忍びの31「ニンジャ逃走中!」

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 公式サイトの事前情報では、霞の「変化」がクローズアップされていたのですが、何と実は凪編だったという意外なエピソード。

 凪が先行して会得していた上級シュリケン忍法をテーマとし、子供の遊びの定番である「鬼ごっこ」を絡めて楽しいドタバタ劇としつつ、駆け引きのスリルやテンポの良さをも盛り込んだ快作となっていました。

 そして、ラストではニンニンジャーの危機が描かれるという驚きの展開も。段取りの良さが見事です。

ムジナ

 劇中では常にタヌキ扱いされるというギャグが。ムジナ自体、あまり馴染みのない動物だと言えますが、「同じ穴の狢」といった句ではお馴染みの存在です。

 デザインとしては、やはり十六夜流忍者の流れを踏襲して、モチーフとなったムジナの頭部を印象的に配した忍者装束となっています。ただし、これまでの「モチーフそのままをくっつける」という感覚よりは、ムジナを象った兜を被っているという印象に振られていて、より機能性を追求しているように思えます。ちょっとインパクトが弱いですが...。

 主たる能力は「イイトコドリの術」とされており、ターゲットとなった人物から「良いところ」を抜き取るという、戦隊によくある「やる気や正義感の抜き取り」の翻案となっています。この能力自体は十六夜流忍者の中でも突出して面白く、やはり戦闘能力自体はあまり印象に残らない中にあって、ニンニンジャーに焦りをもたらしたという点で優れていました。

 声が楠大典さんなので、妙にヒロイックな感じで見た目とのギャップを生じているのもいいですね。

逃走中?

 一応「忍者鬼ごっこ」と題して、「良いところ」の争奪戦を繰り広げる展開なのですが、今一つピンと来ないというか、鬼ごっこと題する必要があったのだろうか...と思ってしまいました。

 また、「逃走中」というサブタイトルから、某バラエティ番組(私自身はこの番組のノリがあんまり好きではないのですが...)のパロディを期待して見ると、結構な肩透かしを食らいます。一応、「脱落者」がケージの中に入れられているという画は登場するものの、絶対的なハンターは存在しませんし、敵とはガッツリ戦っていますので、かなり雰囲気は異なります。まあ、とりあえず他局ですから仕方ないですかね(笑)。

 今回、「イイトコドリ」の最初の被害者となった霞。事前情報として割と派手にフィーチュアされていた印象なので、かなりの派手なキャラ崩壊を期待していましたが...こちらもやや肩透かしでした。

 霞の「良いところ」は、一応「冷静で頭が切れる」というトータルイメージ通りのものでした。それを取り上げられた事で、ボヤッとしたフワフワ系の女の子になる辺りは、なかなか魅力的。面白いのは、丁寧な口調が変わらない事で、「あまり物事を深く考えない人が丁寧な口調で話す」という、どこかの萌えキャラの典型のようになっていましたね。山谷さんの巧さなのか、これがピッタリはまっていたのには驚きました。

 一方で、霞の元々の設定にあった「空気の読めない発言」が表面化していたのも新鮮でした。普段は丁寧な口調と冷静な切れ者描写の方に重点が置かれている為、元来の毒舌キャラがなりを潜めていたという解釈が妥当かと思います。今回は、八雲やキンジがヘコむような事を簡単に言ってしまうシーンに、その辺りが生かされていました。

 また、「助けられるヒロイン」からはほど遠い霞が、今回はそのポジションに居た事になり、その構図自体にも新鮮味がありましたね。裏を返せば、普段の霞がどれだけ優秀かという事が伺えるわけです。

Smartな天晴

 霞の「良いところ」が天晴に命中して、天晴に霞の賢さが宿るという、「キャラ替え」パターンまでも登場。他のメンバーのものも入れ替わって大混乱になるかと思いきや、とりあえずは天晴のみ。今回は実際の雰囲気がそこまでドタバタではなかったので、これはこれで正解だったように思います。

 天晴自身も一応「イケイケドンドン」を奪われているので、頭の切れる天晴は、慎重派な上に理論派という素晴らしい参謀振りを発揮。このクールなリーダー像の天晴が異様に格好良いのは否定しがたい(笑)。実は熱血おバカキャラよりも、こういう役の方が合っているのではないかと思わせる部分さえありましたね。

 ちなみに、風花は今回、ほぼこの「賢い天晴」のツッコミ役に徹していました。

 そしてメインで活躍するのは凪。

 凪は上級シュリケン忍法を先んじて会得していた為に油断し、いつの間にか他の面々に追い越されていた...という設定。とはいえ、上級シュリケン忍法自体がコミカルに描かれるものなので、プロローグでの描写はそれほど焦りを感じさせず。この辺りはあくまで味付け程度でした。

 ただし、追いかける立場から先行する立場へ抜き出る事の大切さを感じた凪が、素晴らしい逆転劇を演じるのですから、例えコミカルで薄味だったとしても、ちゃんと機能している辺りは見事です。

 このところ、凪が主たる活躍をするエピソードでは、どのメンバーよりも成長振りがアピールされるようになっており、さながら「シンケンジャー」の千明のような優遇を見る事が出来ます。作戦を立てたのが天晴(霞の頭脳)だったとしても、今回は凪の優れた能力がなければ遂行は成立していないわけで、彼の潜在能力の高さと適応力の高さが伺えるものとなっています。

八雲とキンジの良い処...

 完全なるギャグ要員扱いとなった八雲とキンジ。

 八雲の良い処は「魔法が使える事」。魔法を奪われた八雲の狼狽振りは凄まじいもので、霞の「魔法だけ」という発言にヘコみまくり。

 一方のキンジは「ヘンな日本語」。八雲より更に可哀想な扱いになっていましたが、これが本質というわけではないので、あくまでギャグの一環として捉えておくべきでしょう(...と真面目に論じているのも可笑しい)。

 欧米コンビは踏んだり蹴ったりでした...。

カラクリキュウビ

 実は十六夜流忍者達は、このカラクリキュウビを誕生させる為の、文字通り「歯車」に過ぎなかった...という、十六夜九衛門の悪辣さを描く設定が素晴らしい。十六夜流忍者達は巨大戦で瞬殺される憂き目にあっていますが、それらも能力分析(攻撃耐性を得ると言ってましたが)の為だという事で、否めない戦力の弱さに、注釈を付けている辺りが面白いですね。

 カラクリキュウビは、どう見ても「ファンネル」に見える武器を飛ばしていて、ああ、これは十六夜九衛門役の潘めぐみさんに関する楽屋ネタなんだな、と(笑)。潘めぐみさんのお母様である潘恵子さんが「機動戦士ガンダム」でファンネルの原形である「ビット」で攻撃する役を演じておられましたので。まあ要するにララァ・スンですよ。この辺りは説明不要ですかね。

 このカラクリキュウビが、次回への引きになっています。割とギャグテイストが強い話だったので、このような危機描写で終わるのは、逆に強いインパクトを感じさせるのに有効でした。カラクリキュウビ自体のデザインも怪物然とはせず、むしろ曲線美を擁したヒロイックなまとまりになっていて、衝撃を受けました。

次回

 好天が現場に! 新しいオトモ忍! 雑賀鉄之助!

 といった具合に、またまた「ニンニンジャー」の一区切りを為すエピソードになりそうです。同時間帯では「仮面ライダーゴースト」も始まるので、色々と楽しみですね。