忍びの4「でたゾウ!パオンマル!」

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 一気にこなれてきた感のある四話目です。しかも、早くも新メカを出す辺り、今シーズンの展開への意気込みが感じられます。

 新メカを入手する為に五人が探索、あるいは奮闘するといった、新メカ登場編としてのパターン自体はあまり踏襲されておらず、むしろ天晴編の側面が強かったように思います。

 「ニンニンジャー」の雰囲気を象徴するような、「ユルめの説教」が何とも微笑ましく、またもや好天のキャラクターにグイッと引っ張られているような印象がありました。

ツチグモ

 冷蔵庫と土蜘蛛がモチーフの妖怪が登場。糸で絡め取って人を食らうというトータルイメージを、冷蔵庫の内部に閉じ込めるという能力に転換した秀逸なアイディアが光ります。

 怪人の体内に閉じ込められる話は意外に多く、私なんかは「デンジマン」のサキソホンラー辺りがすぐに思い浮かぶのですが、劇中では大抵「食われた」ではなく「閉じ込められた」と解釈され、誰も体内で無事なのを疑わないんですよね(笑)。今回もその伝統は健在で、天晴が通信を送って来るわけでもなく、誰も生存を疑っていない。視聴者もそれに慣れちゃってるという(笑)。それにしても、「デンジマン」当時にサックスの怪人を出すというセンスは凄いと思います。

 話が逸れました。

 さて天晴を飲み込んでしまった今回のツチグモ。いかに天晴を助け出すか...という順当な展開を呼ぶ事になりますが、その辺りについては後述。

 一方、ツチグモが敵側のメインとして動くので、蛾眉雷蔵は事実上お休み。冒頭では相変わらず牙鬼幻月の復活に興味なし。エピローグでは、十六夜九衛門の「妖怪のある処にニンニンジャーあり」という言に丸め込まれ、幹部としての職務(?)に興味を抱くという感じになり、蛾眉雷蔵を少し動かしやすくする段取りがあった事に驚きつつ笑ってしまいました。こうして見ると、十六夜九衛門は相当な策士ですねぇ。とても良いキャラクターだと思います。

突出する天晴

 一話からこの傾向を引っ張っていますが、今回ははっきりと「四人が天晴に追い付いて均衡を得るまで、天晴はお休み」というくだりが登場します。

 ただ、これまでの話では、状況的にそういう傾向があるという風に匂わされる程度で、アクション演出等では特に突出しているようには見られませんでした。今回は、一人で飛び出して戦況を一変させる程の実力を発揮するシーンがあり、前回から今回までで急激に成長したような印象すらあります。

 冒頭のシミュレーションのシーンでは、その傾向が特に強く出ていました。このシーンは、八雲が考案する作戦で、多数の敵にどう対処するかを訓練するものでしたが、天晴の一閃で終わってしまいます。勿論、主眼は天晴の自分勝手な行動なのですが、むしろ天晴の素晴らしい能力の方に注目してしまいますよね。

 とりあえず、このシーンで天晴の突出した能力を描いて画的にそれを肯定したのは正解。後のツチグモ戦でその自分勝手さが危機を招く...というくだりが生きるからです。

おでんと好天

 今回は何故か好天がおでん屋の親父に化けていて、一緒にツチグモの中に吸い込まれるという展開になっています。

 恐らくは、口で言っても聞かない天晴に、何とか身体で覚えさせようとした好天の策なんでしょうけど、妖怪までも利用してしまう好天の凄さには驚きですね。

 笹野さんの演技の幅の広さをまざまざと見せつけられるシーンでもありました。おでん屋の親父は、変装もさることながらドスの利いた喋りで、一見して好天であるかどうかを見破る事を難しくしています。

 正体を現してからは、その飄々とした魅力が全開になり、気の逸る天晴をなだめる姿には「優しいおじいちゃん」という雰囲気までも備わって素晴らしかったですね。まだまだメインキャスト陣の芝居が硬いので、笹野さんが画面に出てくるとパリッと締まる感じがします。

 天晴を諭す方法もユニークで、好きなたまごばかり食べる天晴に、わざとたまごがなくなったと言い、他のタネを食べさせるというもの。天晴の食べ方が実に美味しそうで巧く、画面に説得力がありました。主役(たまご)以外にもそれぞれ美味しさがあって、それぞれが他のタネの味を引き立て合うという論。それがチームワークの大切さへと結びつく辺り、強引なのか分かり易いのかというギリギリの線が実に楽しいです。

 わざわざCGで「おでん戦隊」のカットを作ってしまったのも悪ノリっぽくていいですね。何だか自然に馴染んでいて凄いです。

 そうそう、おでんと言えば、「シンケンジャー」のおでん合体を思い出しますね(笑)。

脱出劇

 今回が正真正銘天晴編である事を証明してしまったのが、脱出劇のくだり。

 ストーリー上はチームワークの大切さを謳っていますが、残念ながらこの脱出劇が鮮烈だった為に、あまり徹底されているとは言えないんですよね。

 八雲が立てた作戦は、話を聞く限りはかなり実効性のありそうなもので、正直それによる脱出劇を期待していました。好天の「説教」も「果報は寝て待て」といった雰囲気で、とにかく落ち着いておでんを食べてみろという感じだったので、ああ、天晴は仲間の救出を待ってチームワークの大切さを本当に学ぶんだな...と思っていました。

 ところが、天晴は居ても立ってもいられなくなって、好天の忍術を借りて一人(二人)で脱出!!

 あぁ、やっちゃったな...と思いましたね(笑)。

 やっぱり天晴って凄いヤツじゃないか、突出してるじゃないか。それを再認識させられたという...。

チームワーク

 脱出後、ツチグモとの決戦となりますが、ここで天晴は突如おでんの話をし始めて、チームワークの重要性についてを語り始めます。八雲達が何とか助けようと奮闘していた事はほぼ忘れ去られ、今度はやはり天晴の突出した天然力がチームを引っ張っていくのです。

 アクション面では、見事なチームワークを描写しており、充実度、満足度共に高いものでした。ゴレンジャーストームを彷彿させる必殺技も素晴らしい描写でしたね。

 これらの描写を見ると、ああ、天晴は仲間に頼るんじゃなくて、「俺が前に出るから一緒に来いよ」的なリーダーなんだな...と気付かされます。一人で脱出してしまうのも、「自分が一人であれこれ突っ走ってやってしまうのはここまで」というケジメにも見えてきますし、この展開はこの展開で天晴らしく、アリだなと感じました。

パオンマル

 前回、十六夜九衛門が封印の手裏剣からガシャドクロを生み出した事は、今回の封印の手裏剣の「使い方」への段取りになっていて面白いですね。

 忍タリティを高めると、手裏剣がガジェットになるという設定にはワクワクさせられるのではないでしょうか。そして、妖怪にとっても「利用」が可能であるという二面性。諸刃の剣であるが故に...という辺りは後述。

 パオンマルですが、今回は動物モチーフが非常に可愛らしいですね。ガネーシャ神をモチーフにしている感じで、もう本当に何でもありですよね。忍術とまるで交わらないですもん。

 迫力満点の発進シーン、象らしい玉乗りだとか、そういった描写も素晴らしくて見入ってしまいました。

 シュリケンジンパオーンへの合体は、誰か一人のメカが余るという慣例を打ち破ったもので、ちゃんと余剰なしで合体しているのに感心しました。ドラゴの時もそうですが、胸部が変わる事で印象がガラッと変わるアイディアがいいですね。大抵の換装合体は手足だったので、新鮮に映ります。

忍タリティ

 今回は、チームワークの重要性に気付くという点が、忍タリティの高まりへと結びついたようです。さすればやはり、忍タリティとは忍者としての戦力のバロメータというよりは、もっと心構えに近いようなものなんでしょうね。

 という事で、今回に関しては「トータリティ」からの連想という結論を置いておこうと思います。天晴がチームとしての統率を気にするようになったが故の、パオンマル誕生だったという事で。

 先程の「諸刃の剣」論についてですが、忍タリティがより健全な精神を目指しているように見えるのは、封印の手裏剣が「佳き心」で使われなければならないという事の現れではないかと思います。

雑感

 チームワークに関するストーリー運びにはやや難有りとする処ですが、トータルとしては非常に面白かったと思います。何と言っても天晴の天然さがいいです。そこに絡んでくる好天のキャラクターも抜群で、その辺りに関しては言う事なしですね。

 新ガジェットも良い感じの描写。毎回、特撮が物凄く凝っていて楽しいです。

 そういえば、全然今回の本編と関係ない気付きですけど、アカニンジャーのマスクデザインって左右非対象なんですね。微妙なアシンメトリーなので、バトルジャパン程のインパクトはありませんけど、結構驚きました。

 次回は霞編。学生であるという状況を活かした話作りは大変だと思いますが、期待したいと思います。