Space.25「惑星トキ 少年の決意」

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 過去への旅のキーとなるトケイキュータマを求め、冒険を繰り広げるという壮大なシチュエーションでありながらも、小太郎の肉親への思慕をテーマとするコンパクトな物語を紡ぎ出した名編。

 12人の戦士を時計に配置する収まりの良さや、これまでの代表的な敵キャラクターを次々に見せるなど、とにかくコンパクトかつ的確な配置が光る一編でした。

惑星トキ

 惑星の各所、時計の如く12等分された位置にゼンマイがあり、それを30分以内にすべて回し終えればトケイキュータマが手に入るという仕掛け。先遣隊のスパーダとラプターが何回かそれを試みたものの困難だったという「前置き」が巧く、謎解きを省略してスムーズに説明させる構成が素晴らしいです。

 各ゼンマイが配置されたロケーションの景色が似通っていたり(それでも周辺の木や岩の配置がなるべく似通わないよう配慮されてはいる)、各々のポジションに各人が合流するのがかなり早いなど、トキの規模に関してはつかみづらい感触もあり、頑張ればスパーダとラプターも30分で回れたんじゃないかと(笑)思ってしまうのですが、そこは愛すべきツッコミどころとしておくべきでしょう。

 テッチュウたちの攻撃の影響が出て、ゼンマイを回す際に「試練」が出現するようになるというエクスキューズは、先んじてスパーダとラプターが試行したこととの整合性まで考えられていて感心しきりでした。この「試練」自体は都合12パターン登場してくるため、本話のみの尺で描くにはボリューム過多というもの。したがって、殆どがサラッと処理されることになります。しかし、この「サラッとした処理」が逆に各メンバーの成長ぶりを浮き彫りにすることになるあたり、正に再生怪人のお手本といったところ。夏休み編としても上々の完成度と言えるでしょう。

 「試練」はそれぞれの記憶から実体化したものとなり、ラッキーはエリードロン、スティンガーはスコルピオ、ハミィはゴネーシといった具合に過去の強敵が出現するパターンに加え、チャンプはアントン博士、ショウ・ロンポーはビッグベア総司令、小太郎は母親、ツルギはクエルボという死別した人々の出現するパターン、ガルは女装ガル、バランスはナーガ、ラプターは四人の男性陣(ラッキー、スパーダ、ショウ・ロンポー、ツルギ)によるプロポーズ合戦というバラエティパターンも見られました。スパーダは限りなくギャグに近い感じでマーダッコ。そして、ナーガには誰も現れなかったという...。

 この中での注目は、まずチャンプの前に現れたアントン博士。さすがにうじきさんの出演はないため顔が隠れるカットで処理されていました。ここでのアントン博士は完全にチャンプの敵として出現しており、単純にスティンガーに対するスコルピオと同様に「試す者」でしたね。

 次にビッグベア総司令。ショウ・ロンポーはもはや動揺することもなく、単純に手合わせできることが嬉しいとばかりに対決します。ビッグベア自身も完全に稽古のつもりで接しているのが分かり、終わった後は二人で呑気に語らっているのが可笑しい。そのムードがとても良く、意外なところで小さな感動を味わえました。

 その他、クエルボに関してはあまり詳しく描かれませんでしたが、ツルギは少し動揺を見せていました。詳らかにしなかったこと自体が視聴者にとっての救いだったように思います。ガルとラプターは完全にギャグ担当...。ラプターは「お断りしました」というオチ付きなのが良いです。

マーダッコ

 スパーダの前に出て来たマーダッコは、スパーダの記憶から作り出されたものでしたが、ここに本物のマーダッコが復活して加わるのがややこしい...(笑)。

 各人の描写が並行するエピソードに、このような仕掛けを入れてくるあたり挑戦的ですね。ただし、スパーダと対決するマーダッコは「過去の性格」の再現になっているのに対し、テッチュウが復活させたマーダッコは、にわかには理解不能な口調でまくし立てる(いわゆるヲタ語?)キャラになっており、良い差別化ができていました。

 今回もやっぱり退場ではないみたいですね。スパーダはタコ料理をしばらく作りたくなくなったのではないでしょうか(笑)。

小太郎

 今回のメインは小太郎。

 前作でもジュウオウイーグルこと大和が、亡くなった母の幻と過ごすエピソードがありました。大和の場合は父親との確執の原因ともなった母親との邂逅が、彼の心を揺さぶるという展開であり、大和という大人の目線で描かれる肉親への思慕が、子供にも分かり易く丁寧に示されるという感覚でした。故に、母親への思慕という点では少し複雑な構成になっています。

 今回はズバリ年齢的にも「子供」の小太郎の目線で描かれる思慕であるため、非常にストレートです。小太郎というキャラクターの加入した意義を存分に味わえる一編だったと言えます。裏返せば、基本的に大人かそれに近い年齢の戦隊ヒーローでは、母親へストレートな思慕は描写しにくいきらいがあるわけです。大和のように斜に構えて後悔を織り交ぜるか、兄弟戦隊の末っ子に「子供を演じさせる」か、「フラッシュマン」のように悲劇的な親子の別離をテーマにするか。それらは一様に重い描写を避けられません。

 今回は、小太郎にそれを負わせることで、悲劇的ではありますが、同時に巣立ちを思わせる爽やかな成長譚に仕上げられており、素直な感動を呼ぶものとなりました。テッチュウにも全く臆することなく、大人たちに引けをとらない活躍を見せるコグマスカイブルーの成長ぶりには、ヒーローの資格が充分に備わっており、とても格好良いです。

 それにしても戦隊シリーズへ何回かゲストで出演されている秦瑞穂さん、遂に母親役ですか! なかなか感慨深いものがありますね...。

クライマックス感満載!

 総勢12人での名乗り!

 そしてキュータマジン全員搭乗!

 テッチュウとの総力戦!

 ここぞというタイミングで主題歌も流れはじめ、さながら最終編のような盛り上がり。あたかも小太郎が最終決戦に向けてのキーパーソンであるかの如く構成されるあたりも、ほとんど最終回のノリでした。こんなに盛り上がっちゃっていいのか? と思っていたのですが、どうやら「章」の区切として今回を位置づけたようですね。いわゆる「夏枯れ」と呼ばれるテレビの鬼門を吹っ飛ばす「知恵」でもあったのでしょう。ファンとしてはこの豪華な画作りが嬉しいところです。

 コンパクトなドラマと豪奢なアクション&特撮。この面白いコントラストも、今回の良い特徴でした。

 さて、「次章」への弾みも付きました。どう展開していくのか先が読めないですね。

二人のフクショーグン

 残り二人のフクショーグンも本格的に紹介されることとなりました。アキャンバーとククルーガ。

 アキャンバーはイエローバスター=宇佐見ヨーコこと小宮有紗さん。ホシ★ミナト、ラプターに続く先輩イエローの出演は嬉しいポイント! それにしてもすっかり声優としての演技が板に付いていますよね。

 ククルーガは、デンジグリーン=緑川達也こと内田直哉さん! 「007/スカイフォール」における吹き替えでの怪演も記憶に新しく、こちらも嬉し過ぎるキャスティングですね。ちなみに「デンジマン」のレコーラーの話では、今は大御所中の大御所となった中尾隆聖さんとの共演が見られます。

次回

 今回、自分の前に何も現れなかったナーガ。その心の行方は如何に!?

 既に予告で衝撃のビジュアルが先行公開されましたが、色々斜め上の展開で目が離せません!