第14駅「迷刑事、名探偵」

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 前回とは打って変わってナンセンスギャグ道を邁進したエピソード。

 面白い...面白いんだけど、ちょっとやり過ぎではないか(笑)。

 そのやり過ぎ加減は、「アラフォー以降しか分からない」パロディの連発として現れ、それは、明らかにその世代ではないヒカリをはじめとするキャスト陣の戸惑いとなって、画面から滲み出ていたようにも見えます。

 当然、関根さんの細かいネタはノリノリで楽しかったですけどね!

 今回のゲストは、私の世代としては「コニタン」という愛称が印象の中心にある小西博之さん。強面のちょっと困った暴走刑事役という、小西さんの役柄としてはやや珍しいタイプですが、見事にハマっていました。取手権左衛門という、完全に浦沢義雄風味なネーミングも奇抜。刑事の行動としては明らかに常軌を逸しているというか、むしろファンタジーなので、リアルな日常にハイブロウな非日常が到着する「トッキュウジャー」の世界においては、異端に属すると思います。

 この取手刑事の行動に関しては、ツッコミを入れようにも入れるポイントが有り過ぎて何だかなぁ...な感じなのですが、そういう世界なのだと割り切って観るのが正解。「ロボット8ちゃん」のバラバラマンのような架空のお役人というニュアンスで捉えた方が良いでしょう。ただ、最初の逮捕が現行犯でも何でもなく、「絶対逮捕状出ないだろ」というシチュエーションだった上、ライト達が疑われる要素が皆無だったので、その後のストーリー展開に今一つノれなかったのも確かな処ですね。せめて任意同行なら...(笑)。

 まぁ、きっかけもそんな感じに適当で、しかもライト達が釈放されるに至っては、ヒカリの探偵行為とは関係なく、「犯人」が堂々と犯行に及んだという事がきっかけになっていて、こちらも高田純次風の適当。この辺りが「ナンセンス」の真骨頂ではあります。取手刑事自身は「犯人」を目視してないし!!

 ちなみに、取手刑事が「ボスと呼ぶな」というセリフを何度か披露していますが、これは小西さんがヒュウガ隊長として出演した「ウルトラギャラクシー大怪獣バトル」において、「ボス」と(強制的に)呼ばせている事の、丁度裏返しとなっています。意識したかどうかは不明ですが、特撮ファンにとっては面白い趣向だったのではないでしょうか。なお、今回は代わりに車掌さんが「ボス」になりきっていたので、混乱を避けた...?

 車掌さんの話が出た処で。

 今回の関根さんのネタは「もっと観ていたい」と思わせる素晴らしいものでした。勿論、子供達には伝わってないと思いますが、その「伝わらない」すら関根さんにとっては褒め言葉でありましょう(笑)。

 軽く古畑任三郎でジャブをかまし、その後は七曲署のボス(石原裕次郎)を思わせる表情やセリフ回しで、コメディの部分をグイグイ牽引していきます。今回はチケット君が(山口勝平さんの芸風の一つである)アドリブっぽいツッコミをかなり挟んでいて、より一層面白味が増しています。ブラインドから覗き過ぎたり、異様に巨大なブランデーグラスを傾ける様は、芸人のゆうたろうさんのネタでしたけど(笑)。

 古畑含め、今回の「太陽にほえろ!」テイストは、前述の通り明らかにアラフォー以降がターゲット。もしかすると、車掌さんを除いてヒカリの奔走振りは、子供達の目には「一生懸命事件を捜査するヒカリお兄ちゃん」にしか見えなかったのかも知れませんね。

 「けん玉」と車掌さんに呼ばれるヒカリは、「太陽にほえろ!」におけるニックネーム常用の洗礼にまず晒され、その後、BGMが響く中で聞き込みを行い、走り、走り、走り、時には投げ飛ばし(!)、正にマカロニ、ジーパン、テキサス、ロッキー、ボギー...といった歴代新人刑事の如きイメージで各シーンに登場します。そのBGMは、この回の為だけに設えられたと思しき、「太陽にほえろ!」の良質なパロディになっていて、この辺の徹底振りには良い意味で呆れてしまいますね。

 この徹底振りをよそに、ヒカリの捜査自体は殆ど意味を成さず、ソウジキシャドーに出くわすというくだりで犯人の目星が付きます。もうその時点で推理も何も意味を成さないのですが、敢えてヒカリを探偵になりきらせて、盗まれた物品から同一犯である事を推理するという、実にナンセンスで回りくどい展開が待っています。いわば、そのナンセンスさ、回りくどさこそがコメディとして表現されているわけです。しかも、その推理の結論はソウジキシャドーという人にあらざる者が犯人であるというものなので、当然市井の、想像力のない取手刑事には理解出来ません。ヒカリのノリは何もかも徒労に終わるのでした。

 ただし、その後は頭脳明晰なヒカリらしく、「光り物」を求めて寿司屋で張り込みを行い、わざと泳がせて尾行し、アジトに辿り着くという、敏腕刑事モノの王道を見せてくれました。まぁ、何故寿司屋だけをピンポイントで予測出来たのかに関する理由は皆無ですけど!

 アジト(?)でのアクションは、前半での家電量販店と思しき場所での立ち回りに匹敵するインパクトを持っていました。建造物を効果的に使ったスピーディでアクロバティックなアクションには、様々な挑戦が垣間見られて良い感じです。全体的にユル~いエピソードの中で、真にキラキラなポイントだったと思います。

 あとは、ポリスレッシャーの登場がトピックとしてあげられますね。こんなギャグエピソードの中で新烈車を出してしまうのがある意味凄い。一応、今回はポリスレッシャーのモチーフから企画として立ち上がった話だと思われますが、発見の仕方も実に「テキトー」で、警察とかそういった劇中の要素が殆ど関係なくて唖然としてしまいます。

 そんな感じで、ポカーンとしたまま終わってしまったようなエピソードでしたが、総じて画面作りの職人芸には素晴らしいものがありました。ヒカリのキャラクターを掘り下げたかと言われると、完全にそれは「否」でしょうなぁ...。とりあえず、時と場合によってはカグラ並みになりきり趣味が発露するという「奥行き」は加わったように思います(笑)。

 次回は人気のグリッタ嬢をフィーチュア。脚本は會川昇さんの担当ですね。どのような味付けが為されるか楽しみです。