快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー #44「見つけた真実」

 ノエルの「正体」が明かされ、さらにザミーゴが提供する「化けの皮」の真相までが明らかになる、激震の年末クライマックス編。

 一応、ノエルの謎に関して決着の付く話ではあるのですが、一気に鬱展開へ加速する感もあって、救いのある部分と救いのない部分が交錯する独特の読後感がありました。



ナリズマ・シボンズ

 やはり、悟は偽物でした。

 しかしながら、「化けの皮」が死んだ人間によって作られるという「真相」が語られることにより、その背景に流れる深刻度は一気に増していくのです。

 東雲悟は既にこの世に居ない。それが圭一郎とつかさにどれだけの精神的ダメージを与えたか、想像に難くありません。前回はルパンレンジャーが荒れていましたが、パトレンジャーも一気呵成、怒りに任せるかの如くナリズマを撃破しています。しかしながら、そこに「職務」を感じさせる辺りがパトレンジャーの美点ですね。

 さて、このナリズマ、名前の如く「成りすまし」ていたわけですが、当初より悟としてフランス本部に潜入していたという設定もあって、かなりのインパクト。フランス本部では見破れる者もなく、圭一郎にしても、ノエルへの執拗な姿勢から気付きを得ていなければダメだったかも知れないと考えるに、スパイとしての手腕は一流だったようです。声だけコレクションに頼っていたという点は、ちょっと笑えますけど。

ノエル

 人間ではないという衝撃の言及。しかし、蓋を開けてみるとちょっとインパクト重視の強引さがあったような…(笑)。

 今回判明したノエルの正体は、ギャングラーの棲む異世界の種族の子孫であるというもの。人間世界に逃げ延びた落人の末裔というわけですね。アルセーヌ、そしてコグレさんも同じ出自。ただし、「血を引いている」という表現が表しているように、人間との混血が進んでいるのは想像に難くなく、「人間ではない」という表現は少々エキセントリックな解釈と言えるでしょう。

 一方、ノエルが取り戻したい人の正体も判明しました。なんとアルセーヌその人! 正に答えの大盤振る舞いですが、ここでの開示は絶妙のタイミング。アルセーヌに最も近い人物としてのノエル、そしてそのアルセーヌの死の真相(近年まで存命だった!!!)。これらの要素を魁利たちが知ることで、初めて4人の快盗が一致団結するプロセスには、胸が熱くなりました。エンディングで4人がチェンジャーをクロスさせる「定番」のカットが実に決まってましたね。

 さらに、疑いが晴れたことで4人の警察としての団結もさらに強まりました。圭一郎とつかさが悟への無条件な信頼とノエルへのシンパシィとの間で揺れ動く様、そして悟を知らない咲也の、純粋なノエルへの信頼が本当に素晴らしく、短い尺ながらこれまでの積み上げを存分に活かした作劇になっており、高い満足度を示していました。

刑事ドラマ的な

 今回は昭和の刑事ドラマ風に鳴り響くトランペットソロのBGMが、悟を失った圭一郎とつかさの心情を盛り上げるなど、随所に「それっぽさ」が導入されていました。

 悟との思い出を反芻する圭一郎のシーンに「G線上のアリア」が被るといった、「相棒」への意識、事前知識のない咲也が示す冷静な推定無罪の原則、ミュージックデバイスという些細な手掛かりから悟の正体を突き止める圭一郎、トリガーにかかる指のクローズアップといった具合に、今回が完全に警察のターンであることを示すカットに満ちていました。今シーズンに往年の刑事ドラマファンの視聴者が居たとしたら、素晴らしいクリスマス前プレゼントになったと思います。

化けの皮は…

 「化けの皮」については、随所に見られた予想どおりになってしまったわけですが、この線を強く進めていくと、やはり魁利たちにとって最悪の展開になるのは間違いないですよね…。

 ただし、今回言及されたように「希望」があるのも確か。ノエルが成そうとしているのは「死者の復活」であり、もし化けの皮のために利用されるような事態が起きたとしても、取り戻すチャンスはあるかも知れないわけです。

 そして、この件でようやくザミーゴが魁利たちの仇敵以上の意味を体現するようになります。ある意味、悟の件で警察の仇敵にもなったわけで、ここで快盗と警察の両者にとって一つの収斂の場へと化しました。これは実に鮮やかな仕掛けですね。

ウイングペンタクト&シュリケンズバット

 ノエルのお話を象徴するように、両方とも追加戦士の武器というのがミソ。ウイングペンタクトはアバレキラー、シュリケンズバットはシュリケンジャーの武器ですね。

 公式サイトのヒントはやや難しめ。私も思い出すのが大変でした。

次回

 クリスマスに合わせて次回にクライマックスを持ってくるのかと思いきや、今回が事実上のクライマックスでした。次回は予告ではややコメディ寄り。鬱展開を吹き飛ばしてくれるかな??



投稿者: SirMiles

【マー 🏃 SirMiles / Masafumi Fujimura / https://sirmiles.com / maruzoku】 Run、音楽、プラモ。趣味は広く浅く。生業はIT系。

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10件のコメント

  1. 悟を殺されたという怒りはもちろんありますが、

    それ以上に「化けの皮は人間から作られていた」という非道な行為をするギャングラーへの「警察官」としての怒りだったのが印象的でした。

    かつて悟との因縁があるギャングラーに遭遇したとき(ネットで公式公開されてる冒頭)の圭一郎は個人的な怒りにとらわれ、連携を崩してしまってましたが、

    今回は激しい怒りに振り回されることなく、さくやとノエルとの連携も取れてました。

    配信ストーリーと比べて、圭一郎やつかさが「警察官」として成長してることを描いてるなと思います。

    またラスト、亡き悟への誓いは「仇をとる」ではなく「事件の真相を突き止める」という警察官としてのものでした。

    今回の件でパトレンジャーも「大切な人」を失ったわけですが、

    同じ境遇にいたって「失ったものを取り戻す快盗」と「世界の平和を守るために戦う警察」というスタンスの違いが改めて強調されたように思います。

    ここからは個人的な推察ですが、

    もし圭一郎やつかさが悟を殺されたことへの個人的な怒りや悲しみに囚われていたなら、ひょっとしたらルパンコレクションの回収にノエルが勧誘していたのでは?と思います。

    しかしノエルはカイリたちとの絆を深めていましたので

    やはりルパンレンジャーとパトレンジャーは相容れない存在であるのだということも感じました。

    ラストに向けて両戦隊がどのような答えを出していくか、楽しみです。

    1. 「警察官」としての怒り、グッと来ましたね。

      本文中では、快盗との共通目的をザミーゴに定めたことを強調して「仇」と表現していますが、仰るとおり本編では職務の面が強調されていて、それがまたプロフェッショナル感と悟への誓いのようなものを感じさせて良かったです。

      両チームがどう交差していくのか、楽しみですね。

  2. 今まで軽いノリというか割と手軽に人間に化けていたギャングラーが実はその度に人間を殺していたというのは結構衝撃ですね。戦隊の悪役がレギュラークラスの人物以外を殺した描写は近年あまり覚えがありません(シンケンジャーくらいでしょうか)。
    今回ノエルの謎が解明されましたが、自分はギャングラーのボスがアルセーヌ・ルパンなのではと思っていたのですがはずれでしょうかね。ルパンコレクションを集めさせていることや後継者を指名せず内部崩壊を目論んでいるような点が気になったのですが。でも、そうすると2番組連続「追加戦士の身近な人物が悪の親玉」ということになってしまいますからやっぱりはずれでしょう。

    1. 初期戦隊では結構ショッキングなシーンに溢れていましたが、さすがに現在はそうも行かなくなってきたようで(朝のオンエアという理由もありそうです)、今回セリフの中でも死の臭いを感じさせたのはインパクトありましたね。

      ボスの話、本文中では触れませんでしたが、私はアルセーヌの声がどうしても宮本充さんにしか聞こえなくて、アレっ??と混乱してしまいました。さて、何が飛び出してくるか…楽しみです。

  3. ナリズマは、ちょっとパトレンを甘く見ていたようですね。プレーヤーの件は致命的でした。咲也というノエル側に立った視点がきっかけになるというのも、王道ですが、素晴らしかったですね。
    化けの皮が人間から作られていた、というのは色々と予想されていたとおりだったのですが、その人間が死亡しているか否か、というところが、個人的には微妙に思えます。
    現時点では、ナリズマの適当な言い分でしかないワケで、あくまでメタ的な視点ではありますが、戦隊という枠の中で、どこまで「死」というものを扱うかというところです。ザミーゴからすれば、用済みの人間を生かしておく必要はないので、化けの皮にされた人々は死んでいてもおかしくないのですが、かと言って大切な人たちが戻ってこなければ、ルパンレンジャーとしてのハッピーエンドはありえません。しかし、戦隊シリーズだからと安易(というほど簡単ではないですが)に人が生き返るという展開もどうなのかと。逆に戦隊だからこそ、全て丸くおさまって大団円、というのもアリなんですよねぇ・・・。ライダーシリーズなら、絶対に生き返らないんですが。
    また、視聴者目線では化けの皮と囚われた人々がつながったわけですが、劇中では快盗側と警察側で情報が分散したままで、つながっていないところがミソだと思います。散々影が薄い影が薄いと言われていたザミーゴですが、出番が少ない分、暗躍している感が増していますね。未だに主人公たちが真相にたどり着いていないのですから。

    1. ナリズマの詰めの甘さはちょっと笑ってしまうところなんですが、まあ本格ミステリーとかではないので、「ゴレンジャー」からの伝統芸として妥当でしたね(笑)。

      私は基本的に、化けの皮として利用された人物の命はないと思っていますが、この辺り、結構解釈が割れているようですね。「スピルバン」のような超絶どんでん返しは勘弁ですが、戦隊ならではのハッピーエンドに繋がる仕掛けには、大いに期待しているところです。

  4. ああっ、間違えて送信してしまいました(汗)
    化けの皮という事実に衝撃を受けた方も多いと思われますが、直接の描写はないものの、ゴーシュのセリフなどから予想された方もいたのではないかと思われます。
    ただ、昔の戦隊ならともかく最近では珍しいのも事実ですね。
    一方、前回、人間でないという衝撃の事実が明らかになったノエルですが、まさか異次元人ヤプール(違)じゃなくて異次元の種族だったという展開に逆の意味でビックリしました(笑)
    アンヌじゃないけど
    「ううん 人間であろうと異次元人であろうとノエルはノエルに変わりないじゃないの たとえルパンエックスでも」
    って、言いそうになりました(おいおい)
    てっきりコレクションが人間の姿となっていたのかと思ったのに・・・
    まあ、これでノエルについては一件落着で、次週のギャグ編(といっても、一筋縄ではいかないでしょうけど)をはさんでいよいよラストに走り出しそうですね。
    それではまた

    1. やはり化けの皮に関してはインパクトがありすぎますよね。かなり悪逆非道な面が強調され、ようやくザミーゴのキャラが立ってきたように思います。

      私もアンヌのようなセリフを期待してましたが、結構皆冷たい反応で(笑)。アルセーヌのエピソードでようやく受け入れたわけですから、最近のヒーローはクールですね(違)。異次元人の末裔というのは予想外でしたので、今シーズンのヒーローは地に足の着いた描写だったと改めて思いました。

      なお、誤送信なさったコメントは削除しました。

  5. 東雲悟編の後半戦。その結末はハッピーエンド、と呼ぶにはとてもかけ離れたものでした。

    化けの皮についてはその情報が知りえた今、今後の展開においてより最悪な展開が予想されてしまうという重苦しい雰囲気を作り出してしまいました。

    しかし、化けの皮になった人間が死んでいる、という確約はまだされておりません。

    ここらへんがラストに向けてのキーポイントになってしまうのかな、と。

    もしも、もしも、死んでしまっていたら、ルパンコレクションがそろった時に悟は生き返るのでしょうか。

    ノエルは大切な人、アルセーヌを生き返らせるためにコレクションを集めています。

    ルパレンの大切な人の生死は不明。

    海賊戦隊ゴーカイジャーは宇宙最大のお宝の力で死んでしまった人たちを生き返らせることをしませんでした。

    それは、「何かを得るために何かを捨てなきゃいけないなら過去を受け入れて今を生きる決意」をしたからでした。

    最悪の展開になった時、ルパンレンジャーは、ノエルは、どう決意するのでしょうか。

    ここからは蛇足の妄想話。

    アルセーヌによって保護されたノエル少年はエンジニアなる使命を与えられた。
    アルセーヌによって自我が芽生えたグッドストライカーはコレクションを守る使命を与えられた。

    しかし各々が使命を果たすべき相手は物言わぬルパンコレクション。

    そんな独りぼっち同士が出会った時にノエル少年が「僕と友達になってくれない?」と声をかけたのかと。

    そして、それがグッドストライカーが初めて「グッと来た瞬間」なのかと。

    ・・・皆様のお目を汚してスイマセン。

    1. 「人生にリセットボタンはない」という警句以降ということなのか、ヒーローが人間を復活させるといった展開にはならないのが常ですよね。ただ、今シーズンは色んな面で型破りなので、何が起こるか分かりませんね。

      そもそもが「取り戻す」というテーマなので、「死を受け入れる」という帰結は回避されるものと考えています。

      妄想と仰ってますが、グッドストライカーの話は実際にありそうでイイですね〜。ノエルにはOVとかで展開できそうな深い描きどころがありますよね。

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