騎士竜戦隊リュウソウジャー 第5話「地獄の番犬」

 戦隊で地獄の番犬と言えば某BOSSなわけですが、全く関係ありませんでした(笑)。ある意味で、レジェンドオマージュに対しては距離を置くという宣言なのかも知れません。

 今回は前回を受け、トワの心境の変化をさらに突っ込んで描くと共に、それがバンバにもたらす影響についても言及しました。その様子は「王道」でしたが、意外な定番外しも見られて興味深いエピソードとなりました。



ケルベロスマイナソー

 サブタイトルをそのまんま体現するドストレートなマイナソー。しかし、デザインはなかなかエキセントリックで、非常に醜悪かつ恐ろしいものとなっています。ケルベロスという怪物のイメージをそのまま解釈すれば、三つ首の犬という見た目になるのが通常ですが、なんと三つ首が入れ子になっているという秀逸なアイデア。なんとなく物体Xっぽくもありますね。

 このデザインの醜怪さは画面にそのままインパクトとなって現れていますが、実際はクレオンのペットのような振る舞いが異様に可愛らしく、見た目と振る舞いで恐ろしさを中和しているのが巧いところです。

 ケルベロスマイナソーは、残念ながら成長することなく倒されてしまいますが、これもパターン崩しの一つでした。一方で等身大戦と巨大戦のほとんどをタンクジョウが担っており、今回のバトルがタンクジョウ中心に組み立てられたものと見做すことができます。

 ケルベロスマイナソーの役割は、トワの知人である早苗から生み出され、トワをその毒牙にかけること。これでバンバの戦う意味を揺さぶったわけです。

タンクジョウ

 幹部キャラでありながら、特に指示を出すわけでもなく、クレオンの危機に出現して腕力にものを言わせるという、何となく用心棒っぽい感覚なんですよね。

 しかしながら、今回は地震のエネルギーを得て、正に超強力なボス級の力を発揮。まあ、これは「倒すべき敵」になるということなんですけど、それが地球のもたらす偶然に依っているところがかなり恐ろしいんですよね。

 あの地震、特撮の通常の感覚だと「何か(味方あるいは敵にとっての)驚異がやって来る」前兆として描かれるのですが、今回は何と偶然! 深読みすれば地球は敵側に力を貸していることにもなるわけで、これもパターン崩しの一つではないかと思います。

 なお、巨大戦でもキシリュウオーを圧倒しますが、今度はキシリュウオーミルニードルの猛攻の前に倒されます。ヒーローの見せ場はしっかり用意しつつ、ちゃんと生き残るあたり、ちゃんと幹部級してますよね。

トワとバンバ

 どうもこの二人の言動を見ていると、これまでマイナソーの要因となった人間を何人か手に掛けてきた感じがするんですよね。全くそのあたりが掘り下げられないので、かなりモヤモヤしてしまうんですが…。

 ところで、トワはコウのみならず早苗の活動(捨て犬の保護)からもインスパイアされ、命の等しさについて「学ぶ」ことになります。苦悩しているというよりは既に悟っているという感覚の表情が実に印象的で、純真な魂を持つ弟が知恵ある兄よりも早く騎士たるを知る、という展開が熱いです。マスターレッドの言ともシンクロし、今回は怒りに任せた戦いを改めるコウと、目指す先を同じくするのがいいですね。

 バンバに関しては、トワの言動に影響を受けつつも、まだ己の信じる道を疑うことができずにいます。これも目前に待っているであろう団結に至るプロセスの、最後の砦として巧く機能しています。彼の過去に何があったのかが、その砦を崩す鍵になるのかも知れません。

 今回のパターン崩しの最たるものとして、ケルベロスマイナソーが倒された後もトワの感染した毒が消えない(ついでに早苗への影響も消えない)というものがあります。

 最初の「仮面ライダー」からの伝統で、怪人が倒されれば影響は消滅するという「お約束」があり、ほとんど不文律のように扱われていますが、今回はそれを崩して(そして劇中の人物も不文律に従って驚いているのがポイント!)、次回への引きに利用しました。いやあ、これには本当に驚きましたね。

次回

 今回は結構な引きの詰め込みようで、次回どうなってしまうのかヤキモキさせられました。予告の映像の格好良さで余計に期待が高まりますね。もうちょっとテンポの良さが感じられるといいんですが…。何となく集中力を削ぐ要素がどこかにあるんですよね。それが何かよく分からないままですけど。



投稿者: SirMiles

【マー 🏃 SirMiles / Masafumi Fujimura / https://sirmiles.com / maruzoku】 Run、音楽、プラモ。趣味は広く浅く。生業はIT系。

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6件のコメント

  1. トワとバンバの合流を描く前後編なのでしょうけど、個人的にはちょ~っと早かったかなと思います。トワの心変わり(元々悪いやつではありませんが)が少し唐突に思えて、もうちょっとじっくりやった方が良いのではないかと。1クールとは言いませんが、もう少し付かず離れずの関係が続いた方がいいと思うのですが、この辺は大人の事情もありそうですし。
    微妙に乗れない点。私なりに考えて見たのですが、怪人に個性がない、ということではないでしょうか。リュウソウジャーの怪人であるマイナソーは、人間の負の感情から生まれたという設定になっているためか、自我というものが無く、元の人間の感情に則って本能でしか行動していないように思えます。はっきり言ってしまうと、ほぼ喋らないんですね。これって、戦隊では結構珍しいタイプで、戦隊怪人と言えば、スーツアクターさんの熱演や、声優さんの怪演などと相まって、時にはヒーローを喰ってしまうほどの魅力があったんですけれど、今のところ、そういう流れにはなっていなくて。特にルパパトでは、海老やら鮭やらエアロビやら、濃ゆい連中が多かったですから。
    他にも、現状ドルイドンの目的がはっきりとは明らかになっていなくて、タンクジョウも書かれているとおり、とりあえずリュウソウジャーの邪魔をしているだけなんですよねぇ。ちなみに、タンクジョウとクレオンの微妙な関係が描かれていましたが、設定ではクレオンはドルイドンに協力する宇宙人となっているようです。つまり、タンクジョウに忠誠心があるわけではないようですね。
    まあ、まだ始まったばかりですが、昨今は、どうしても敵側の描写が薄くなってしまうことが多いのですが、果たして・・・。

    1. ちょっと、ご都合主義的な雰囲気は感じられますね。アバレキラーやゴウライジャーのレベルまで行くと、昨今の展開には合致しない気もしますが、あっさり気味なのは気になります。

      怪人に個性がないというのは全くそのとおりだと思います。タンクジョウやクレオン含めて本質的な行動原理をほとんど語らないので、自然災害に近い。ところが人間が要因を握っているというのが、かなり散漫な印象の原因かも知れません。

      まだ序盤ですが、いいところも沢山ありつつ、まだ乗り切れていない自分が居ます(笑)。

  2. 考えてみると、確かにテンポが悪いと言うか、途中で切れてしまう感じですね。
    怪人が喋らないのもそうですし、敵の幹部(?)たるクレオンとタンクジョウの目的がはっきりしないのも問題かと思います。
    過去にもクレオンみたいなキャラはいましたが、あくまで脇役でメインの行動隊長的な敵の幹部がいろいろやって、それを横目で見てる感じなんですけど、タンクジョウは用心棒的な立ち居地で、いまいち対立軸がはっきりしないんですね。
    敵側がはっきりしないから、リュウソウジャーの方もはっきりしない、これでトワとバンバが外の3人と敵対といわないまでも、張り合っていれば物語りもハッキリするんですが、それも解消してしまいました。
    まあ、そこら辺は製作陣も分かっていると思いますので、これからに期待したいです。
    それにしてもバンバは時代劇が似合いっそうなキャラですね。
    あと、もっとヒロイン活躍せんかい(って、おいっ)
    それではまた

    1. 敵側に確たる意志が感じられないのもありますが、私はあの「リュウ、ソウ、そう、そう!この感じ!」が著しくテンポを悪くしている気がします。関智一さんの芸達者振りには感服以外ないのですが、バトルの際に緊張感のない音声が鳴り響いたりと、結構使い処を慎重に選択しないとシーン作りに失敗しますよね。

      バンバが時代劇向きというのは、分かり過ぎて笑えます! あの目力と押し出しの強さは、なかなかの逸材です。剣豪っぽい感じがしますね。

      私も思います。ヒロイン活躍せんかい!

  3. 今回はオープニングでトワが人間女子と普通に会話しているところから始まっていて、そこに違和感しか感じなかったのですが、次回へ続くなら知り合ったきっかけくらいは描写して欲しかったというか。トワはまだ、ナンパするキャラにも見えないですし、そこら辺がモヤっとしたままの30分でした。

    お二方もおっしゃっている通り、怪人が喋らない(=声優さんの出番がない)は対決シーンの魅力が半減、という感じで私にとっても寂しい限りです。というか、今までハッキリと気づいていなかった自分が恥ずかしい。。。汗

    地獄の番犬ケルベロスマイナソー。三つ首がマトリョーシカみたいになってる、ってなかなか斬新なキャラで。公式の写真も真正面からで「一人(一匹?)Choo choo train」みたいに見えてしまった。笑

    マイナソーを倒したのに元に戻らないトワと早苗。さてはてその秘密は如何に。弟に甘い(ように見える)バンバ兄さんの活躍に期待しましょう!

    1. そうですね。トワもバンバもあまり他人と仲良くしないように努めている感覚でしたから。でないと、「始末」できませんよね。まあ、少年の好奇心の表れともとれますけど…。

      私も、怪人が喋らないことで魅力がスポイルされているという分析はできていませんでした(笑)。あれだけゴレンジャーのBlu-rayを繰り返し見ているのに…。

      折角今回のケルベロスのように秀逸なデザインを登場させているので、何とかモンスター→ダブルモンスターになって喋るようになったようなプロセスを経て欲しいところですね。

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