第10話 少年DASH

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ストーリー

 UDF主催の社会科見学に、マサユキ達4人の小学生が招待された。出迎えるカイトとミズキは、自己紹介する前にマサユキからフルネームで呼ばれ驚く。マサユキはDASH博士と呼ばれるほどDASHについて勉強しており、将来はDASHに入隊すると公言している少年だった。

 司令室見学が進められる中、コバが出勤時間に32分遅刻。遅刻は今月だけで3回を数えていた…。「人間だから一度や二度の失敗はある」と言うコバは、「失敗したら地球を守れない」と厳しい言葉を放つマサユキにタジタジ。続いてダッシュマザーによる遊覧飛行を開始。そんなDASHをよそに、ビルの谷間では異常な電磁波が…。

 見学が終わり解散というとき、怪獣メタシサスが出現。進路にある物を少し破壊すると、消滅してしまった。DASHのモンスタースキャナーでも捕捉は不可能だったが、エリーは消滅直前に局所重力場の歪みを検知していた。メタシサスは、重力を操り空間を飛び越える能力を持つのだ。マサユキは、何故かメタシサスが次に現れる地点を予測し、メタシサスはその通りの場所に現れた。

 コバとショーンが直ちにダッシュバード2で出撃。しかし、メタシサスを捕捉してもすぐに消滅・移動してしまうため攻撃にことごとく失敗してしまう。マサユキは「対策がないならまた失敗してしまう」とコバに対し辛辣な言葉を投げかける。

 DASHは対メタシサスの作戦を練るが、妙案が浮かばない。カイトはふと、マサユキがメタシサスの出現場所を予測するかのような言動をとっているのを思い出した。コバはその発言が気にかかり、独自にマサユキに接触を試みた。

 メタシサスは、やはりのマサユキの予測した場所に出現した。コバはマサユキになぜ予測できるのかを問うが、DASHは当てにならないと言って取り合わない。カイトはウルトラマンマックスに変身! メタシサスに立ち向かうが空間転移によって苦戦を強いられる。コバは「何度失敗しても決して諦めず、必ず地球を守ってみせる!」とマサユキを説得、マサユキは、遂に携帯電話の画面の乱れが位置予測に役立つことをコバに告げた。

 コバは直ちにショーンのダッシュバード2に合流。マサユキが予測した位置をミズキが座標に変換してコバに伝える連携作戦が開始された。マサユキ、コバ、マックスの連携作戦は成功し、メタシサスの位置を確認したマックスは、マクシウムソードでメタシサス粉砕に成功する。

 一件落着後、コバはマサユキにDASHのバッジをプレゼントする。未来のDASH隊員と固く握手を交わすコバだった。

解説

 初期ウルトラや、70年代ウルトラでは恒例だった、少年と特捜チームの交流話。平成ウルトラでは主人公の成長に主眼を置いた構成が多かった為、あまり子供と接する場面が描かれなかったが、ことマックスではごく自然に描かれた。これは、DASHの面々が「大人なチーム」であることを端的に示したと言える。

 こういったエピソードでよく指摘される意見として、作戦室などの重要な機密を一般公開するなど…といったものが多い。しかしUDFの社会的な立場では、頼りにされる反面、マサユキの言動に象徴されるように批判にも事欠かない状況が想定される。こうした場合に、地域の人々と交流して理解を深めてもらうのは有効な手段であり、屈託のない子供から攻めるのは基本だ。機密に関しては「社会科見学」に抜擢された裏舞台を想像すれば充分なはずで、特にリアルさを欠いた行事だとは思わない。

 さて、前置きを打ったところで、今回のエピソードにおける見所をあたってみることにする。

 冒頭、見学のガイド役としてカイトとミズキの「毎度お馴染みペア」が出てきた時点で、言い方は非常に悪いが「またこの2人の話か」と思ってしまったのは事実。しかしストーリーが進行する過程で、徐々にコバの話へと推移。最終的にはラストシーンがコバで締められるという、待望のコバ隊員メインのエピソードになった。というわけで、コバの見せ場はなかなか面白いものに仕上がっている。

 まずは遅刻。直情型で熱くなりやすい印象が強く、ダッシュバードの墜落も多いコバ。今回、遅刻の常習犯という面が露呈したことで、このキャラクターにグッと深みが増したように思う。欠点が設定されたキャラクターには、何となく生命力が宿るものだが、今回のコバはまさにそのパターンに当てはまる。

 続いて1回目のダッシュバード2号出撃シーン。何度も撃ち損じつつも、果敢に挑む姿には、ダッシュバードのスピーディでアクロバティックなCGが効果的に使用され、「諦めない」コバの信条を印象付けている。

 次に、マサユキからメタシサスの発見法を聞き出そうとするシーン。真っ直ぐで諦めないコバらしく、逆ギレすることも、「防衛の為」とか高圧的な大人の論理を振りかざすこともない。子供の目線で、マサユキの共感が得られるまで説得する…。このシーンが今回の白眉だろう。ウルトラシリーズには、常々「良き大人」が存在したが、DASHには、その集大成が投影されているかのようだ。

 そして、2回目のダッシュバード2号出撃シーン。ショーンに「拾ってくれ」と通信するのがプロらしくカッコいい。マサユキとの連携(ここで一旦ミズキがポイントに変換して伝達するのが実にいい)で確実に弾をヒットさせ、マックスにメタシサスの位置を示すシーンのカッコよさは、ダッシュバード飛行シーンの中でも随一だ。

 ところで、今回登場したメタシサスは、見ての通り異形な怪物で、格闘には適さない。しかしそのあたりは流石にウルトラ、作りこまれたミニチュアや格闘できないことを逆手に取ったアクションで、しっかり立体的なシーンを創出。上空からマクシウムソードを放つなど、横だけでなく縦の広がりを感じさせる演出が見事だ。

 正直なところ、コバ隊員メインのエピソードとしては、少し弱い。DASH見学というイベントが、ダッシュマザー遊覧飛行が飛び出すまでに派手だった為に、コバの活躍の印象を弱めてしまったのは否めない。今後の活躍に期待だ。

オマケ

 ベース・タイタン見学シーンでは、ベース・タイタン内部が詳細に紹介されている。ロケとセットをたくみに使用していて、その描写は非常に上手い仕上がりだ。

 また、このエピソードには、過去のウルトラのアイデアなどを拝借したと思われる部分が2つある。

 一つは、メタシサスが携帯電話には乱れを生じさせるが、DASHのセンサーはあまりに高性能なために乱れがなく、発見できないというもの。これはウルトラセブンの第44話「円盤が来た」で、ペロリンガ星人の円盤群が、アマチュア天文家には発見されたが、地球防衛軍の天文台では発見できなかったという仕掛けを彷彿させる。

 もう一つは、ラストシーンでコバがDASHのバッジをマサユキに付けるシーン。これはウルトラマン第27話「怪獣殿下 後編」のラストで、ハヤタがデンカ少年に流星バッジをプレゼントするシーンに重なる。

 2つとも、ふと思い出さなければ分からない程度のことだが、狙っているのか、無意識に似たのか、定かではない…。