第13駅「走れ消火器」

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 君の考えた最優秀怪人ショオカキング!

 ってのがありましたが(「仮面ライダースーパー1」)、それに近いインパクトを持つサブタイトルですね(笑)。

 サブタイトルのユーモラスな印象は、そのまま本編にも受け継がれ...るわけではなく、新サポート烈車登場エピソードの割には意外と地味な雰囲気でした。予告で煽られた「ライト VS ミオ」も結構あっさりしていて、ミオ大爆発を期待した身にとっては、う~むな感じ。

 ただ、「トッキュウジャー」におけるミオの在り方を、巧く活写していたのは好印象です。今回の脚本は、メインライターである小林靖子さんの担当ではなく、大和屋暁さんの担当。設定は言わずもがなですが、テーマ性に至るまで遺憾なく掬い取っての仕上げには、丁寧さが感じられました。

 まず、今回のライトは、いつもの調子をさらに強調した、言うなればカリカチュアライズされた感覚で立ち回っていました。

 元々、自分の道に迷う事もなく、周囲はライトが突き進む道を、「何だろう?」と好奇心を持ちつつ後から付いていくという感覚が横溢している本シリーズですが、今回はそれを少しだけ「脱線」させて、ライトを本線、ミオを支線といった感じで進行させています。

 ライトは、今回発見する事になるファイヤーレッシャーを、自らの直感に従って探索しており、それは正に直進の果てにある目的達成なのですが、その直進路が見え過ぎているが為に、途中で寄り道もしているわけです。それが、「ご当地名物食べ歩き」であり、ミオが腹を立てる発端となった行動に他なりません。

 結局、ミオの苛立ちは、ライトが食べ歩きに集中していて、今回の怪人であるルーペシャドーの事等お構いなしになっている...との誤解から生じていました。実際のライトの興味はファイヤーレッシャーにあり、ライトの想像力は、ファイヤーレッシャーの発見が即ちルーペシャドーの一件すら解決する事まで見通していたと考えられます。オチとしてミオの懸念通り、食べ歩きにも執心していた事がエピローグで語られ、それがライトの「胃袋で物事を考える」というキャラクター性を大いに、コミカルに強調するに及ぶのは見事でした。

 ミオをベースとして観れば、今回は誤解とその解消というオーソドックスな筋書きに則っていたという事になるかと思います。しかしながら、「解消」のプロセスは、ライトがファイヤーレッシャーを使ってルーペシャドーを撃破するといった、簡素な構成によるものではなく、もっと精神的なものになっている事に気付きます。

 その解消のプロセスは、「ミオに任せる」と丸投げするライトに、幼少期の記憶を重ね合わせる事で、ライトが何かに集中している時は、自分が周囲に関して面倒を見るという結論に至る...というもの。そして、多少強引なロジックだとは思いましたが、ミオを手放しで信用しているライトに、自分も答える(=街の火災はライトが何とかしてくれると信用する)事で、事態を収拾していく構えを取るのです。

 ここでは、幼少期の記憶の断片を得るという、「トッキュウジャー」の縦糸の一つを巧く使いながら、現在のメンバー同士の結束の在り方を少し前進させるという、見事なストーリーテリングが効いており、グッと来るものがありますね。また、「多少強引なロジック」でも、ライトの強いイマジネーションが信頼するミオに伝播する事によって、ミオも事態解決のビジョンが見えたとの解釈も可能な、ナチュラルな画面作りに注目しておきたい処です。

 それにしても、ミオの言動には魅力がありますね。今回はかなり怒っているという設定なのですが、何となく当初からライトを許してしまう雰囲気が出ている感じで、とても不思議です。

 2クールに入り、いよいよミオの「世話焼き」キャラが具体化したという事なのか、「世話焼き」という言葉から連想される「口うるさい」というイメージよりも、むしろ「気配り上手なお姉さん」というイメージが強調されています。これは、チケット君が割と口うるさいキャラクターであるが故に、役割分担が行われた結果だとも考えられますが、それよりもキャストの雰囲気でキャラクターが転がったと考えた方が、しっくり来るでしょう。

 それでも、ミオのシャドーラインに対する毅然とした態度には硬質感があり、特にあの大きな眼で睨み付けるような眼力には戦闘系ヒロインの風格が充分過ぎる程備わっています。故に今回のトカッチ、ミオ、ヒカリのトリオには、そのカラーリングも相俟って硬派な印象が漂っていました。スーツアクションも、サーカス風のアクロバットを取り入れた素晴らしいものでしたね。飛び降りで1.75回転して受け止められるシーンにはゾクゾクしました。

 この硬質感を確実に和らげているのがカグラの存在で、今回もライトのお目付役を任されつつも、単にライトの行動に付いていくのが精一杯という可愛らしさ。ライトは予測不能な行動でカグラの推測の斜め上を行き、苛立つミオにカグラはオロオロします。しかし、彼女は結局、ライトの行動に目を輝かせつつ同行しており、その子供っぽい好奇心に溢れた表情に癒やされてしまうわけです(笑)。

 二人のヒロインは2クール目に入ってようやく見事なコントラストを発揮し始めたように感じます。元々の設定自体にコントラストは付けられていましたが、脚本、演出、演技といった要素が見事に噛み合い始めたのを感じる事が出来ました。

 さて、シャドーライン側にも少々動きが。と言っても、シーン自体はごく短いものですが、ゼットにすっかり気に入られてしまったグリッタ嬢が、シュバルツに「今はご辛抱です。あなたのお気持ち、いずれ」と告げられるという、やけに重要なシーン。これは今後の展開への引きなのでしょうが、正直、トッキュウジャー側の人間模様よりも、こちらの方が引きが強くて困る(笑)。

 そして、ファイヤーレッシャー。超トッキュウオーはやはり「アドリブ」的な合体で、烈車への負担が大きいという設定。この設定によって、ファイヤーレッシャーを擁した巨大戦にも自然に誘導されています。

 ファイヤーレッシャーによる消火活動のシーンは、街の精密な俯瞰セットと、実景のCG合成とを巧みに繋いでリアリティある風景を創出。戦隊で消火活動が描かれるのって、何年振りでしょうか。

 ディーゼルオーファイヤーの形態では、火炎攻撃と消火活動が両方行えるというコミカルな設定になっていて、やや尺を長めに取られた巨大戦を豊かに彩っていました。このような「実践的」な機能を有したロボットの登場は、幼児層にガッツリアピールするのではないでしょうか。やはり、リアリティって必要ですし、燃える要素なんだなぁ...としみじみ感じた次第です。

 次回も、大和屋暁さんの担当となりますが、今回よりもグッとコメディ度が増しているようで、楽しみですね。ヒカリの新たな一面を開拓してくれそうです!