Space.23「俺様の盾になれ」

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 ジャークマター側も戦力を強化する中、徐々にツルギの正体が明らかになっていく一編。

 とはいえ、まだまだ謎は残ったまま終了するのですが、ツルギが単に大言壮語に終始するだけの人物というわけではないということは、既に明白です。ギャグとシリアスを矢継ぎ早に繰り出して、ラッキーとツルギの対立(というよりラッキーが一方的に反感を抱いているようにも見える)を描く様は見応え充分でした。

メディアツヨインダベー

 いわゆる「業界人」をカリカチュアライズしたダイカーン。○○ツヨインダベーシリーズなので、基本的には「使い捨て」臭が芬々ですが、「業界人ギャグ」が適度で面白く、なかなかの存在感を発揮していました。「放送」を担当することで、状況説明を兼ねているあたりも良い感じです。

 メディアツヨインダベーは「ジャークマター放送局」のプロデューサーとして登場しましたが、この放送局がジャークマター謹製なのか、はたまたチキュウ人が作った放送局を乗っ取って成立したものなのかは、定かではありません。ただ、チキュウ人と思われる人々が多数スタッフとして働いている様子が描かれているので、いずれにせよ労働資源としてチキュウ人を半ば強制的に働かせているものと思われます。そのあたりで「圧政」を描いているところは、ぬかりなしですね。

 巨大戦にもちゃっかり(?)参加して、三大ロボ揃い踏み戦を彩っていました。モライマーズやメタルデスワームに劣らない活躍振りが意外で、楽しいシーンとなっていましたね。

テッチュウ

 ドン・アルマゲ直下の大幹部として、三人のフクショーグンが紹介され、まずはこのテッチュウがツルギの前に出現します。

 フクショーグンを名乗るだけあって、その戦力は半端ではなく、無敵とも思えるツルギと甲乙付けがたい戦いを繰り広げました。

 声の担当は土田大さん。戦隊ファンならば、お名前を拝見しただけで「カクレンジャー」のニンジャブルー=サイゾウだとすぐに分かることでしょう。土田さんは既にベテラン声優としての地位を確立しており、戦隊シリーズでも数年に一度のペースでゲスト怪人の声を担当。今回は満を持して幹部クラスの担当となりました。他のフクショーグンも驚き(かつ妥当)なキャスティングがされているようなので、楽しみです。

 さて、テッチュウのお目当てはツルギなので、あまりラッキーたちには干渉しないのが面白いところ。メタルデスワームを繰り出して早々に退却するといった、大幹部らしい振る舞いも特徴的で、「強いヤツが現れた」と納得させられる演出が良いですね。

 一方、ツルギは以前にもこのテッチュウと戦ったことがあるようで、その旨の発言をしていますが、テッチュウ自身には覚えがないらしく、「鳳ツルギというのはお前か」などといった発言をしています。この齟齬は恐らく「仕掛け」の一部であると思われ、ツルギがかつて戦ったという事実は、何らかの理由で現在のジャークマターの記録(記憶)からも抹消されているのではないか...という疑問を喚起します。チキュウにおいてツルギの記録がほとんど残っていないということや、倒したはずのドン・アルマゲがまだ生きているという事実、その他諸々の現状を考え合わせることは、ツルギの「事実」は一体どうなっているのかという、非常に大きな謎に挑むことになります。

エリス

 そのツルギの「事実」を証する者として、かつてオライオンと呼ばれる救世主にキュータマを託されたエリスが再登場。有機的にゲストキャラクターを絡めてくる構成が見事であり、アルゴ船復活の鍵たるキュータマの守護者、そしてかつての救世主オライオンの知己という二つの要素が、ツルギの謎への道標となっているあたりが実に巧いところです。

 伝説の時代を生き、それを語りうる人物であるということは、即ちジャークマターの「改竄」が及んでいないということ。つまりはツルギが成した業についても正確に語ることができる人物なわけで、今回のエリスの登場には、そのユーモラスなシーン(バランスがあんまり好かれていないとか・笑)に似合わない重要な意味があったわけです。

 エリスが語るには(ちなみにこのシーン、ツルギ自身の回想とリンクさせて間延びさせない工夫が良いです)、ツルギはかつてホウオウキュータマを手にして永遠の命を得、その有り余る時間をどう使うか考え抜いた結果、宇宙をひとつにまとめることを決意し、それを実現させました。しかし、ドン・アルマゲの出現によってその平和が崩壊に追い込まれてしまったため、事態を憂慮したツルギは各星座系から88の戦士(自身は勘定に入れてない??)を集めてアルゴ船で迎え撃つことに。ところが、ドン・アルマゲの強大な力の前に、ツルギの盾となった戦士たちは次々と斃れていき、残されたツルギはその永遠の命と引き換えに恐るべき力を手に入れ、遂にドン・アルマゲを倒しました。その後、生き残った戦士の一人であるオライオンは、傷ついたツルギをコールドスリープにかけてアルゴ船を封印し、エリスの元にキュータマを託しに現れたというわけです。

 実に良くできた話! 「伝説」の曖昧さを廃して「事実」を端的に説明することで、逆に「伝説」というタームに相応しい輝きを与えているのが素晴らしいです。同時に、これだけの大戦が何故ツルギやエリスを除いて忘却の彼方にあるのか、余計に気になって来るわけです。

盾になれ!

 この「事実」あるいは「伝説」を踏まえて垣間見えてくるのは、ツルギがラッキーに言い放った「俺様の盾になれ」という発言の真意です。

 放送局内でのテッチュウとの一戦では、周囲の人々の被害を一切気にかけることなく、容赦ない攻撃を繰り出してラッキーを怒らせましたが、これはツルギのポリシーとされている「少数の犠牲が多数の命を救う」という図式を体現しており、後の一戦では実際にラプターもその被害に遭っています。「俺様の盾になれ」という発言は、非難するラッキーにも犠牲になるよう強要するかのような発言でしたが、実際そうなのでしょうか。ラプターをすぐさま手当するあたり、真に犠牲を望んでいるようには見えません。

 かつて、90人近い仲間を一気に失ったツルギは、酷い孤独感に苛まれた可能性があります。その孤独感を隠蔽するために、彼は大言壮語なキャラになっているのではないか...と勘ぐっているのですが、どうでしょうか。そして、先の大戦では、恐らく戦士たちに「盾になれ」とは言っておらず、進んでツルギの盾となって死んでいったのではないでしょうか。よって、ラッキーの言う「仲間」という言葉には理解を示すことができず、元々戦士ではないメンバーには離脱を勧めているように思えるわけです。自分の繰り広げる戦いの犠牲にならないよう、ラッキーたちを敢えて自分から離れるように仕向けている雰囲気すらあります。

 ところが、ラッキーは「犠牲になれ」と言われて離脱するどころか、そのポリシーを正してやると言わんばかりに激しく戦いに身を投じてきます。その姿にツルギは何を思ったか...そのあたりは今後少しずつ明らかになるものと思われます。

 氷解の一端は、巨大戦における「共闘」や、スパーダのカレーを素直に絶賛する態度に見えています。追加戦士の抱える「闇」は嚆矢たるドラゴンレンジャー、あるいはその先祖的存在たる「マスクマン」のX1マスクにも顕著でしたが、この鳳ツルギにもその資格が備わっていると考えて良いでしょう。前作の門藤操も、そのまた前のキンジ・タキガワにも、さらにザラム(虹野明)にも、そういった要素が色濃く描かれ続けて来たので、今回も...と考えるのは自然かと思います。そう思わせる「仕掛け」も色々ありますしね。

アメトーーク

 というわけで、夏バテも始まってちょっと薄めな記事になってしまいましたが、アメトーークのスーパー戦隊芸人はご覧になりましたでしょうか?

 夏バテ感を吹き飛ばす快企画でしたね。「バトルフィーバー」がフィーチュアされまくっていたので、とにかく嬉しかったです、私は(笑)。やっぱり見た目も中身もインパクトが強すぎますよね、「ゴレンジャー」と「バトルフィーバー」は。キュウレンオー VS 野球仮面(!!)の巨大戦が撮り下ろされていたりと、同局ならではのメリットを最大に発揮した豪華なコンテンツになり、ラッキーたちもスタジオに勢揃いするというサービスには拍手喝采でした。中でも、スティンガーの岸さんがクールに宣伝を決めた後に照れている一幕、可愛くてしょうがなかったですね(笑)。

 まだまだ取り上げられなかった戦隊は数多くあるので、第二弾、第三弾と期待したいところです。

次回

 次回は、ラッキー VS ツルギのポリシー対決の続き。何らかの「解決」が見られるようではありますが...。夏休みシーズンということで、インパクトのある展開を楽しみにしたいと思います。