忍びの20「ザ・超絶!ライオンハオー」

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 正当派パワーアップ編の後編!

 実はシリーズ構成という観点からすると、忍タリティに全く言及されないといった齟齬も生じているのですが、そんな事は些細とばかりに迫力ある構成で見せてくれます。

 とにかく、獅子王と鉄之助、そして天晴の丁々発止のやり取りが緊張感を伴っていて素晴らしいです。アカニンジャー自体のパワーアップ、キンジの弟子(見習い)入り、チームプレーの見せ場等、次なるステージへのステップもしっかり盛り込んで、ますます盛り上がっていますね。

雑賀鉄之助

 鉄之助は、今回の主役の一人と言っても過言ではないでしょう。

 というのも、今回は天晴のパワーアップ編でありながら、天晴自体は特に成長したとか、そういった要素は殆どなく、いつもの天晴に「気付き」が加わったに過ぎないからです。

 一方、鉄之助は、数々のオトモ忍を創造した偉大な先代と比較され、獅子王には一人前と認められていませんでした。今回、超絶勝負チェンジャーを差し出した事で、一人前のカラクリ技師である事を認められたわけです。そして、その超絶勝負チェンジャーを使える人物たる天晴こそが、彼にとってのキーパーソンとなります。

 超絶勝負チェンジャーを始動させる為には、獅子王の力が必要。つまり、獅子王に天晴達と共に戦う事を認めさせる必要があるわけで、正に、天晴と獅子王とが手を握るよう働きかける事こそが、鉄之助が一人前になる為の試練でもあったという論法の面白さ。スルスルともつれた糸が解けるような、それでいて一つ一つの要素がちゃんと説得力を持って提示される明快さが魅力です。

 またここでは、天晴を「説得」するのではなく、体術を用いて「気付かせる」という展開が熱いですね。鉄之助にも基本的な忍術の心得があるようで、スリムなシルエットに似合う身軽なアクションが、彼のキャラクターに合致していました。

獅子王

 人々を護るという使命感は獅子王にはなく、またシノビマルやロデオマルといったオトモ忍達のように純真なわけでもないので(何しろ、精霊が酒を常にあおって悪態をつく「オッサン」ですから・笑)、初めて天晴達はオトモ忍と「交渉」しなければならなくなったという事です。それは即ち、オトモ忍が「桃太郎についているお供の動物達」ではなく、「水戸黄門に登場する忍者」に近い存在だと示す事になりました。

 いやはや、例えが実に分かり難いと自分でも反省しているのですが、「水戸黄門」の忍者達、例えば風車の弥七とか、疾風のお娟(かげろうお銀)、柘植の飛猿といったキャラクターは、光圀に恩義があるとは言え厳密には家来ではないわけで、特にお銀に至っては元々刺客として登場した経緯もあり、彼等の関係性は厳密に定義された主従関係からは外れた処にあるわけです。

 前回、獅子王が協力を固辞した理由は、好天、あるいは天晴が構えた「思想」にありました。この「思想」こそが主従関係を強いるものであり、自意識の強い獅子王にとっては苦痛以外の何物でもなかった筈。今回出て来た答えは単純明快で、「一緒に暴れられるヤツを待っていた」というものでした。一緒に暴れる(戦う)事で互いを高め合う事が出来る...という論法は、正に少年マンガの論法そのもので、獅子王のようなキャラクターに付加する説明としては、一級の分かり易さになったと思います。

 果たして、ライオンハオーはニンニンジャーと共に戦う事となり、アカニンジャーには新たなフォームが付加させる事となりました。ここからの盛り上がりは、それまでのスタティックな展開とは一点して、とにかくダイナミック。強力無比な実力を存分に見せつけてきたヌエを、一気に追い詰めていく様子はカタルシスに溢れていました。

天晴

 「天晴はバカ」だと、自分が認めてしまう衝撃(笑)。それは置いておくとして、獅子王の指摘を元に、天晴は自分のポジションを再確認する事となります。

 こういった「再確認モノ」はパワーアップ譚の常套句ですが、よりこれまでの要素を反芻している感覚が大きいという点が今回の特徴だと言えます。

 頭脳派コンビ、スピード派コンビ、強力な一匹狼といった面々は、猪突猛進する天晴を見て一旦考える暇が与えられる事によって、その長所を発揮出来るようになるというロジック。これはそれまでのエピソードのアクションの組み立て方からしても納得出来るもので、スクリプトだけではない、現場を巻き込んだシリーズ構成の緻密さを感じさせるものとなりました。まあ、逆算した可能性もありますが、それでもアクションの統一感がないと到底納得出来るものではないわけで、テーマをちゃんと決めて組んでいたという事になりますよね。

 改めて、天晴が特異なリーダーである事を示す流れとなりましたが、その結果として登場したのが、「アカニンジャー超絶」でした。前作でもハイパー化がありましたが、メンバー全員が可能なパワーアップだったので、今回は果たしてどうなるのか。私としては、レッド偏重だと批判されようと、アカニンジャーだけの特権にして欲しいとは思っているのですが。やはり、獅子王と一緒に暴れられるというイメージは天晴以外にはそぐわないような気がします。

 なお、レッド偏重といえども、今回は処理が実に見事だったと思います。

 最初はあまりの強さに呆然と観ているしかない八雲達でしたが、その様子をわざとフレームに収めて強調し、改めて天晴のいわゆる「イケイケドンドン」に触れて自分達の為すべき事を為すくだりが熱い。しかも、往年の、特に「ゴーグルファイブ」辺りを彷彿とさせるコンビネーションを見せるアクションがアカニンジャーをサポートし、それがアカニンジャーを更に強力にするという図式が、きちんと描かれています。今回のテーマに沿ったアクションがより強調されていて良いですね。

ライオンハオー

 もう山形さんの歌のインパクトが強すぎて...(笑)。

 それはともかく、アカニンジャー超絶をそのまま胸部に座らせるという、戦隊史上類を見ない挑戦的なスタイルが正に「超絶」でした。さすがにシノビマルのような細かい動きをさせるギミックはありませんが、カット割りの巧さでちゃんと実在感が伴っており、インパクトは非常に強いです。

 ライオンハオージョウ自体は戦隊母艦のような出で立ちでしたが、ロボ時はこの独特のスタイルによってスケール感が変わってしまうのはご愛敬。他のオトモ忍やロボと並んだ時に、どのくらいのボリュームなのかがちょっと分かり難いですね。早く並んでいる処を見たいです。

次回

 今回のエピローグでは、十六夜九衛門が新しい幹部を復活させようとしていました。クール単位としてはやや中途半端な話数ですが、やはり今回で軽く一区切りなんですね。

 次回は高校野球シーズンという事なのか、野球がフィーチュアされるようで、「ゴレンジャー」の野球仮面の話とか、「ダイレンジャー」の三バカ野球といった、楽しい話を期待したいと思います。