第25駅「おとぎ話が飛び出して」

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 安定のトカッチ編。トカッチは制作側のお気に入りキャラなのか、メインを張らせると画面が生き生きして見えてきますねぇ。

 心の中にある「おとぎ話の主人公」を具現化するというピンスポシャドーの能力は、ハンマーシャドーの二番煎じ...というより殆ど同じで、しかも具現化したものを消去して人間から闇を引き出すという展開まで踏襲。ただ、ピンスポシャドーの当初の目的が「おとぎ話の主人公」をキラキラと見做して具現化するというものだったので、ゼットのわがままに付き合って失敗した後に、ハンマーシャドーの作戦を実績として流用したという流れで解釈すれば自然。それ故に、トッキュウジャーの対応も素早かったのだと解釈出来る面もあります。

 ハンマーシャドーの話では、ミオがメインとなって「マイッキー」という秀逸なゆるキャラを創出し、ミオのメンタル面を理解するのに必要となる「過去」を描いていましたが、今回はトカッチの過去をより直接的に描き出す事となります。

 先日の昴ヶ浜の思い出の中で、五人それぞれの肉親が登場しており、これからは肉親に関するトピックが少しずつ明らかになるであろうという予想は出来ていましたが、こんなに早く登場するとは思っていませんでした。しかも、トカッチの兄というキャラクターが選ばれるとは。

 このトカッチの兄には、大野瑞生さんがキャスティングされました。大野さんは「ウルトラマンギンガ」でちょっと頼りなげな主人公グループの一人を演じ、そのフレッシュな魅力を発揮していましたが、今回は一転してトカッチの憧れる「完璧な兄」として登場。「ギンガ」でのイメージを引きずる事なく、爽やかなヒーロー性を発揮していました。それこそ、トッキュウジャーの六人を凌駕する程に(笑)。

 そして、その「完璧な兄」はトカッチの中でリョーナイトというヒーローに同一視され、益々輝きを増すのです。ちなみにこのリョーナイト、実に石ノ森キャラっぽくていいですね。

 ここまでは、ちょっと変わった子供の妄想をドラマに導入した程度ですが、秀逸なのはトカッチの態度。

 とにかく、トカッチ役・平牧さんの芝居に深みがあります。

 ミオがマイッキーを何となく恥ずかしがっていたように、トカッチに関しても同様の傾向があるのですが、ミオが概ね自分の中の子供っぽい部分を隠そうとしていたのに対し、トカッチは子供の頃の妄想をまだ引き摺っていたという点を、ちょっと恥ずかしがっているのです。これ、物凄く難しい心情描写ではないかと思います。

 今回の印象として、トカッチの自覚としては、自分は既に「大人」であり、ミオが漠然と持っている「大人に背伸びする少女性」とは全く違います。トカッチが「大人」であるというのは、恐らく演者の年齢的なものが大きく作用しているものと考えられますが、そこには自然な「雰囲気」だけが存在し、疑問を挟む余地がない辺り見事なものです。

 一方で、「この年になっても」兄の呪縛から解かれないというジレンマも(軽くではありますが)描かれています。

 ここが巧い処で、例えばライトやカグラが同様の立場に置かれた時、悩むでしょうか。私は彼等の強調された幼児性故に、悩んだとしても違和感を持たれるものと確信します。これはやはり、大人な年齢を雰囲気としてまとっているトカッチならではでしょう。しかしながら、トッキュウジャーが実は大人の姿をした子供ではないかという「予測」に立ったとき、あっという間に矛盾として牙を剥く描写でもあるのです。

 故に、これは巧妙なフェイクなのかも知れませんし、あるいはまだ結末を定めていないかも知れません。いずれにせよ、今後の展開に一石を投じたのは間違いありませんね。

 結果的にトカッチは、兄の幻から事態を打開する勘所を教えられ、ネロ男爵を撃退する事に成功するのですが、その勘所とは、トカッチに落ち着きが必要というものでした。確かにネタ的に余計な動きを多数取り入れてコメディリリーフを演じているのがトッキュウ2号ですから、妙に納得してしまいます(笑)。ただ、落ち着き払っていてはトカッチがトカッチたる所以を失ってしまう事も確かで、どういう処理をするのかなぁ...と眺めていたら、何と「秘密の特訓の成果」が炸裂した後に受け身をとる事なくバターーッと地面に腹ばい! これには大拍手でした。そして、そんなトカッチでも存分に格好良い。これが重要です。兄の幻はトカッチ自身が生み出したものであるから、弱点の克服はトカッチ自身が達成した事というロジックも見事でした。

 その指摘をしたミオと、ちょっといい仲になりかけるエピローグもいいですね。互いに依存していたキャラクターを暴かれ、克服した同士というのも良い流れですし、五人の中では何となく大人を感じさせるカップルなのも良いです。まぁ、この先進展するかどうかは微妙ですが...。

 さて、今回はちょっとしたコスプレ要素も入っていてサービス精神を感じる事が出来ます。

 桃太郎、シンデレラ、赤ずきん、はだかの王様といったキャラクター達も一種のコスプレですが、劇中で言えばミオとカグラがそれぞれ赤ずきんとシンデレラに「乗り換え」て、彼等の逃亡を助けるという展開でした。この二人のコスチュームが実に似合っていて、棒読みの悲鳴といったギャグを挟みつつ、最後はコスチュームを脱ぎ捨てると一瞬で普段着に戻るという、古式ゆかしき「早変わり」を披露。この「早変わり」はリアリティに欠けるという事なのか、あまり近年の特撮ドラマでは見られないものになりましたが、久々に見るとやはりケレン味に溢れていて楽しいですよね。

 いわゆる「七変化モノ」は既に戦隊シリーズのお家芸となっていますが、そもそもは時代劇や古い探偵モノといったコンテンツのノウハウを楽しく踏襲する意味合いがあり、「ゴレンジャー」でのモモレンジャー=ペギー松山メイン回や「ジャッカー」でのビッグワン=番場壮吉がそれを体現していました。その流れを少し変えたのが「デンジマン」のデンジピンク=桃井あきらで、空中での宙返りを駆使した早変わりや、とにかくお色気&戦闘力で押していく作風、最後の最後に磔という危険なフェティシズムを漂わせたりと、80年代初頭最高のスタイリッシュな画面作りを模索した形跡があります。

 近年ではそこまで過激な七変化モノで押してくる事はなく、コスプレという言葉に代表されるようにアイドル的な要素でサービスするという感覚に変化していますが、ちょっと寂しい感もありますね(笑)。

 最後にシャドーライン側の動きを。

 今回はゼットやネロ男爵が前線に出てくるという、実は結構面白い事態になっていたのですが、もうそれが自然になりつつあります(笑)。鏡に映ったゼットにグリッタの姿が重なり、それに気付いて驚くノア夫人や、やはり生存していたシュバルツの意気揚々たる戦意の発露といった短いシーンが物語を邪魔する事なく挿入され、今後の展開への段取りも実に巧妙です。

 静かに動いてはいますが、シュバルツの逆襲(?)でまたどうなるか、実に楽しみですね。

 次回は、またまたサービス回なのか...!? 西田健さんの姿を予告でチラッと拝見出来たので俄然楽しみになってきました。