騎士竜戦隊リュウソウジャー 第4話「竜虎!!最速バトル」

 「見た目は楽しく、テーマは重く」というのが今シーズンの特徴になっているかと思いますが、今回はそれを2〜3歩推し進めた感がありました。

 トワの少年キャラを生かして「楽しく」、バンバの年長キャラを生かして「重く」。アイコンたるコウの存在を飛び越えて、グリーン&ブラックがテーマを体現してみせたのには、素直に驚きましたね。



クラーケンマイナソー

 神話上の怪物が順調に続いているマイナソーですが、今回もクラーケンというメジャーな題材が選択されています。

 「コチ、コチ」と叫びながら暴れますが、その「クラーケンなのに堅い」という謎アピールはミスリード。実は「親が子供を呼ぶ」際の「こっち、こっち」だったというのが真相でした。謎解きとしては若干弱いかな…と思いはしましたが、それは一要素に過ぎず、マイナソーの元となった親子のドラマに詳しくフォーカスしなかった分、マイナソーの特徴に落とし込んでバトルの流れを作ったわけで、省略の美学が活きていますね。

 遊びたいという衝動のみが肥大化したマイナソーというイメージは抜群で、コウとトワの「対立遊び」と巧みに結びつけられており、最初から最後まで雰囲気が統一されていたのは良かったですね。

バンバ

 グリーン&ブラック兄弟はマイナソーの元を絶つという行動原理で動いていますが、そこに迷いを生じさせたトワとは異なり、バンバはあくまで「使命」に忠実です。

 それ故にコウたちに辛く当たる…わけでもなく、あくまでコウたちはコウたち、自分たちは自分たちという感じで区分していて、単に必要以上に関わらないだけで、かなり大人な言動をしている人物ですね。近年は後見人でもくだけたキャラクターが多い中、このように「真面目さが笑いの種にならないキャラ」は貴重だと言えるでしょう。まあ、そのうち笑われる可能性はなきにしもあらずですが…(笑)。

 その真面目さは、コウとトワが「対決」から単なる喧嘩になる前に、両者を一喝するところからも伺えます。マイナソーに関して、トワと二人で対処する自信は備えているものの、騎士竜の手掛かりはコウたちが持っているわけで、両者が争うのは不毛だと冷静に判断しているんですよね。単なる「イヤな兄弟」を今回の前半で完全に覆してしまいました。

 冷徹に、マイナソーの原因となった父親を手に掛けようとするバンバを寸前で止めたのはトワでしたが、トワを信頼して反対すらしなかったのも凄いところで、常に最善が何か(つまり、マイナソーの原因たる人間の命を奪うことは近道だが最善ではないということ)を考えていることが分かります。こういう理知的なキャラが出てくると、俄然厚みを増すんですよね。

 それにしても、この兄弟はこれまでもマイナソーの芽を摘んできた可能性が否定できないわけで…。このあたり、何か説明が欲しいところではありますね。

トワ VS コウ

 予告であれだけ対決ムードを煽っておきながら…(笑)。

 枯れ葉の切り絵から始まり、ジャンケン対決、倒した数対決…など、血生臭い対決はことごとく避けられました。バトルもコミカルに演出されながら、かなり複雑で手数の多い殺陣が付けられていて凄まじいことになっています。

 これは無垢なるコウと少年たるトワの、対立ではなく「交流」という側面が強調された結果ですね。実に爽やかですし、このあたりの対立劇のカリカチュアライズは、基本的に重い葛藤を伴う仮面ライダーシリーズとは、一線を画す楽しさに満ちています。

 結果的に、「交流」を経てトワはそのポリシーに揺らぎを生じることになりました。「意外に早い」というのが正直な感想でしょうか。もっと対立劇が続く印象を持っていましたから。

 さて、バンバがここからどう動くか楽しみですね。

タイガランス

 敵を巻き込んでまで、徹底的に「遊び」を利用して復活させたタイガランス。この一貫性がまた潔くて実に良いですね。

 「ジュウレンジャー」当時、恐竜戦隊なのにマンモスやらサーベルタイガーという哺乳類が居るというツッコミがあったりしましたが、そこは設定の強引さと映像パワーとで納得させる手法が採られました。現在では、それなりに理屈が必要となり、今シーズンが強引な感覚を伴っていたとしても、なかなか逃げ切ったり押し切ったりはできないわけです。

 そこで導入されたのが、タイガランスはあくまで新種の恐竜であり、哺乳類ではないという設定です。既にこの時点でかなり強引ではありますが(笑)、デザインがちゃんとネコ科と恐竜のハイブリッドになっているんですよね。これには感心しました。ビジュアルで恐竜説を押してくるとは思いませんでした。

 キシリュウオータイガランスは、緑のパーツを前面に配置して大きく印象を変えるギミックが良く、前シーズンの換装型によるシルエットのマンネリ化を、装着型で解決する試みは成功しているようですね。

ナヌ

 尚久氏の「ナヌ」は吹越満さんの持ち芸の一つだと勝手に思っていますが、とにかく耳に残ります(笑)。怒っていても周囲を不快にさせない。この方はバンバ以上に大人ですね。

次回

 恐らくバンバ回と言っても差し支えないでしょう。着実にキャラクターの設定譚が積み上げられています。その後、ややスルー気味なメルトやアスナにスポットが当てられるのを楽しみにしています。



投稿者: SirMiles

【マー 🏃 SirMiles / Masafumi Fujimura / https://sirmiles.com / maruzoku】 Run、音楽、プラモ。趣味は広く浅く。生業はIT系。

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6件のコメント

  1. 個人的には、一番しっくり来た回でした。黒緑兄弟との対立を、軽めにしたのは正解だと思います。
    タイガー、マンモス問題はジュウレンジャー当事、真面目な議論からネタまで、本当に話題になりましたね。結局のところ、「未発見ではあるが、ああいう姿の恐竜がいる」や、「あの世界には、ああいう恐竜が存在していた」という感じの落としどころになっていたはずです。
    ただ、マイナソーが神話の怪物をモチーフにしているところや、次回予告での地獄の番犬(デカマスターではない)という発言からも、恐竜というよりも、広義なファンタジー要素を含んだ上での「竜」というものにこだわっているのかな?と思わなくもないです。ちなみに、地獄の番犬と言うと、三首の怪物であるケルベロスになるわけですが、ここまで来ると完全に想像上の生物ですね。
    それなりにファンタジーをかじっている人からすると、騎士竜、もしくは竜騎士というワードから恐竜を連想する人は少ないでしょうし。
    雑誌のインタビューによると、リュウソウジャーでは巨大戦の方に比重を置いていくらしいです。この辺りは、人間ドラマがメインだったルパパトとの差別化なんでしょうね。そうすると、等身大で一度倒す、という展開は少なくなるのかな?それはそれで、ちょっと寂しい。

    全然関係ないんですが、スーパーロボット大戦のアプリ、スパクロにゴーカイジャーが参戦したそーです。自分は、アプリやってないんで、あんまり意味ないんですが。・・・どうせなら本家に来てくれよぅ・・・。

    1. 私も対立劇を軽めにしたのは正解だと思います。このくらいが戦隊らしくて良いですね。

      ファンタジーの「竜」というのは広義の怪物という感覚ですよね。その説はかなり受け入れやすいです。ジュウレンジャーの守護獣も、ドラゴンシーザーが正にそんな感じで出てきましたよね。

      巨大戦に比重ですか…。なかなかチャレンジングな試みですが、「ジャスピオン」の感覚で観ていると火傷しそうですね(笑)。人間ドラマの方が薄めになるのは、既に感じ取れてしまっているところですが、ライトな作風もまた戦隊の芸風の一つなので、不満というよりは楽しみになってます。

  2. 前回の対立モードからいきなり意地の張り合いにランクダウン(?)した今回ですが、こっちの方が戦隊らしいですね。
    まあ、コウのキャラに引っ張られてトワ の地が出た感じですが(笑)
    それにしても、アンキローゼとタイガランス・・・見た感じが地味ですね(おいっ)
    見ていくうちに印象が変わるかもしれないですけど、この辺りもどう見せていくか楽しみです。
    それではまた

    1. 私も戦隊とは「この感じ」だろうと思います(笑)。

      トワが「イヤなヤツ」を演じていたのか、単に二面性のある少年なのかは多分モヤの彼方だろうと思いますが、コウの影響というのは確実に的を射ていますね。

      タイガランスだけでなく、騎士竜はぶっちゃけティラミーゴ以外「部品」なので、地味にならざるを得ませんね。それでもまあ頑張っているデザインだとは思います。

  3. 全体的にテンポよく見れたので時間がたつのが早かった気がします。

    とはいえ、騎士竜捜索のチーム分け編成があの組み合わせになった過程は知りたかったのですが。

    まぁ無視されて膨れたアスナのほっぺが可愛いので良しとしましょう。笑

    ブラック&グリーンの「わっせいわっせい」は可愛いけど重厚感もありましたね。つくづく色のイメージって強いなと思いました。

    次回のタイトルが「地獄の番犬」って・・・もう制作側にスーパー戦隊シリーズ大好きな大人のお友達たちの好奇心をもてあそばれてるような気しかしませんね。苦笑

    1. テンポはかなり良かったですね。余計なものを削ぎ落として大事な部分のみを組み立てている感覚がありました。

      チーム編成は、大抵目的があって意識的に行われるのが常ですが、今回は何にも考えてなかったような気がしますね(笑)。こういうところはもうちょっと突っ込んで欲しいところではあります。

      地獄の番犬は完全にドギーさんなのですが、多分ドギーさんは色んなシリーズに出過ぎて印象が強すぎるんだと思います(笑)。今シーズンはサブタイトルでレジェンドのオマージュをするのかな…と勘ぐってしまいました。

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