第23駅「手と手をつないで」

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 牽引車よろしくグイグイと引っ張る引っ張る!

 グリッタ嬢とシュバルツの物語に一区切りつけて来ましたが、それはあくまで通過点として描写されるパワフルな作劇に唸らされました。案の定、「女帝」は短命でしたが、逆にゼットに取り込まれているという設定ですし、シュバルツも粛正されたとは言え所謂「水落ち」でしたから、二名の続投はあるものと思われます。

 大きく構造が変化してうねりを発露していたのはシャドーライン側でしたが、あくまでメインはトッキュウジャーだという理性的な筋運びが暖かい。そんな中で五人が探している街も、名前まで判明するという急展開振りには驚きです。

 モチーフを鉄道とした時、それが単なるギミックではないものとするにはどうすれば良いか。

 「仮面ライダー電王」では、電車というものを機構的に捉えるのではなく、旅という行為、そして旅の思い出をストーリーのモチーフに据えて、そこから時点=駅、記憶=思い出という要素に変換して重厚なドラマを作り上げていました。

 では、「トッキュウジャー」はどうでしょうか。

 今の処、記憶を徐々に取り戻すという展開は、色々な駅に立ち寄る経験を積み上げているような感覚となっていますが、そこには特に目新しさはありません。しかし、今回のように列車のギミックを象徴的に捉えて昇華させるような描写は、正に目から鱗といった感じで感激しました。

 サブタイトルにもあるように、手と手をつなぐシンボリックなシーンでは、列車の連結器がカットインされ、その連結が新しいロボを生み出していくというプロセスに、スタティックな美しさが横溢。幼少期の思い出と共に、仲間の意志を再確認するような、ドラマ上でも重要なポイントを重ね合わせて、超超トッキュウダイオーの誕生へとリンクさせる展開の巧さが光ります。

 このシーンでは、不安(=「昴ヶ浜」が闇に覆われてしまった)を伴った思い出が、却って五人の意志を強固に合致させて大きな力を生むという流れをも含んでおり、女帝グリッタの放った闇からの脱出と、昴ヶ浜を闇から救うという目的意識までもリンクさせ、全合体の必然性を無理なく生み出していました。

 この「手をつなぐ」という行為は、エピローグまで徹底していて、ラストシーンでは五人が手を繋いで夏祭りに突入していく様子が描かれています。五人が常に一緒だという徹底した感覚は、これまでの戦隊にもあまり見られなかった描写ではないでしょうか。

 一方、前回シュバルツに烈車を乗っ取られ、ライト達も行動不能に陥ってしまうという危機的状況を迎えたトッキュウジャーですが、今回は意外にも危機感の薄さが特徴とでも言うべき描写になっています。

 自分たちの街の重要な部分を思い出したという希望がそうさせているのか、明の迅速な対応も手伝って次々と危機を打開していく様子が爽快で、前回と今回で便宜上の前後編を形成していると捉えれば、今回は正に逆転劇の様相を呈しているわけです。

 最も素晴らしい「機転」による逆転が見られるのは、「乗り換え」を利用した目くらましでしょう。乗り換え自体が決定的な必然を帯びる事は、その特殊性もあって数少ないのですが、今回ばかりは感心せざるを得ません。その内容は、ライトが乗り換えを駆使して五人が戦っているように見せかけ、その隙に他の四人が乗っ取られた烈車を救出しに行くという作戦。意図的にスーツの断片を見せたり、不安定で躍動感のあるカメラワークでディテールを追わせないといった工夫もあって、ピンク色のスーツの体型に「アレっ?」となるまでこちらも騙されるという画作りの巧さ。

 そしてここがまた巧い処なのですが、トカッチ達が烈車に突入した時は、既に車掌&ワゴン(+チケット君)で乗っ取り撃退に成功しており、この辺りの「緩さ」がかなり今回のレインボーライン側の雰囲気作りに効いているわけです。勿論、ライト達の作戦も無駄だったわけではなく、周囲のクローズ達を撃退していたからこそ、車掌さん達も存分に反撃出来たのだと思わせる辺りも巧いですね。

 この逆転に至るプロセスでは、素面アクションも取り入れられており、特にヒカリの動きが素晴らしかったですね。彼のアクションのポテンシャルはかなり高いようで、とにかく蹴りのラインが綺麗。アングルで高く上がっているように見せる事もなく、平面的な構図でありながら、キックが綺麗なラインを描いているので「本物」です。他の面々も確実にステップアップしていると感じますし、キャラクターの特徴を巧く表現する演出はさすがといった処ですね。それと今回全般的に言える事ですが、とにかく五人の表情がいい。

 さて、シャドーライン側ですが、女帝グリッタにシュバルツを想う気持ちがわずかに残っていて、それが隙を作るという展開は、予想通りではありましたが、やはり良いですね。今回はヒーロー側に素晴らしいシーンが沢山ありましたが、感情移入しやすいのはグリッタの方でしょう。

 ゼットが欲しがったグリッタの「キラキラ」は、やはりシュバルツへの思慕であり、それを失わなかったからこそのゼット復活という流れも秀逸で、更には超超トッキュウダイオーの誕生をも「キラキラ」として感じ取るゼットの姿には、恐ろしさもありつつ共感出来るものとして映りました。

 グリッタはシュバルツに利用された上で結局ゼットにも利用された可哀想なキャラクターとして、(多分一旦)退場する事になりますが、シュバルツには後悔の念を吐露してグリッタに詫びるというシーンが用意され、単なる利用する者とされる者以上の関係に昇華されました。一方のゼットにしても、グリッタの「キラキラ」を手に入れたというくだりが示す通り、グリッタを亡き者にしたのではなく逆に取り込んでしまったわけで、三者の関係はネロ男爵とノア夫人の間にあるような完全なる断絶とは一線を画す絶妙なものとして提示されています。

 復活したゼットは、よりキラキラした出で立ちに変化したのに加え、遂に怪人態を初披露。黒を基調としたシャドーラインの、しかも「闇の皇帝」を名乗るキャラクターであるにも関わらず、白をベースとした文字通り「キラキラ」したデザインに度肝を抜かれます。そしてあくまで人間態の雰囲気を継承したヒューマノイドである処も秀逸。ある意味「ボスらしくない」のが非常に良いです。

 次回は、シャドーラインに乗り込むという、最終回並みのテンションを期待出来そうなプロット。折り返し地点にどんな盛り上がりを持ってくるか、楽しみですね。