騎士竜戦隊リュウソウジャー 第27話「天下無双の拳」

 新騎士竜パキガルー&チビガルー登場編。新ガジェット入手編ではありますが、まさかのガチレウス帰還、防衛戦の面白さなどが盛り込まれ、オーソドックスでありながら映像的な新味に満ちた一編となりました。

 一方で、ナダやガイソーグ絡みの謎やバックボーンについては、今回もほとんど言及されることがなく、シリーズ全体としてはテンポの悪さが少々引っかかるところです。



ドドメキマイナソー

 やはりガチレウスがメインを張ることになり、マイナソーは割を食いました。

 一応、ガチレウスが等身大戦を、ドドメキマイナソーが巨大戦をメインで請け負うことにより、立体的な戦いを展開しているのですが、同時進行中は完全にリュウソウジャー側が劣勢だったため、危機感の煽り方としては凄いものがありましたね。

 ガチレウスとの等身大戦ではメルトが、ドドメキマイナソーとの巨大戦ではコウがメインとなって強竜装を行い、それぞれ勝利を収めるという流れは面白かったですね。チビガルーを自らの命を懸けて救いだしたコウこそが、ドッシンソウルの使い手に相応しいとされて当然のところを、まずはそのコウを必ず助け出してくれるであろうメルトに託すというのが巧いところです。

 ドドメキマイナソーを生み出した千佳なる女性は、お約束どおりカナロを振って終了。お約束の美学を見せてくれました(笑)。

ガチレウス帰還

 復活ではなく帰還でした。かなーり強引ですが、まあ「宇宙にヤツが居た」というニュアンスの謎発言をさせたところにちょっとした仕掛けがあるわけで、後半戦のキーキャラクターに言及させるには、気の利いた人選だったと思います。

 以前一戦交えた時よりも、リュウソウジャーの方こそが強力になっているはずで、実際、ガチレウスには明確に優勢な描写が見られませんでした。穴に落ちたコウを守りつつ、マイナソーとの両面作戦によって少人数での対処にならざるを得ない中、メルトとアスナ二人で防戦を完遂せしめたところに成長振りを垣間見ることができました。

 パキガルーのドッシンソウルを得て、初の強竜装となったリュウソウブルーは、普段の知性派とはイメージを異にする打撃主義のアクションが鮮烈で、それこそ直近のラプター系強竜装よりもインパクトがありました。こんな感じで見るからにアクションスタイルが変化するパワーアップは、楽しくて良いですよね。

 冥界から蘇ったタンクジョウとは異なり、ガチレウスはまだまだ生存中。どういう出番が用意されているのか、若干不安ながらも…楽しみですね。

パキガルー&チビガルー

 新登場の親子騎士竜。子供のチビガルーが本体ではないかと思わせる饒舌ぶりで、親のパキガルーは唸り声のみという不思議な親子騎士竜です。

 チビガルーの担当は我らがM・A・Oさんで、安定感もありつつ戦隊における各担当キャラクターが全く一定しない凄さも存分に発揮。今回はやんちゃな可愛らしさを前面に出して、その魅力を振りまいていました。

 今回は、パキガルー完全復活のキーがチビガルーとの再会という、シンプルなプロットが魅力的。チビガルーを探し出してパキガルーの元に連れて行くという「クエスト」系のミッションが明確ながら、コウの精神性で「親子の再会」を情の部分で優先させることで、パワーアップ主義にアンチテーゼを投げかけるあたり、見事だと思います。

 そのコウの言動に、ナダが疑義を呈するくだりも短いながら効果的。レッドがリーダーであるという暗黙のテーマを表面化させ、レッドを危険な目に遭わせるのを避けるべきという説は、なかなか考えさせられるところがありました。

 これは「スタートレック」シリーズなんかではお馴染みのテーマであり、主役であるキャプテン(船長あるいは艦長)がストーリーのメインステージに立つ手段として上陸班に加わる展開は時に自己批判され、作劇の要請と艦隊の現実的な運用との間にある矛盾に言及していたわけです。

 ただし、戦隊シリーズに関して言えば、このテーゼがマッチするのは「シンケンジャー」くらいで、基本的にある時代から斬り込み隊長以上の属性を持つとは言い難い存在なのが、レッドというキャラクター。「リュウソウジャー」も例外ではないどころか、意図して「特別扱い」を排除している節があります。どうしてもガジェットに関しては優先されてしまいますが、作劇としては6人が必ず同列であるよう描かれていますよね。

 さて、巨大戦におけるパキガルーの描写は、強竜装と同様にボクシング主体。ボクシングやプロレスと言えば、黒いホリゾントにリングを配置するといった、イメージシーン的な描写が定番だったロボ戦において、今回はあくまで実景がたまたまリング状だったと言わんばかりの、精緻なミニチュアワークが鮮烈でした。ファンタジー性とリアリティが絶妙にブレンドされた、意欲的なシーン作りに感動した次第です。

次回

 次回は意外性たっぷりな、「ミクロの決死圏」ネタ。この古典的SFを令和の時代にどう見せてくれるのか、そして戦隊というステージでどう展開してくれるのか、すごく楽しみです。



投稿者: SirMiles

【マー 🏃 SirMiles / Masafumi Fujimura / https://sirmiles.com / maruzoku】 Run、音楽、プラモ。趣味は広く浅く。生業はIT系。

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10件のコメント

  1. この作品で最も異質だなと思うのはバンバとトワです。
    特にバンバ。一応レギュラーメンバーのはずなのに、初期から一貫してまるで追加戦士のような扱いです。
    本来の追加戦士であるカナロが逆に追加戦士であることを忘れそうになります…
    こういうのも6人同列を目指す上でのものなのでしょうか?
    その割には常にコウ/メルト/アスナ、トワ/バンバ、そしてカナロ、という不思議なグループ感があることが気になってしまいます。
    ゴーオンジャーも範人と軍平が後発の戦士でしたがあちらは早々に馴染んで以後5人でまとまって行動するようになったため、バンバ/トワ兄弟のような異質さは感じないんですよね。
    バンバは本当にそろそろ過去を掘り下げて欲しいです…
    どうにも初期から違和感が拭えなくて……個人的にかなり好きなキャラクターではあるんですけども。

    1. バンバとトワのポジションは不思議な雰囲気ですね。仰る通り、追加戦士のような扱いなんですよね。

      私としては、この試みは巧く行っているように思います。別動隊として立体的なドラマに寄与していて、面白いんですよね。

  2. 愚兄です。

    ガチレウスの復活、レコーダーのデータを消してしまったので確認できないのですが、たぶんちゃんと脱出する光球が描かれているのでしょう(「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」のラストシーンみたいです) 。

    ストーリーと画面構成(巨大戦はアクションが面白かったです)についてはよくできていて不満はないのですが、やっぱり細かい部分が気になってしまいます。
    バキガルーは封印されていているのになぜチビガルーだけ抜け出すことができたのかとか、何千万年も封印されていたのにチビガルーが抜けだしたのはたぶん数日前ってどういう偶然だとかですね。その他作劇的に気になったのは街のど真ん中、高架道路の下にあんな大穴があるっていうのもどうも…。

    チビガルーが穴から登っていく途中落ちてきた岩を足場にしていくシーン、思わず「おおっ、サスケの岩石なだれ渡り」とつぶやいてしまいました。そして結局失敗しちゃうところが声を相まってかわいい。

    ティラミーゴがバキガルーをパイセンと呼ぶのが気になって調べたのですが、ティラミーゴのモデルであるティラノサウルスが生息していた時期は6800万年前から6600万年前、バキガルーのモデルであるバキケファロサウルスが生息していた時期は7000万年前から6600万年前とされているので確かに「先輩」なんですね。

    ナダはやっぱりレッドに関して思い入れがあるようですがかといってコウたちの言動を否定しているわけでもなさそうです。最後の「マスターレッド…」というセリフは何か含みもありそうですが、さて。

    ではまた。

    1. パキガルーがティラミーゴから見て先輩な件、そういうことだったんですね。意外とこういう学術的な面にこだわりがあるのは興味深いところです。

      チビガルーの救出作戦にまつわるプロットは、逆算的であって少々詰めが甘いといったところでしょうか。各シーンに結構な勢いがあったので、詰めの甘さはあまり気になりませんでしたが、複数回の鑑賞だとなかなか厳しいかも知れませんね。

  3. 復活のガチレウスですが、何かオタスケマンみたいなオチでしたね。
    (しっかり脱出シーンが小さく写っているあたりが)
    で、初登場時はリュウソウジャーを押していたガチレウスが、今回は反撃を受けたあたりの描写は、言われるとおりリュウソウジャーの成長を示すものでありましたが、ここら辺も死してなお修行(?)を欠かさないタンクジョウとの差が見えて面白かったですね。
    それにしても新騎士竜の登場ですが、それ自体はいいとしても、こう頻繁にあると、前に出てきた騎士竜が忘れ去れてしまいそうで残念です。
    商売上の必要性は理解してるんですけど、たまには使ってほしいですね。
    ナダのコメントですが、そういう意味ではカクレンジャーは姫(ホワイト)と切込隊長(レッド)と分かれていて、彼の言うとおりなのかも。
    それではまた

    1. オタスケマンとは、また懐かしいですね(笑)。タイムボカンの中で最もヒーローのデザインが好きな作品です。

      騎士竜の連発は、まあ「事情」が「事情」なので仕方ないですね…。確かに各騎士竜の印象が薄くなってしまうのは問題ですが。

  4.  ナダのリーダー発言に、個人的には彼の闇のようなものを感じましたね。後々の伏線となるのか、果たして・・・。
    まさかのガチレウス様復活ですが、中の人たちの演技のせいか、以前より人間味があるというか、楽しそうですよね。これからはちょっと好きになれそうかも(笑)。
    レッドは主人公なれどリーダーとは限らない、というのは、シリーズにおいて大改革が行われたジュウレンジャーのころからでしょうか。ダイレンジャーは特にメンバーが個性的ということもあってか、終盤に導師カクが姿を消した際、分裂の危機が起こってしまうという、ありえないような展開がありました。
    続くカクレンジャーでは明確に主人公がレッド、リーダーがホワイトと分けられた設定でしたが、当時、兄に「今の戦隊はレッドが主人公だけどリーダーじゃない」と説明しても、なかなか理解してもらえなかった記憶があります(苦笑)。
    カナロのお約束については、そのうちカナロからマイナソーが生まれても驚かないレベルになりつつありますね(汗)。

    1. ナダのリーダーへの偏執的な興味は、妙に気になるところですね。結局はコウがレッドであることに納得してない感もあり、何か裏がありそうです。

      レッドが厳密にリーダーではない戦隊は、恐らくダイレンジャーが初だと思いますが、カクレンジャーでの「明言」は衝撃的でした。その後、わざとレッドを明確なリーダーに設定したりと紆余曲折ありましたが、現在はレッドを単なる「番組の顔」として捉える傾向がありますね。

  5. 今回のトワとバンバの立ち位置って何だったのでしょう。

    序盤はともかく、マイナソーが巨大化してからは完全に戦力外でした。

    状況を分散させて局地戦がごとく幾つものストーリーを同時進行で裁こうとする故の弊害、とは仕方なしにも理解できるんですが、モサレックスとは(現時点では)合体出来ず、キシリュウオーの合体にも間に合わずスリーナイツだった時なんかは可哀想すぎて同情心すら芽生えてしまいました。

    ナダの胡散臭さは今週もいい感じでしたね。マスターレッドに向けて語る台詞なんかはレッドに選ばれなかった戦士の言い訳として、良い負け犬っぷり感が出てました。って言ってしまうと厳しすぎでしょうか。

    まぁ、彼もまだまだ何か秘密を持っていそうなキャラ設定に見えるんですが、バンバと被って見えてきてしまっているのもどうかと。。。

    ガイソーグ、バンバ、ナダ。彼らが全てを語るときはこの番組の終わりの時なんでしょうか。どちらにしても制作者様には良い感じで引っ張ってもらいたいです。

    最近、高木渉さんの声を聴いてないなぁ・・・

    1. トワとバンバは「遊撃隊」のポジションとして使える…というのが今回の描写というところでしょうか。

      それぞれの状況が同時進行する作劇は、こういう子供向け番組だと余計に相当巧くやらないと破綻する気がしますが、私としては、まだ今シーズンは巧くやっている方だという印象です。

      それにしてもナダも含め、まだ「語っていないこと」が多いので、飽きられる前に興味を継続させる「種明かし」がないと…ですね。

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