第15駅「心の中にあるもの」

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 ミオのイマジネーションに関する意外な面が描かれる一編。バラエティ編の体裁をとりつつも、ミオに関して、そしてグリッタ嬢に関しての重要なトピックを擁し、會川昇さんさすがのお仕事といった処。

 マイッキーなるシュウマイのゆるキャラは、そのデザインや造形、ミオ幼少期のぬいぐるみに至るまで実にリアルで、言われなければ実在するゆるキャラのような存在感。ケロロで有名な渡辺久美子さん(私としてはカテジナさんを推したい処・笑)の演技もハマリにハマっていました。

 ミオのイマジネーションは、五人の中ではやや見劣りする事が折に触れて語られてきたわけですが、今回は怪しげな「イマジネーション測定器」によって、そのスコアが数値化され、遂にミオのイマジネーションの「低さ」が明確になってしまいました。コンプレックスを露わにするミオの表情がまたいいですねぇ...。

 この「イマジネーション測定器」の素晴らしい処は、いかにも関根さんが用意したかのような「曜日対抗」的なテイストでしょう。どう見てもテクノロジーの欠片すら感じられない(一応それらしく・わざとらしくデコレーションしてある)、ただのパター練習マット! しかも、測定を受ける五人はいわゆるゴルフスタイルで、ノリの良さは抜群。それぞれのコーディネートは個々のカラーを反映させつつキャラクターにもピッタリとマッチしていて、ミオとカグラは眩しい限りでしたね(そこかい)。

 さて、測定方式はともかく五人の中で最低のスコアを出したミオ。この辺りはこれまでの流れから自然に導き出される結果なので、意外性もなく自然です。ところが、ヒカリの弁によればミオはイマジネーションを抑える事が出来るのではないかと。

 これはハンマーシャドーによってミオの心から出現したマイッキーと絡めた上でも、唐突と言えば唐突な説だと思いますが、ミオのキャラクター性を前提とすれば、かなりナチュラルな触感を伴う説だとは思います。

 ミオは世話焼きであり、五人の中ではやや大人の感覚を有した「姉御」のポジション。特にイマジネーションを暴走させるライトにとっては重要な制動役を担っているわけで、ミオが秘める爆発的なイマジネーションを開放してしまっては、ライトは暴走するに任せてどこかへ行ってしまうでしょう。この辺りは、幼少期の記憶が鮮やかになるにつれて、より明確なポジションとして浮かび上がっています。

 いわば、ライトは機関部でミオは制動部といった処でしょう。正に、機関車の機構になぞらえているんですよね。

 制動部を担うミオとしては、大人であろうとする精神力がイマジネーションを抑え込むという設定が加わっても、何ら違和感はありません。むしろ納得出来る設定であり、何故今一つのイマジネーションとされてきた彼女がトッキュウジャーたり得るのかという疑問に、一つの答えを示したものとなっています。

 そんなトッキュウ3号が、主にハンマーを振り回すパワーファイターとして扱われている事に、アンビバレンツな魅力を感じますね。勿論、普段のトッキュウ3号はハンマーを無軌道に振り回すのではなく、ちゃんと因果関係を考慮した理知的なアクションに終始しており、今回も戦闘中に寝そべってミオとの質疑を楽しんでいるカグラ(!)との対比によって、その戦闘スタイルを強調していました。しかしカグラは自由だなぁ(笑)。カグラもライト並みに機関部系ですね。

 ちなみに、現時点で機関車の該当部を当ててみると、ライトはメイン機関、カグラはサブ機関、ミオはブレーキとして、トカッチはサニタイズから販売までサービス全般、ヒカリは制御系って感じですかね。

 話を元に戻します。幼少期のミオはマイッキーを「恥ずかしい」と感じていたようで、それは「子供っぽくて恥ずかしい」に換言出来ると思います。人形と会話出来るという事は、そこに芳醇なイマジネーションが宿っているという事になるわけですが、ミオにとっては他人に見られたくない行為であり、なるべくそういった子供っぽいそぶりを表に出さないようにしていたのだろうと想像出来ます。

 しかも、ハンマーシャドーによって具体化したマイッキーは、言って聞かせた事と反対の行動をとる天邪鬼な性格であり、それは幼少期のミオが「そうキャラクター付け」した結果。恐らく他にも細かい設定が付加されている筈で、マイッキーこそが豊かなイマジネーションの結晶なのです。

 以前、ミオが不器用な恋愛絡みで酷い目に遭いつつも、闇を生み出さなかったというエピソードがありましたが、今回も構造は類似していて、マイッキーが消滅しても、やはりミオは闇を生み出しませんでした。この二件に関しては、因果関係が少々分かり難いというか、「何故闇を生み出さないのだ!?」というシャドーライン側の感想もごもっともな感があります。前段で述べたように、マイッキーがイマジネーションの結晶であるならば、それを破壊する事でイマジネーションを失っても流れとしてはおかしくないでしょう。ところが、今回このマイッキーは見た目上「リミッター」として機能しており、そのリミッターが外れた事で、ミオはその真の力を開放する事となりました。

 これは、ある意味ミオが大人なんだろうな...と考える事が出来ます。マイッキーは彼女の分身であるとも言えるわけで、天邪鬼な処は正に、品行方正であろうとするミオのネガティヴな部分を投影したものです。そしてそれは、ミオが忘れていた「子供」の部分を強烈に想起させ、それは現在のミオに「大切なもの」であるとして受け入れられた。そこにミオの「大人」な部分を見る事が出来ます。結果、ミオはこれまで無意識的に働かせていたイマジネーションへの制動を、より能動的に制御出来るようになったのではないでしょうか。「正義の光」はちょっと言い過ぎな気もしますが(笑)。

 ちなみに、ヒカリがマイッキーの件に少しだけ関わっていたという点も良いですね。ミオ以外全員がマイッキーを全く知らないままだと、「気分」を共有する事なく孤立してしまうので、少しだけ関わらせて「五人の記憶」にスライドしている辺りが巧いです。ラストで大人のミオが教室に居るシーンも良かったですねぇ...。

 ところで、今回はグリッタ嬢が作戦の指揮を執るというくだりだったのですが、実は殆ど指揮しておらず、物陰で見守っていただけ。これには笑わせて貰いました。冒頭からして、ハンマーシャドーの能力紹介としてグリッタ嬢の心の中で多くを占めるシュバルツを出現させ、それを慌てて隠す為に飲み込むという凄まじい描写が...。言動があまりにも可愛らしいのに、時々ゾッとするような描写を盛り込んで楽しいギャップを生む辺りが素晴らしいですね。最早秘めた想いはシュバルツ本人に露呈した構図になっており、ここにどう周辺の思惑が絡んでくるかが見せ所となっています。

 ハンマーシャドー自体も、今回はシュバルツに匿われて次回にも登場という破格の扱いになっていて、さすがはチョーさんをキャスティングしただけの事はあります。今回のチョーさんは悪辣なキャラクターに合わせてユーモラスな演技を控え目にされており、そのプランが生きて深みのある怪人になりました。

 巨大戦は、ハンマーシャドー不在となる為、クライナーロボで。早速新烈車で武装した二大ロボを活躍させる段取りの良さ。今回は消化試合的な趣だった為か、目を見張るようなインパクトの特撮描写はありませんでしたが、それでもオープン撮影のカットを挿入するなど、手抜かりはなし。最後まで目を離す隙を与えないのはさすがです。

 次回はカグラ(&トカッチ)編という事で、珍しくヒロイン編連続。どんな仕掛けが飛び出すか楽しみです。