第11話 バラージの預言

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

ストーリー

 カイトとミズキが、ダッシュバード1でエリアJT557上空をパトロール中、突如巨大地震がエリアJT550一帯を襲い、吹き上がる砂嵐が押し寄せ市街地が埋没してしまった。また、強力な磁場が発生しレーダーなどが機能を停止。その磁場はベース・タイタンにも影響を及ぼし、機能は麻痺状態となってしまう。カイトはデータを採取すべく接近するが、墜落に近い不時着に追い込まれた。不時着した山林には、怪獣アントラーが出現。ただちに攻撃を開始するカイトとミズキだったが、ダッシュライザーはアントラーの磁力光線に吸い寄せられ、アントラー自身は地中に姿を消してしまった。

 アントラーの被害により、都市部の機能は完全に麻痺。ミサイルなどの遠距離攻撃は強力な磁場により誤爆する可能性があるため、DASHは近距離攻撃を作戦として採用した。ショーンはそのための新兵器開発に勤しむ。ヨシナガ教授は、古代文明研究の第一人者・坂田裕一教授が発掘したバラージの遺跡について語る。アントラーこそ、遺跡より出土した石版に記されている怪獣であると断定。石版には、アントラーが4000年後に甦り、自然を破壊している文明を襲うとあった。トミオカ長官は、5年前、坂田教授が失意のうちに亡くなったことを告げる。

 坂田教授の大学を訪れたカイトとミズキは、坂田教授の娘・由里と出会う。しかし、由里は「人類の浅知恵がアントラーに勝ることは不可能です」と言う。由里は、アントラーは自然を破壊する人類に警告する地球の意志だという独自の説を持ち出すが、ミズキは罪のない子供たちの犠牲は許されないと反論する。調査を続けるカイトたちは、蔵書室でさらなるバラージについての報告書を発見。後にバラージの遺跡再調査にて、石版の欠落部分が発見され、解読によると「再び悪魔が現れたとき、ノアの神がもたらしたバラージの青い石がそれを退けるであろう」とあった。実は、教授はその青い石を娘の由里に託していたのだ。

 アントラーは再び市街地に現れた。DASHはショーンの開発した新兵器・ダッシュデリンジャーでアントラー攻撃作戦を開始。一方、被害エリア内にある病院には子供たちが取り残されていた。由里はその状況に遭遇し、子供の救出に協力することを決意する。救出活動にミズキも合流、ミズキの「バラージの青い石さえあれば」という言葉に、由里は父に託された青い石をミズキに手渡した。

 瓦礫の下敷きになったカイトは、ウルトラマンマックスに変身してアントラーに立ち向かう。しかし、アントラーのパワーやアリジゴク戦法は殊のほか強力で、マックスは苦戦を強いられる。

 そんな中、ミズキが青い石を持って由里と共にDASH隊員たちに合流、青い石は特殊なレンズではないかと言う由里の言葉をヒントに、ショーンは青い石をカートリッジに入れてダッシュデリンジャーに装填した。コバの放った光弾は見事アントラーに命中、マックスは、動きの止まったアントラーの顎をマクシウムソードでへし折り、マクシウムカノンで止めを刺した!

 由里は父のやろうとしていたことが理解できたと感慨深げに語る。青い石が包まれていた織布に描かれたノアの神は、ウルトラマンの姿に酷似していた…。

解説

 ウルトラシリーズの人気怪獣・アントラーを迎えての娯楽編。サブタイトルや登場するタームこそ、初代ウルトラマン第7話「バラージの青い石」にほぼ共通しているが、ストーリー自体は全くの別物。そのため、初代マン同話の壮大なバックボーンを抱えた幻想的な雰囲気を期待すると、見当違いになってしまう。

 今回の雰囲気としては、「アントラー」「バラージ」「ノアの神」といったタームが織り成す幻想的な味を、正統な怪獣映画的展開に持ち込んだ娯楽作と捉えてほぼ間違いない。ただし、その「味」自体は、初代マンの「バラージの青い石」を見たことがあるか否かで随分違うような気がする。見ていない人にとっては、バラージの伝説自体に底の浅さが感じられ、由里の語る「人類への警告」という面だけが浮いて、妙に説教臭いストーリーに映るのではないか。

 思うに、マックスで初めて旧作を踏まえた上でのストーリーが展開されたのである。したがって、残念なことに単体として純粋に見た場合、些細なことではあるが展開の色々な場所に難が見られる。

 まずカイトとミズキのコンビ。結構食傷気味のファンも多いのではないだろうか。いいコンビ振りは確実に進展していると思うが、ティガのダイゴ&レナのカップルですら、ここまであからさまにコンビで行動してはいない。ショーンの新兵器開発やコバの射撃の正確さなどの描写は見られるものの、個性の発揮としては今一つといった感が強い。

 次にバラージについての遺跡や伝説。私自身は初代マンのエピソードを見ているため、後ろに広がる壮大なバラージの文明を想像することができるが、このストーリー内での露出は石版のコピーや青い石、青い石を包んでいた織布という少なさ。大学にある作りこまれた報告書などのリアルさは認めるが、バラージのバックボーンを語るにはあまりにもビジュアルが少ないように思う。

 もう一つが由里のキャラクター。藤谷文子氏のキャスティングにかなり助けられているものの、ミズキの一言だけで主張が揺らぐような浅さが目立つ。30分枠だから仕方がないにしろ、この展開ならば何も当初批判者として登場する必要はなかったような気がする。

 といった具合に色々と難癖を付けてはみたが、映像的にはかなり満足度の高い仕上がりとなっている。

 アントラーの造形については文句なしで、初代マンで傑作と呼ばれた造形をある意味超えており、この怪獣の持つ固そうなイメージを見事に具現化している。大顎のシャープさや細かい演技のできる部位などが素晴らしい。

 また、冒頭の凄まじい砂嵐は洪水特撮の応用であり、迫力あるシーンとなっている。アリジゴクにビルが落ちる場面を鳥瞰したシーンは少しチープだったものの、ローアングルから捉えたシーンはミニチュアの出来も冴えており、アナログ特撮の魅力を存分に伝えている。これはマックスとアントラーのバトルシーンでも言えることで、オープン撮影を混ぜ込んだローアングルのショットは、実景かと思わせるカットも所々に見受けられる完成度。ビデオ撮影の弱点は確実に克服されつつあるように思う。

 ちなみに、マックスとアントラーの格闘では、アントラーの顎攻撃が本当に痛そうなシーンや、鉄塔が磁力で吸い寄せられるいかにもアナログなシーンが嬉しい。さらに、歴代ウルトラ戦士が度々見せる高速回転技も見せてくれる。回転にブレーキをかけながらの着地がこれまたリアルだった。

 最後に本当に残念なことを一つ。「ノアの神」については、ウルトラマンノア説が期待されていたが、今回その是非も全く分からないまま曖昧に片付けられてしまった。これじゃ何の感慨も起こりません!

オマケ

 冒頭、子供たちが砂場でゴジラとガメラのソフビを激突させて遊んでいる。固有名詞もちゃんと叫んでおり、円谷で東宝と大映の怪獣が一堂に会すという、結構ムチャなシーンで楽しませてくれた。ソフト化された際に、当シーンはエディットされるという噂もあるが…。

 今回、怪獣名だけでなく「ダッシュデリンジャー」や「フェロモン弾」といった兵器の名称もテロップ表示された。コバの「クワガタ」発言に対するショーンの「ANT LION」も何故かテロップ化。たまに英語でツッコミを入れたりするショーンだが、聞き取れない大多数の視聴者への配慮ということか。今後も表示される?