第12話 超音速の追撃

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ストーリー

 太平洋上空2万メートル。コバは試作機ダッシュバードβのテスト飛行をしていた。司令室ではミズキがメジャーデビューしたばかりのバンド・バッドスキャナーズの曲を聴いていた。ショーンもその曲を気に入り、カイトは「みんなで聞こうよ」と大音量でかけ始める。一方コバは、パワーブースターの実験を開始。順調に巡航速度を上げていた。バッドスキャナーズが鳴り響く司令室に入ってきた隊長は、「ハーモニーとビートが相まって聞く人の心に直接作用するのが音楽だ!」と力説する。

 エリーが異変を報告。マッハ9.5で飛行するβの近くに、より高速で飛行する謎の物体を確認した。コバはただちにテストを中止して回避するものの、一時墜落の危機に陥る。ただちに救出に向かうカイトとミズキ。コバは救命ボートで浮かんでおり無事だった。カイトは、回収されたβのブラックボックスの解析を始めた。

 街ではバッドスキャナーズのプロモがビジョンに映し出され、その曲を響かせていた。そこに突如現る巨大な飛行物体。街に突風を巻き起こし、降り立ったのは怪獣ヘイレンであった。ヘイレンは口から吐く熱線でビジョンを破壊した。カイトとミズキは迎撃・追跡を開始したが、その圧倒的な速度のため追いつくことすらできないまま、逃がしてしまう。

 ヨシナガ教授の分析で、βを襲撃した飛行物体はヘイレンであることが判明。その速度のためダッシュバードでの追撃は無理であった。カイトは、βのブラックボックスを解析した結果から、バッドスキャナーズのギターサウンドとパワーブースターの発するパルスが、極めて似た波形をしていることを報告。DASHはバッドスキャナーズの曲でヘイレンをおびき寄せる作戦を立案する。攻撃に適した広い場所を検索しようとしたその時、ミズキはバッドスキャナーズのデビューコンサートが30分後に開催されることを思い出す。

 代茂木野外音楽ステージ。コンサート会場の外は既に盛況で、バッドスキャナーズのメンバーはリハーサルに余念がない。到着したDASHはバッドスキャナーズに演奏を取りやめるよう依頼したが、既に遅く、ヘイレンは会場に現れてしまう。

 ショーンとコバはダッシュバードで出撃。ヘイレンへの攻撃を開始するが、ヘイレンは地上でもその敏捷性を発揮、コバのダッシュバード2が被弾してしまう。カイトはウルトラマンマックスに変身、ダッシュバードを念動力で救う。マックスはヘイレンに対し余裕を見せるものの、ヘイレンの素早さの前に次第に苦戦へと転じる。戦いは空中戦へ持ち込まれるが、空中ではヘイレンが圧倒的に有利! マックス最大の危機を救ったのは、バッドスキャナーズの演奏だった。音楽に気をとられたヘイレンは動きが止まり、マクシウムカノンを叩き込まれて四散した。

 司令室に帰ると、隊長はバッドスキャナーズにすっかりハマっていた…。

解説

 コメディタッチに徹した作風の今回。驚くべきことに、今回は隊長がコメディリリーフを一貫して務め上げるという凄まじさ。平成ウルトラ、特にダイナとコスモスでは、無理して笑いをとっているようなコメディが散見され、何となく気恥ずかしい雰囲気があった。しかし、今回のエピソードから感じられる雰囲気は、肩の力の抜けたイイ感じの喜劇といった趣で、俳優陣のチームワークの良さが感じられる。

 というわけで、今回特筆すべきはヒジカタ隊長。宍戸開氏の名演によって「ちょっと緊張感の足りない落ち着かない隊長」という面がクローズアップされることになった。これを「冴えない隊長像」に堕さないところが、バランスの良いところである。まずは、ヒジカタ隊長の「奇行(?)」について、ピックアップしてみたい。

 最初の登場シーンは、バッドスキャナーズの曲がガンガンにかかっている司令室に入ってくるくだり。普通ならば「司令室で音楽をかけるとは!」と言い放つところを、「こんなのは音楽だと思ってるのか?!」とかけている音楽に関して文句を付けているところが可笑しい。DASHは、タロウのZAT並に開けた雰囲気を漂わせているチームだが、その印象はこの一連のシーンでなおも高まる。実は、ここで音楽そのものにスポットがあてられたということが重要。

 次のシーンは、トミオカ長官の「彼も優秀な部下に育ったな!」という言葉に、腕組みをしてボーっとし、慌てて「恐縮です!」と頭を下げるところ。何となく落ち着かない隊長の行動が妙な可笑しさを醸し出す。蛇足だが、この一連のシーンでは、トミオカ長官&ヨシナガ教授がDASHの面々と同じフレームに収まっているショットがなく、スケジュール的な問題で編集処理となったのではないだろうか。

 さらに可笑しいのは、バッドスキャナーズのコンサートに踏み入ろうとするシーン。チケットを持っていないことを咎められ、さらにミズキが持っているチケットで入場しようとすれば後ろに並べと注意される。ここで素直に後ろに並ぼうとする姿が爆笑モノ! そのあとの、カイトがUDF法を持ち出して緊急事態に対応するという行動が秀逸なだけに、尚更可笑しい。

 そして、最大限に弾けるのが、バッドスキャナーズとの対話シーン。マイクを奪って「演奏を止めてください!」に始まり、ギタリストとの「おっさん」の応酬! さらに、ヘイレンの動きを止める為に再演奏を依頼するときの言動がブッ飛んでいる。「君たちの音楽が、地球を救うんだ!」「もっとハードにっ!ハードにっ!」このセリフだけでも相当なものだが、ヘンなノリ方も凄まじい。このノリは、エンディングにおける司令室のシーンにもそのまま持ち越される。バッドスキャナーズを演じた「ACTION」のメンバー諸氏のユーモラスな演技にも注目したいところだ。

 このように(隊長が)楽しすぎる本編だが、対比させるように、カイトの冷静で的確な判断力がクローズアップされているのが面白い。ミズキに「冷静なのね」とクサらせた冷静振りは、これまでのエピソードで見られなかった新しい魅力だ。

 一方、アナログ特撮にこだわりを見せた前回とはガラっと変えて、今回はデジタル特撮にこだわりを見せている。空中戦の多いヘイレン関係のシーンでは、CGがふんだんに使用された。超音速のスピード感はCGならではのもので、空気が歪む効果で存分にヘイレンのスピードを見せている。また冒頭のβのシーンは、恐らくミニチュアは作られておらず、CGモデリングのみ。それでも試作機としての存在感は充分だった。

 マックスとのバトルシーンでは、マックスの余裕に満ちた行動がコミカル。この妙な自信が覆され、空中で遂に大ピンチに陥るところは、A~タロウあたりで散見されたパターン。こういうユーモアのスパイスはもっと歓迎されるべきではないだろうか。

オマケ

 ショーンの使える英語シリーズ? 「Eat this!(喰らえっ!)」「That's it!(そーだっ!)」が字幕に登場。前回より登場した字幕、どうなるかと思いきや、ちゃんと今回も登場! 今後登場した場合、このオマケコーナーでご紹介。

 マックスがヘイレンの熱線を防御するためにバリアを張るが、このバリアの効果が、初代マンがジェロニモン戦で使用したリバウンド光線にそっくり! シリーズファンならば、ノスタルジーに胸を熱くしたはず。