Space.24「俺は戦う盾になる!」

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 12人の救世主、ここに誕生す!

 ラッキーとツルギが理解し合うプロセスをハイテンポかつ丁寧に描写して、最強の味方を得るカタルシスを存分に見せてくれた一編です。ところどころに織り込まれた追加戦士の定番要素も楽しく、ツルギの重い過去に終始しない爽快感も出ていて申し分のない「パワーアップ編」でしたね。

ギャブラー

 ネーミングから勝手に賭博師を想像していたのですが、チュパカブラがイメージソースだったとは。吸血怪物という肩書に相応しいモチーフではありますね。

 デザインはチュパカブラを元にしつつも、より戦闘的で格好良い雰囲気にまとめられており、テッチュウの右腕にして「血染めの処刑人」という物騒な異名を取るダイカーンならではの強さを感じさせるものでした。

 キュウレンジャーの半数以上を体内に取り込み、エネルギーを吸収するという大手柄を上げますが、このテの展開は戦隊シリーズでも見慣れた光景になっており、正に「救出」をピークに持ってくる作劇なわけです。既に「デンジマン」から見られる伝統芸ですね。さらに今回は、エネルギーが吸い取られるという危機的状況を加味して、よりスリリングになっていました。よって、逆転劇にも大きなカタルシスが付与されることになるわけです。

 巨大戦では、奇しくも前回のサブタイトルを最も体現して散る役回りに。テッチュウの盾となり犠牲になる様子は、ツルギとラッキーの関係性とは対極になるよう置かれつつ、「仲間を盾にするとは」というツルギの呟きに「お前が言うな」とラッキーがツッコミを入れる...といったギャグも織り交ぜられて、重いテーマを払拭する楽しいシーンに仕上げられていました。

ツルギの過去

 前回予想したとおり、ツルギはかつて不滅の命を手に入れ救世主となったものの、ドン・アルマゲを倒すために集めた88星座系の戦士たちが、次々に彼を庇って倒れていくという経験をし、仲間を失うことに対し恐れを抱くに至ったと明らかになりました。

 ただ、その壮絶な体験の中でも、決定的にツルギを追い詰めたのが、烏座系のクルエボという「作戦参謀」を失ったことでした。

 クルエボは作戦参謀ではあっても純粋な戦士ではないため、ツルギはクルエボを戦線から遠ざけていたようですが、88の戦士たちが全滅に近い状態になってツルギの心が折れかけていた時に、最前線で励ましてくれたのが他ならぬクルエボでした。そして、ツルギを守って倒れたのもまたクルエボ。ツルギに心酔し、そして信頼されていたクルエボの死は、ツルギを半ば捨て鉢の状態とし、遂に不死を捨てドン・アルマゲを倒させるに至りました。

 スパーダたち非戦闘員が戦闘に参加することを非難する態度は、このクルエボを失った経験に因るところが大きい...というのは明白ですね。また、やはり仲間の存在を拒否する(辛辣で自己中心的な言葉をわざと投げかけて遠ざける)言動も、明らかにかつての大犠牲を悔いてのことでした。

 「少数の犠牲が多数の命を救う」というポリシーについては前段と矛盾していますが、そのあたりはショウ・ロンポーが「言動の不一致」を説明して補完していました。要するに、ツルギは派手に戦いつつも犠牲者が極力出ないよう配慮していたわけです。「犠牲」の真意は、とっくに捨てた不死身を騙って戦う「自己犠牲」にあると言えます。

ラッキー

 そんなツルギの言動にある真意を全く以て理解できないラッキーは、前述のとおりショウ・ロンポーの「気付き」によって少し視点を変えることになりました。ただ、それでもやはりツルギのポリシーとは相容れない。そんなラッキーの直情がツルギを変えていくプロセスは、実に熱いものがありましたね。

 「盾」というキーワードが、タテキュータマの能力で具体的に描写される中、ラッキーのポリシーもまた、「盾」というキーワードを用いたラッキーの、予想外の言動によって示されることになります。それが正に今回のサブタイトルなのですが、矛と盾の故事を引くまでもなく、自らが矛を振るう盾などという大いなる矛盾が、ツルギの心を動かすわけです。さらに、ツルギに対してダメ押し的に「とっくに不死身ではないのだから、命を粗末にするな」と言い放ち、ツルギが最も忌避することを彼自らに強要していると気付かせたラッキーは、ツルギにとっての救世主にも見えたかも知れません(「俺様」だから認めないでしょうけど・笑)。

 ホウオウソルジャーはレッドをパーソナルカラーとしていますが、この前後で意義がガラリと変わってしまいます。Beforeとしては、シシレッドに取って代わる「真の救世主」が出現してかつての伝説を蘇らせるという主張。Afterとしては、新旧の救世主(代表)が手を取り合って新たな伝説を作り出すという主張です。マーチャンダイジングの企画に牽引されながらも、ラッキーとツルギの両者がレッドである必要があった...と思わせる計算し尽くされた展開には感服しました。

 その後、ラッキーとツルギが成す「ダブルレッド」が大人げなく「戦う盾」のポジションを奪い合う様を描いて楽しく盛り上げ、見かねたショウ・ロンポーが「戦う盾」を買って出るに至り、即座にそのポジションをダブルレッドが譲るという、ダチョウ倶楽部の定番ネタを引用したギャグにも、切れ味があって実に楽しかったですね。

追加戦士の宿命

 追加戦士は、徐々にアドバンテージを喪失していく宿命にあるのですが、早くも今回、その片鱗が現れていました。「不死身ではなくなった」という説明があって以来、その無敵振りに翳りが出てくるあたりは巧い処理ではありましたが、少々急激なきらいもありましたね。

 ガオシルバーのように長い年月を経て復活し、タイムファイヤーのように二人目のレッドとして登場し、デカブレイクの如く初登場時は瞬く間に形勢逆転の活躍を見せるなど、追加戦士の諸要素を詰め込んだホウオウソルジャーの格好良さは折り紙付きではありますが、「戦隊の一員」であるためには、そういった描写のレベルダウンもやむなしといったところでしょうか。前段のとおりラッキーと「並ぶ」ことに意義があるとすれば、必要な措置として納得するより他ないのかも知れませんね。

キュータマジン

 ネーミングはキュータマ+魔神といったところでしょうか。ダイデンジン、キョウリュウジンといった具合に、「ジン」を付加するロボは戦隊における定番なので、単にキュータマ+ジンなのかも...。

 それにしても、SFホラーであること(プラス、ゴレンジャーのプラッシュアップ版であること)を標榜した「デンジマン」において、巨大ロボにダイデンジンという名前を付けること自体がハイセンスですよね。そもそも「デンジ」というターム自体が日本語由来ですが、それを差し引いても「デンジロボ」でないところがハイセンス過ぎると思います。

 話が大いに逸れました。このキュータマジン、12のキュータマの全合体ではあるのですが、基本的にシシボイジャーとギガントホウオー(+ホウオウベース)で構成されており、他のボイジャーが使用されていないのが異色。それでも、そのスーツはもはやどうやって動かしているのか想像もつかない巨大さ(日下さんの凄さよ...)。圧倒的な存在感とキュータマの集合体という趣の美しい統一感を遺憾なく発揮しており、非常に優れたデザインだと思います。全合体マニアには少々物足りないかも知れませんが、今後何が出てくるか分かりませんので、まだまだ期待しておきましょう。

次回

 ツルギが過去を確かめるべく、時を司ると言われるトケイキュータマの入手を進言。奔走する面々が描かれます。

 メインは小太郎。これまた戦隊でも定番中の定番となる、肉親の幻をフィーチュアした感動編が繰り広げられそうです。セミレギュラー程度かと思っていた小太郎がフィーチュアされる機会の多さにも驚きますが、それだけ人気キャラになったということでしょう。どんな物語を見せてくれるのか、楽しみですね!