第26駅「銭湯で戦闘開始」

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 サブタイトルが示す通り、いわゆるギャグ編なのですが、意外と重要なファクタが披露されたりして。

 夏の終わりを意識してか、サービスシーンも盛り込んでの賑やかなエピソードになりました。ギャグ編にしては平板なストーリー展開だったにも関わらず、西田健さんと倉貫匡弘さんのゲスト出演も手伝って、しっかり幅が拡がっていましたね。その辺りの匙加減はさすがといった処です。


 今回は大和屋暁さんの脚本であり、やはり普段とはやや雰囲気が異なります。テイストの近い処で言うと「カーレンジャー」っぽいというか。

 気付きとして、鉄道モチーフでありながら従来の「トッキュウジャー」に欠けていたと思われるもの...それが今回にはあったように思います。

 それは、旅情的な感性。

 今回はいかにも下町な風合いで街が描写されており、旅情を感じさせるものとなりました。これまで様々な駅が登場してきましたが、ライトがそれぞれの名物を食べまくるといったシーンこそあったものの、殆どの景色がビル街でしたし、ヘンな例えですけど山手線をグルグル回っている感覚だったんですよね(勿論、ロケーション等の限界がある事は充分分ってますが)。なので、今回は本当に新鮮でした。

 旅番組っぽい町並みの撮り方に加え、西田健さんによる銭湯のオヤジの深み、ちんどん屋に扮するトッキュウジャー、銭湯のルールにこだわりまくる明等々、その雰囲気作りの徹底振りには、「一生懸命やるからこそ滲み出る可笑しさ」が横溢。「トッキュウジャー」の一編としてはやや脱線気味ではあるものの、各キャラクターへの愛情が感じられる為、「トッキュウジャー」として許容出来る良さを持っていました。

 明とカグラをメインに据えたのも巧いと思います。

 恐らく、明をライトにすげ替えても成立するストーリーであるし、娯楽やレジャー、食といったものに目がないライトであれば、銭湯にこだわっても違和感はありません。ただ、普段が朴念仁然としている明がこの役をやるという事の意義には、異論を挟む余地がないでしょう。常に「死に場所を探している」と言い続けている明が、生きている事への強い実感を伴う「風呂」に夢中になっている事自体が、既にギャグなのですから。しかも、これまでの実績からすると猫の件で満面の笑顔を見せただけの明が、今回は終始ニヤニヤしているという凄い絵面。圧倒される事請け合いです。

 そしてカグラ。恐らくは入浴シーンを盛り込むという要求からの逆算で彼女が選ばれたのだとは思いますが(??)、あまり他人の行動に疑問を持たない率直なキャラクターである事が、明との親和性を担保しており、実に巧く機能していました。特に、下町のオヤジに共感する処なんかは、カグラならではだと思わせてくれます。

 その入浴シーンですが、ミオ&カグラによる魅力的なカットはあるものの、何故か男性陣の方が色々な意味でサービス精神満載な感じで、笑ってしまいました。いずれにせよ、「分かっている」アングルに職人技が垣間見られ、子供向けコンテンツを逸脱しない辺りは見事だと思います。銭湯シーン全般としては、明の蘊蓄が炸裂しつつ、定番ギャグのコーヒー牛乳もちゃんと盛り込まれて良い感じ。劇中だけでなく、リアルに絶滅危惧種である銭湯の魅力を存分に魅せていたように思います。

 シャドーライン的に重要な要素としては、地脈による「闇だまり」という概念が登場。これまで、人間から直接闇を採取していたのですが、自然にたまり場が出来るという考え方が導入され、シャドーラインの作戦の幅が拡がりました。非常に陰陽道的、東洋的な考え方から拝借された概念は、ビジュアル面で西洋的な意匠を追求しているシャドーラインとはアンマッチな感覚として捉えられます。しかしながら、今回のようないかにも和物然とした風景にはピッタリな要素でしたし、シャドーラインの動きのマンネリ化も抑止されるのではないでしょうか。

 さて、今回のシャドー怪人であるコインシャドーは、珍しく人間態をメインに活躍させる趣向でした。人間態を演じ、そして怪人態の声を担当したのは倉貫匡弘さん。倉貫さんは戦隊OBであり、「タイムレンジャー」のタイムグリーン=シオン役を務めました。

 シオンは、ちょっと頼りないけれども頭の切れる異星人の少年といったキャラクターで、正に当時の倉貫さんは17歳の少年でした。今回、戦隊というステージでは久々に、大人になった彼を拝見する事になるのですが、シオンが異星人らしく髪を染めている役だった上、今回は悪役という事もあって、やはり「シオンだ!」といきなり同一視するのは困難(笑)。しかし、面影もあるし声のトーンも聞き覚えがあるし...で、懐かしくなりました。演技、雰囲気含めて立派な役者さんにおなりですねぇ。

 コインシャドーのデザインは、「コンドールマン」のゼニクレージーの現代版といった趣(笑)。慇懃無礼な経済系アウトローといった雰囲気が素晴らしいです。

 そして、「銭湯の店主」を演じた西田健さん。

 西田さんと言えば、私の中では「帰ってきたウルトラマン」の岸田隊員が筆頭なんですが、東映特撮系では、「ギャバン」のサン・ドルバ、「ハリケンジャー」のハムスター館長としてもレギュラーで活躍されました。刑事ドラマや二時間ドラマ等で頻繁に見かけるので、この方に関しては「久々」といった印象は全くありませんね。

 岸田隊員は、主役の郷秀樹に対する批判者のポジションで鮮烈な印象を与えるキャラクターですが、実は1クールを消化する頃には態度を軟化させており、中盤からは良い先輩後輩コンビになったりするんですよね。西田さんの鋭い眼光は画面に硬質感を与えていたので、郷と仲良く談笑しているシーンが余計にリラックスして見えたり。その後、「ハリケンジャー」に郷秀樹を演じた団時朗さんが回想シーンながらもゲスト出演して、郷と岸田の時を超えた共演といった具合に盛り上がったりしましたねぇ。実に懐かしいです。

 というわけで、総じて満腹な回でした。こういう雰囲気の「一話完結もの」がもっと増えてくれると、更に面白いんですけどね。大河形式で謎が解き明かされていくのも素晴らしく良いのですが、弾けたバラエティ編が頻繁に入ってくると活性化してくるのではないでしょうか。

 次回は、パワーアップ譚になりそうですね。どんな仕掛けで来るのか楽しみです。