写されてきた走輔への興味が、別種の感情へと転化していくことを決定付けた描写だ。メンバー同士の恋愛模様は既にあまり珍しいものではないが、およそ恋愛関係が生まれそうにないゴーオンジャーの中にあって、ゴーオンウイングスという別の存在が関与し、このような事態を生んだことは興味深い。ところで、少々理解し難い美羽の心理の変化であるが、ゴーオンウイングスとしてのプライドは、ゴーオンジャーを手放しで認めることを妨げており、早輝に対してもそれは同様であることや、戦うということに固執(誇りと換言できる)している美羽に、ある意味奔放な早輝が関与することで、その凝固した考え方が溶解していくのを見れば、なかなか秀逸な心理描写であることが分かる。その影響は大翔にも確実に波及しており、ラストでのベアールVから逃げるコミカルで可愛らしい行動は必見だ。

 ガイアーク側は、全編に渡ってコミカル。ただしラストはまたもやガイアークの奥の深さを感じさせるシーンを登場させている。

 コメディの中心は勿論ニゴールだ。前回のウズマキホーテが割と真面目なキャラクターだったことを思い起こすと、ウズマキホーテが不憫になるほど気まぐれで奔放なキャラクターである。ニゴールレイピアによる立ち回りはスローモーションを多用するなど、その強力さが遺憾なく描写されているが、貴族風の言い回しと名家の坊ちゃま風の行動により、蛮機獣の代わりとして復活させたつもりの大臣達は、基本的に周囲でウロウロするしかないのが可笑しい。特にケガレシアはニゴールが「変態」であると認識している為、ニゴールとの協力を一度は拒んだり(この拒否の仕方が可愛らしい)、ベアールVの炎神ソウルを特性ピコピコハンマーで壊そうとしたりと、行動が実にコミカルだ。ミックス・ケガレゴールが強制解除された際に、何故か透明な壁にぶつかってルージュ跡を残していくなど、秀逸なギャグ描写も見られ、制作側のケガレシアに対する思い入れが感じられる。

 そのケガレシアは、以前範人によって「清らかで美しい」と評されており(前述のGP-14「毎日ドキドキ」)、今回のニゴールの言もそれを踏襲している。いわばこれで二度侮辱されたことになり(マシンワールドでの出来事を含めればそれ以上の回数)、心中穏やかでないケガレシアはことごとくギャグ描写を含む行動によってニゴールを避けてきたが、最後の最後でニゴールに凄まじい仕打ちを施す。それがラストの「ビックリウムを踏みつけて壊す」シーンである。本エピソードと関連が深いGP-14 「毎日ドキドキ」では、ラストシーンで湖面を鞭打つケガレシアの、背筋を凍らせるような印象深いカットが披露されたが、今回もそれに通じるものがある。普段のケガレシアは何となくニコニコしている印象があり、ニゴールの大爆発を背に硬い表情で去っていくケガレシアには戦慄を覚えざるを得ない。正に、ガイアークの奥の深さはケガレシアにあり、だ。

 最後に一つ、見逃せないポイントを。前回、水着姿がなくファンをがっかりさせた(?)早輝と美羽だったが、今回ニゴールの降らせた雨によりずぶ濡れになったことで、ジャケットを殆ど着ない状態でストーリーが進行する。このアンダーウェア姿が実にフェティッシュで、一種のファンサービスとして認識できよう。白と黒のコントラストも印象的で、ダブルヒロイン編を大いに彩った。