第24駅「分岐点を越えて」

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 文字通りターニングポイントとなるお話。

 ライト達の街「昴ヶ浜」は完全にシャドーラインのものになってしまった為か、地図や時刻表、観光案内にも記載がないという設定で、手掛かりが披露されたからと言って、簡単には辿り着かせない筋運びが巧い処です。

 また、昴ヶ浜が置かれているであろう状況を別の駅で描写する事により、トッキュウジャーの戦う意味を一層強化する段取りとしても機能し、また「乗っ取られそうな駅を阻止する」という前半戦のパターンに加え、「既に乗っ取られている駅の開放」というパターンが登場する事で、もっとスリリングな舞台を設える事に成功しています。


 後半戦の鍵となる要素は、前述の通り「既にシャドーラインの駅と化した場所」と、もう一つ「そこへ向かう為のポイント=分岐点」です。

 「既にシャドーラインの駅と化した場所」については、シャドーラインの軍門に下った場所がどのような状態になるかが重点。今回登場した処の描写を見ると、既に人々が闇を生み出す段階は終わっていて、完全に時が止まっているという、実に凄惨な状態となっています。

 この硬直した雰囲気は、「ウルトラマン」においてバルタン星人が占拠した建物内部や、「ウルトラセブン」の蒸発都市といった優れたパイオニアが存在しますが、今回は完全硬直の表現を、合成によるものと演技によるものとで巧く表現しており、より生命感の喪失を感じさせていて不気味です。それだけに、解放後に感じられる「生命の輝き」といったものが、より眩しく見えてきます。

 この「時が止まっている」感覚は、実は非常に重要なポイントではないかと思う次第。

 恐らく、昴ヶ浜も星祭りの日を最後に時が完全に停止しているのではないか。

 という事は、ライト達が大人の姿をしているという事自体に矛盾が生じてしまうわけです。この「時間のギャップに伴う矛盾」こそが、「トッキュウジャー」最大の謎として機能してくるのではないかと、私は睨んでいるのですが...。ライト達が子供達と同様のイマジネーションを持っているという設定も、多分大いに絡んでくるのではないかと思います。

 「そこへ向かう為のポイント=分岐点」に関しては、明という特殊なキャラクターによってのみ成立する面白い設定です。

 明が元シャドーラインである事から、明の持つシャドーラインに関する知識については当然疑問を挟む余地がありません。その上、シャドーライン由来のドリルレッシャーを所持しているという「念押し」も効いており、レインボーラインの者がシャドーラインに侵入可能となる理屈をちゃんと固め上げています。もう一点巧いのは、明が保線作業者であるという点で、各地に点在するポイント(分岐点)について熟知していても何ら違和感がないわけです。今回の為に、明というキャラクターが作り上げられたのだと思える(実際そうなのかも知れませんが)処が実に巧いですね。

 更に、ポイントからシャドーラインに侵入し、ポイントからまたレインボーラインに復帰するという設定により、明がそのポイントを護る必要が出てくるわけで、一緒にシャドーラインへと侵入しないというシチュエーションをも自然に作り出しています。故郷探しをするライト達五人の苦難を、ちょっと離れた処から支援する明という構図が、巧くストーリー上でもよく活かされていますね。

 今後もこの二要素が度々登場し、数々の駅が復活していく事で故郷に近付いていくというのが大きな流れとなりそうです。ただ、そればかりには絶対ならないだろうとも予想出来ますけど(笑)。

 さて、今回は、シャドーラインに侵入するとレインボーラインの能力が著しく損なわれるという設定が、存分に描かれます。

 変身はおよそ30秒がリミット。ここでの解釈は、一つのレッシャーを使用した変身が30秒に限定されるというもので、列車よろしく五人分のレッシャーを「連結」すれば、150秒間変身して活躍出来るというアイディアが秀逸。

 前回、五人が戦っているように見せかける為に乗り換えを駆使していましたが、今回も目的は違えど実は同様の趣向。ライトが一人で五色に変身していく事で150秒間戦い、闇駅管理人であるルークを仕留めるという流れです。この乗り換えによる連続攻撃の巧みさは、アクションの組み立ての見事さが支えており、実に説得力のあるシーンに仕上がっていました。チェスの駒がモチーフであるルークを、将棋の駒で仕留めるという「オチ」のコミカルさも、ライトの奔放なイマジネーションによる自信を感じさせてくれました。途中まで、本当に150秒でカタが付くのかとハラハラさせられる描写になっていた(攻撃がなかなかヒットしない等)のも秀逸でしたね。

 一方で、ライト一人にレッシャーを託すには、クローズの大群を生身で引き受けなければならないというシチュエーションが生まれ、素面アクションの機会を創出しています。

 そのアクションでは、ライトが素面での飛び降りを披露するといった効果的なカットや、スタンドインを用いたパルクール的な飛び降りカットを挿入する事で、そのスリルを演出。他の面々も、久々に登場したカグラの「なりきり」アクションや、トカッチのパワーファイト振り、ミオの手刀を中心としたキレのあるアクション、ヒカリの素晴らしい足技の数々といった具合に、充実したアクションを見せてくれます。

 変身不能という設定は、こうしたアクションの見せ場をふんだんに作ってくれるので歓迎ですね。いわゆる「素面名乗り」をもう披露してしまうというサービス振りも特筆ポイントです。

 巨大戦では、ルークが更に巨大化してロボを圧倒するという、楽しい描写に驚かされます。こういった、予定調和を敢えて崩しにかかるスケール感を湛えた描写は大歓迎。「一筋縄では行かない」という状況をビジュアルで納得させるパワーがありますね。すぐに逆転してしまうコミカルな展開も良いです。

 最後に、シャドーラインの本拠の動きについて。

 グリッタは、意志があるかどうかは別にしても、やはりゼットの中で生きてはいるようですね。ネロ男爵は相変わらず日和見主義者ではありますが、ひたすら騒々しいというキャラクター付けが機能し始めていて、魅力的に映ります。ノア夫人は、まさかの反乱を企てますが、こちらはすぐに懐柔。ただし、腹の底ではどうか...という描写があり、まだまだ波乱はありそうな予感です。グリッタとシュバルツが担っていた中世メルヘン的な要素がなくなってしまったので、ややギスギスした感覚が前面に出始めましたが、この辺りをどう軌道修正していくのか、あるいはエスカレートさせるのか...見物ですね。

 次回は楽しいビジュアルを押し出したイベント編になりそう。夏らしく弾けたお話を期待します。