Space.40「開幕!地獄のデースボール」

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 9人体制での開始となった「キュウレンジャー」に相応しい題材ということで、野球です。既に12人体制が板に付いているので、期を逸した感は否めないものの、いわゆる連続バラエティ編が繰り広げられているこの時期が最良のタイミングだったと言えるでしょう。

 正直、私個人は野球に関して疎いので、散りばめられた小ネタは分かりませんが、疎いということでスパーダには感情移入し易かったという面も。野球を苦手とするスパーダをメインに持ってくるあたり、スポーツの見方が多様化した現代ならではと言えるように思います。一昔前なら、全員が野球に長けていて当たり前ですからね。

グローブン

 野球ネタということで、正しく野球モチーフとなるカローが登場。声は何と、落合博満さんの息子さんだそうで、いくら野球に疎いからといっても、落合監督くらいは知っていますので、素直に驚きました。

 かつて「ゴレンジャー」には野球仮面という怪人が登場。巨大なボールが頭部になっているデザインの妙や、永井一郎さんの怪演もあって強いインパクトを放ったこともあり、近年の戦隊劇場版に再登場したりと、未だに人気があります。今回のグローブンは、そこまで「ウケ狙い」には走っておらず、「キュウレンジャー」の世界観を維持したクールかつ分かり易いデザイン。シルエットとしては、長い首の異様さが目を引きます。

 色々と野球の小ネタを喋っていたようなのですが、残念ながら私にはよく分からず。ショウ・ロンポーが「オレ流」と言ったのは落合さんに絡ませたものだと分かりましたけど(笑)。

デースボール

 笑えるほど分かり易くて巧いネーミング。反則ありの、勝てば良いというベースボールですが、「デンジマン」のベーダー野球を思い出しました。ベーダー野球は完全に野球の体裁をとった殺人競技でしたが、今回はそれよりもう少し緩いです。

 デースボールは、審判員がジャークマターのメンバーで構成されているため、ルールもないに等しいはずですが、何故かちゃんと野球している場面とそうでない場面が交互に訪れて、よく分からない競技になっていたのが笑えます。ホームランや送りバントといった野球としてのプレースタイルは遵守し、例えキュウレンジャーがそういったプレーで点を取っても文句は言わず。乱闘時に徹底してエースたるラッキーを潰しにかかるとか、ジャークマター側の攻撃になった途端に卑怯な手段を講じて点を取りに来るとか、そういった面では悪の主張をするものの、概ね平和に野球をやっているのが微笑ましいです。

 なお、途中でメカマーダッコが出て来て、反則連発に拍車をかけることになりました。こういった凶暴な人物を招聘するやり方は、異端を入れて場を引っ掻き回すにはもってこいで、ようやくマーダッコの使い処がハマった例になりましたね。

 前述の野球仮面のエピソードでは、野球仮面側が9人、ゴレンジャーが5人という、初めから不均衡な体制で野球が繰り広げられたものの、ゴレンジャーがボールの軌道をリモコンで変化させるという荒技を用いて勝利しました。いわば、正義側が反則技で勝ったわけですが、今回は逆にラッキーがフェアプレーオンリーを宣言するといった具合にヒロイズムを強調しています。ただし、これは現代ならではというよりは「ゴレンジャー」が例外と言っても良いかと思いますが...。

 さて、キュウレンジャー側のメンバーチョイスですが、適材適所な配置がショウ・ロンポーの知将振りを垣間見せます。要となるピッチャーですが、エースのラッキーはオーソドックスなスタイル、ラッキー負傷後に登場したツルギは変化球型でした。この二人の個性の違いが前半と後半のコントラストを生んでいて良い感じでしたね。そういえば、炎に巻かれたとはいえ、ツルギはまた脱いでましたね...。完全に脱ぎキャラです(笑)。他の面々はあまりフィーチュアされませんでしたが、ラプターの空中キャッチ、ナーガとバランスのオリラジ(?)風ギャグ、ガルの草野球オッサン振り、小太郎の野球少年っぽさなど、それぞれ細かい見所が用意されていました。ハミィのユニフォーム姿があまり映らないのは遺憾ですが!

スパーダ

 何でもそつなくこなす器用キャラという設定のスパーダ。しかし劇中では、料理が巧く、優しくて戦闘にはあまり積極的ではないお兄ちゃんというイメージになっていて、何となくポジションがフワフワしている印象。機械の修理を手早くこなしていくラプターやバランスの方が器用なキャラとして目立っているため、余計に印象が弱いんですよね。ただ、キュウレンジャーにおける「柔」のムードメイカーとしては確実に重要なキャラクターなので、今回はその裏に隠された努力家の面が披露されて非常に良かったと思います。

 突如付加された球技全般が苦手という設定に関しては、特に違和感はありません。逆に少し嬉しかったですねぇ。

 私は少年野球全盛末期とも言える時代を過ごしましたので、「野球ができて当たり前」という雰囲気の中で、苦手意識を抱えたまま肩身の狭い思いをしました。そんな心情を経験したためか、球技自体は特に苦手ではないのですが、どうも野球だけはやる気が起こらず今に至ります。観戦自体に好き嫌いはないものの、どうも「野球をする」ことに関しては未だにアウトです。なので、スパーダの苦手意識は凄くよく分かりました。バットの持ち方が逆になるほど下手ではないですが(笑)。

 凄いなと思ったのは、スパーダが一晩の努力で野球が巧くなるのではなく、変身後の「角」で逆転するという奇策に出たことです。ルール的に云々はこの際置いておくとして、一朝一夕で野球は巧くならないことをちゃんと描いていたのが素晴らしいと思います。特訓で巧くなるパターンはそれこそ百出しているわけですが、今回は敢えてそこにリアリティを持ち込んで「努力」と「根性」を肯定しつつ否定してしまったのが、地味に凄いのです。

 ちなみに、スパーダの様子を見て特訓に協力するラッキーの男気、その特訓の様子を影ながら見守るラプターが良い感じ。特にラプターは星飛雄馬の「姉ちゃん」のパロディを演じていて、感動させたいのかギャグなのか分からないあたりが凄く宜しいです。

 ちなみにパロディと言えば、巨大戦の終了時に、主題歌の校歌風ピアノアレンジとサイレンが鳴っていて、実に良い雰囲気を醸し出していました。

キュウレンジャーハリケーン

 今回はカシオペア座系ということで、「ゴレンジャー」のネタを振ってきましたね!

 何故カシオペアがゴレンジャーなのかと申しますと、ゴレンジャー五人の本名の頭文字を取ると「カシオペア」になるという仕掛けで、最終話においてそれが逆転の鍵になったからですね。そして野球仮面の回を彷彿させる展開もあって、決め技はゴレンジャーハリケーンの如く全員でボールをパスして最後にレッドが叩き込むという、伝統芸ここに極まれりといったシーンを完成させていました。

 ショウ・ロンポーは単にボールをぶつけられただけだったり、ラッキーが最後に「エンドボール」と叫んでボールを打ったり、優勝旗に変化してグローブンが喜んだのも束の間...というお約束の爆発シーンがあったりと、実にコミカルかつ格好良い連携必殺技になっていました。グローブンも「引退」という言葉を発して散るなど、野球仮面を意識したセリフ回しも嬉しいところ。巨大戦がちょっと余計に見えてしまうのは、「ゴレンジャー」へのオマージュ色が強かったからでしょうか。

 とにもかくにも、意外なところで元祖へのオマージュが捧げられました。こういったネタも長い歴史があってこそですよね。

次回

 次回より、コミカル色は封印でしょうか。いよいよ敵地に乗り込む大詰めの展開です。一気にドライブを掛けて欲しいところですね。