第28駅「カッコ悪いがカッコ良い」

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 トカッチとヒカリという、珍しいコンビを軸に展開するお話。

 トピック的には、ダイカイテンキャノンのフル機能のお披露目がメインであって、他の要素としては特に目新しいものが見当たらないものの、こういう時期こそ傑作を作るに相応しいといった処でしょうか。スタティックなストーリー運びにギャグ性の高い演出を盛り込んで、楽しくも暖かいエピソードを完成させていました。


 先のエピソードで、トカッチがミオに特別な感情を抱き始めている様子を少しだけ描いていましたが、今回はそれをより明確にし、さらにトカッチの人となりを浮き彫りにして行きます。

 巧いのは、そこにヒカリを絡ませた処でしょう。ヒカリの野菜嫌いという、ある種子供っぽい特徴を利用してミオとの関係性をポジショニング(姉と弟のような感じに)し、トカッチの羨望を喚起させるといった具合で、人物配置が見事です。通常のクールなヒカリのキャラクターからすれば、ミオが世話を焼きたがるポジションにはついていないわけですが、自然に、ごく自然にズラしているのが凄いですね。

 そして、ヤキモチを焼くトカッチの描写も見事。明を除くトッキュウジャーの五人は、元々幼少時より結束力は強く、2クール分を経過してその結束力は折り紙付きとなりましたが、今回のようにちょっとした事が引っかかりを生む辺り、人間模様の描き方がとてもリアルです。トカッチの皮肉がリアルにむかつく辺りも実に巧い(笑)。

 男性陣の中で最も子供っぽいライトをヤキモチの相手に選ぶ...という方法もありますが、やはりトカッチの機微を描くにはライトでは大味すぎる気も(笑)。ここはヒカリを選択して大正解だったと思います。

 このようなお膳立てで基礎固めをした上で、ライトを自由に「遊ばせた」のが今回。ノア夫人によって黒い羽根を植え付けられたライトは、凶暴化してトッキュウジャーに襲いかかるわけですが、普通は殺伐とした雰囲気になるシチュエーションなのに、これがまた実にユルい(笑)。というのも、そもそもノア夫人の羽根は直接ライトを狙ったものではなく、明が弾いたものが不可抗力で刺さってしまったという処から始まっていますから、発端からしてユルいわけです。

 その後、ライト相手に本気で攻撃出来ないという理由から、危機に陥る事になるトッキュウジャーですが、一連の流れの中で、ライトの戦闘力がトッキュウジャー最強であるという事実が明らかになります。まぁ、レッドが最強であるというのは、一部の例外を除けば戦隊の不文律のようなものですが、ライトに関してはちょっとだけ意外というか、イマジネーション一辺倒じゃないんだなぁ...と感心してしまいました。

 最後は、無神経なライトから日頃受けている被害を思い出して壮絶なツッコミを行うという「発想」により、ライトをボコボコにしてしまうという、何ともまたユルい設定で締めてくれます。日頃の恨みを晴らすという名目のリンチに見えてもおかしくない状況で、これだけほのぼのして見られるのは、やはりストーリーテリングの巧さでしょうね。

 そのストーリーテリングの中心にあるテーマは、「皆違って皆イイ」というものと、それを翻案した「皆違って皆面倒臭い」という、ちょっと変わったもの。

 トカッチ、ヒカリの両者は今回、互いに羨ましい部分と面倒臭い部分を確認し合う事で、何となくギクシャクしてしまった関係を修復する事が出来ました。そして、裏表がなさ過ぎる上に無神経なライトは、トカッチにもヒカリにもない良さと面倒臭さを発揮しているわけで、それぞれが持ち合わせる表裏一体の長所と短所を丹念に描いているからこその、「愛あるツッコミ」なんですね。

 ところで、今回はライトの暴走劇というイメージだったのですが、実は暴走していたのは明だったというオチが付いているのも楽しい処。今回随一のギャグの担い手として文字通り走り回る姿には爆笑必至。この明の存在も、今回の明るさを確実に支えています。

 ということで、かな〜り短文ですが、ちょっと風邪気味で体調不良なので、この辺で。

 次回はシュバルツに注目ですね!