第9駅「思いは片道切符」

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 全国1億人のミオファンの皆様、おはようございます。こんにちは、そしてこんばんは。

 今回はミオのプロモーションかと思うような、梨里杏さんの魅力爆発エピソードでした。

 あれこれ書いてこの素晴らしさを霞ませるような事はしたくないのですが、そういうわけにも行かないので(笑)。

 とにかく、久々にドストライクなんですよね、トッキュウ3号。ホント、申し訳ございません。

 今回のメインを張るミオ。これまで「学級委員」とか「世話焼きリーダー」といった、面倒見の良いキャラクターとして説明されてきましたが、実はそのような描写はあまり重視されておらず、他の面々のステレオタイプに近い個性の中にあって、今一つポジションが不明瞭なキャラクターだったように思います。

 ただ、あまりにも個性的なカグラの向こうを張るような個性を発揮しなかったからこそ、何と言うか「トッキュウジャーの良心」といった部分を担う、安心感を伴ったヒロインとして成立していたのだと思います。

 このタイプは、古くは「シャリバン」のリリィ辺りが近いイメージ。リリィは、シャリバンよりも明らかに「お姉様」の感覚であり、現場で戦闘も出来るし、シャリバンの世話を焼く事もするけれど、シャリバンに危機を救われるという場面もある。いわば、ヒロインの典型をいいとこ取りしたキャラクターでした。前年度の「ギャバン」におけるミミーは、あくまで「鈍感な」ギャバンの恋人の立場としてコメディの味わいを付加する存在、次年度の「シャイダー」に登場するアニーは、シャイダーと対等の「主役」でしたから、リリィの安定感が分かると思います。それ故、シャリバン個人のハイブロウな物語を自由に創り出す事が出来たわけですね。

 ミオは先のエピソードで、イマジネーションが弱いのではないかと悩んでいるくだりが描かれましたが、そういったキャラクター付けも、安定感への措置ではないでしょうか。なるべく棘をなくすという手法なわけですが、それは没個性と表裏一体。ある意味危険ではあると思います。

 そこで今回、ミオは「恋愛に関してはズレまくっている」という要素を描く事で、安定感のある「普段」とは違う側面において「棘」を強調して見せました。

 これは、今回を見ると成功だったと思います。

 ミオ役・梨里杏さんのビジュアル面で行くと、「恋愛に疎い」といった要素はアンマッチな感覚で、いわば「厭味」な印象を与えかねないのですが、その辺りのマイナス面を、フワッとした雰囲気でそれを感じさせない処が巧く払拭しています。今回の冒頭で初めて描かれた「世話焼き」な部分が、しっかり者としての面をちゃんと補強していたのも良いです。この冒頭のシーンだけで、「学級委員」という設定に説得力が付加され、しっかり者ならではの自分への興味の薄さといった定番の性格付けにまで自然に連なっています。

 ミオの「お相手」である千葉徹を務めたのは、「ゲキレンジャー」で鮮烈な印象を与えた追加戦士・ゲキチョッパーこと久津ケンを演じた聡太郎さん。「ゲキレンジャー」当時は、ヒーローには珍しく髭を蓄えた押し出しの強い風貌によって、他の面々とは一線を画すキャラクターとして成立。今回はスッキリした本来の(?)風貌で出演されましたが、クレジットを見ないと全く分かりませんでしたね、これは(笑)。

 徹のキャラクターは実に不明瞭で、この不明瞭さが物語に対して抜群に効いています。ミオが一目惚れしなければならないという命題は、そのルックスと柔らかい物腰でバッチリ実現し、マリオネットシャドーに操られている時は、異様なまでに凶悪。この両極端な演出は、不明瞭なキャラクターの上でない限り、巧く成立しなかったのではないかと思われます。マリオネットシャドーの作戦は、割と早い段階で視聴者に示されますが、それまでは明らかに敵の作戦っぽくもあり、そうでないと思わせる部分もあったりで、実に不気味です。憧れの男性が敵の変装であるという定番を、巧くアレンジして新味を出してきたのは見事だったと思います。

 この、憧れの男性が敵だったというパターンは、戦隊初期では子供レギュラーに好んで用いられていますが、「ゴレンジャー」にも憧れの先輩(キカイダー01のイチローこと池田駿介さん!)が敵に寝返っていたというエピソードがあり、やはり古くからの定番だった事が窺えます。個人的に印象に残るのは、「ギャバン」でミミーがスパイダーマンに恋をするというエピソード...というのは冗談で、東映スパイダーマンに主演された藤堂新二さんが、白バイ警官に扮してミミーを罠にかけるという話がありました。藤堂さんは非常に背が高いので、本当に格好良いんですよね。ちなみに、ギャバンの大葉さんとは、「デンジマン」でもデンジブルーとヘドラー将軍として共演されています。

 さて、まんまと罠にかかってしまったミオでしたが、その「恋愛に残念な性格」が幸いして、作った弁当を踏みにじられても(この場面は非常に凄惨で、「トッキュウジャー」初期編の重い部分が久々に現出)、闇を生み出す事はありませんでした。ここは本編だけを見るとやや説明不足な感があるのは否めません。

 ミオは、もう一度徹に会えるという事で、かなり気分が良かった筈ですが、何故か武道家精神が発露して「勝負に行く」という目的にすり替わってしまいます。ここまではまぁ分かります。問題は、「初めから勝負するつもりで来ていたから闇に囚われなかった」というくだりで、「勝負」という文言が一種の照れなのではないかという観測を、ここでスルッと回避されてしまうわけです。となると、何故「勝負」なのかが殆ど理解不能になってしまいます。その辺りは事前の行動にも及び、誘いの電話は、緊張して脅迫電話のようになったのではなく、元から大真面目に果たし状のつもりだった事になったりするわけです。

 今回はミオの魅力が物凄く引き出された回だったと思いますが、このように、今一つミオの行動の筋というものが見え難いのが残念。巧く解釈するとすれば、ミオは恋愛に関して過去に良い目に遭っておらず、常に警戒するような姿勢になってしまっており、素直に自分の気持ちを表現出来なくなってしまっているのではないかという話ですが、それは正解ではないような気がします。

 一方で、劇中には一つヒントがあって、守るのか守られるのかというテーゼが、今回のセリフの中に何度か出現しています。ミオは、たまには守られる事に関してトキメキを感じる事はあっても、自分は守る方の立場に居る方が似合っている事を自覚しているわけで。要は、ミオは恋愛というものを、守るのか守られるのかという定型を決するステージだと考えていて、その気概が彼女自身を「勝負」にまで追い込んでしまうのではないと思います。その辺を理解しているカグラが、乗り換え変身を提案するくだりは巧いと思うし、「たまには息抜きを」というメッセージは、ミオが普段人一倍周囲に配慮して頑張っているという状況を思わせてくれます。

 ところで巨大戦では、ディーゼルオーが登場。今回は珍しく事前知識なしに見たのですが、まさかサポートレッシャーのみの合体フォーメーションかあるとは思っておらず、なかなか鮮烈な印象でした。いかにもパワフルな感じの造形も良く、肉弾戦主体のロボという特徴が良く出ていたと思います。合体はパーツの分離と再結合を伴うものでしたが、ちゃんとレールの上を走りながら「連結」するというポリシーを守っており、二号ロボからいきなり傾向が変わってテンションが下がってしまうという事態はちゃんと回避されています。良かった良かった。

 次回は、鮮烈なサブタイトルが目を引きますが...既にジョークっぽさが漂っていて笑えます。意表を突いて、意外にシリアスな内容だったりして...。